固定資産税はいくら?地方税の仕組みと一緒に解説

固定資産税はいくら?地方税の仕組みと一緒に解説

固定資産税に関する税制を理解していますか。固定資産税という言葉は日頃よく耳にしますが、軽減税率の制度などが複雑なこと、また頻繁に税制改正が行われることから、制度を正確に理解していると自信を持っていえる方は、決して多くないと思います。

今回はまず、固定資産税を含む地方税制度について基本的な知識を確認した上で、固定資産税はおよそいくらになるのかを計算式なども交えて詳しく見ていきましょう。

日本の地方税制度

固定資産税について詳しく理解するために、まずは地方税の主な税目を簡単に把握しておきましょう。

  • 道府県民税、市町村民税及び事業税
    まず、所得に対して課せられる税として、道府県民税、市町村民税及び事業税があります。このうち、道府県民税と市町村民税は、一般的には住民税と呼ばれているものです。
  • 自動車税、軽自動車税、自動車取得税及び地方消費税
    消費に対し課せられる税としては、自動車関係の税として自動車税、軽自動車税、自動車取得税がある他、平成9年より地方消費税が導入されました。
  • 固定資産税、都市計画税及び不動産取得税
    固定資産に関する税として、固定資産税、都市計画税、不動産取得税などがあります。

地方税は、国の法律である地方税法にそれぞれの税目の内容が定められており、通常は標準税率による課税が行われます。ただし、一定の税目については、各地方自治体により制限税率までの範囲で税率を定めることができます。

ここで地方交付税、地方譲与税について若干説明を補足していきます。この両者の国税収入の一部を地方自治体が使うというものです。

地方交付税は所得税、法人税、消費税等の一定割合を地方自治体に対し、その財政力に応じて交付するものであり、地方譲与税は地方揮発油税、石油ガス税、自動車重量譲与税等を客観的基準によって地方自治体に譲与するものです。

また、平成18年度税制改正において所得税から個人住民税への本格的な税源移譲が明らかとなり、個人住民税所得割の税率が比例税率化(フラット化)されました。続く、平成20年度税制改正においては、新たに地方法人特別税の創設等が実施され、さらに平成26年度税制改正においては、法人住民税法人税割の税率引下げとあわせて地方法人税(国税)が創設されました。

平成28年度の税制改正においては、平成29年4月1日から地方法人特別税は廃止することとされ、これに伴い、平成30年8月の譲与分をもって地方法人特別税が廃止されることになりました。

また、地方法人特別税の廃止に代わる偏在是正措置を講ずるため、及び消費税率10%段階における財政力格差の縮小を図る観点から法人住民税法人税割の一部(税率引下げ分)を交付税原資とするため、地方法人税の引上げが行われています。

固定資産税の基本

固定資産税とは、地方税の一種であり、土地、家屋や償却資産を課税客体とし、その所有者を納税義務者として、当該固定資産の所在する市町村が、毎年経常的に課税する財産税です。

土地、家屋などの固定資産は市町村の規模に応じおおむね普遍的に所在し、また、年度ごとに著しく増減するものではありません。そのため、市町村民税と並んで市町村の有力な税源となっています。

税率は、固定資産税が標準税率1.4%、都市計画税が制限税率0.3%となっていますが、課税標準額において土地30万円、家屋20万円、業客資産150万円未満の場合には課税されません。さらに一定の要件を満たす住宅用地や新築住宅などについては、課税標準や税額の軽減措置が設けられています。

固定資産税の課税標準額は、原則として、固定資産の価格(適正な時価)で固定資産課税台帳に登録されたもので、土地及び家屋については基準年度(3年毎)に評価替えが行われます。これによって、特別な場合を除いて、価格は3年間据え置かれることとなります。

また、平成20年度税制改正においては、住宅の省エネ改修に係る減額措置等が創設されました。平成28年度税制改正においては、地域の中小企業により設備投資を支援するための軽減措置や農地保有に係る課税の強化・軽減措置が創設されています。

固定資産税の計算方法

固定資産税の計算方法は以下の通りです。

固定資産税 = 固定資産税評価額 × 標準税率(1.4%)

固定資産税評価額の算定方法は、国土交通省が定めており、土地や家屋の時価を表すものです。時価は、理論上は時々刻々と変化するものですが、便宜的に、3年に1度の頻度で評価額を見直す運用が採用されています。

固定資産税評価額に関して厳密に評価額を知るには、各自治体で公表されている「路面価」を確認することも重要です。

少し専門的な資料のため、慣れないと理解に時間がかかるかもしれません。しかし、最近では路面価を調べられるウェブサイトも存在しますので、最も確認しやすい方法を模索してみてもよいでしょう。

算定方法が定められているとは言え、算定者の恣意性を完全に排除することは不可能なため、迷った場合には専門家に相談することをおすすめします。

固定資産税評価額がおよそいくらになるのか概算したい場合、たとえば家屋の場合であれば、購入金額の7割程度だと考えておけば、そう大きく乖離することはありませんので、参考にしておいてください。

次は、資産の種類に応じて設けられている固定資産税の課税標準の特例の内容について、簡単に紹介していきます。

住宅用地に対する固定資産税の課税標準の特例

住宅用地の範囲

  1. 専用住宅(もっぱら人の居住の用に供する家屋)の敷地の場合
    ⇒ 当該土地の面積(床面積の10倍が限度)
  2. 併用住宅(その一部を人の居住の用に供する家屋)の敷地
    ⇒ 当該土地の面積(床面積の10倍が限度) × 家屋の種類及び居住部分の割合に応じた一定率

課税標準の特例

  1. 一般住宅用地(住宅の敷地で住宅1戸について200m2を超え、住宅の床面積の10倍以下の土地)
    ⇒ 評価額の1/3
  2. 小規模住宅用地(住宅の敷地で住宅1戸について200m2以下の土地)
    ⇒ 評価額の1/6

新築住宅に対する固定資産税の税額軽減

要件①:居住部分

居住用部分の面積(別荘部分を除く)が、その家屋の面積の1/2以上であるもの(区分所有住宅にあっては一の専用部分のうち、その人の居住の用に供する部分が1/2以上であるもの)

要件②:床面積

住宅部分の1戸当たりの床面積が、50m2以上280m2以下のもの

軽減内容

普通住宅の場合
⇒ 3年間、120m2までの部分に相当する税額の1/2が軽減される

中高層耐火建築住宅(地上階数3階以上のもの)の場合
⇒ 5年間、120m2までの部分に相当する税額の1/2が軽減される

省エネ改修工事を行った既存住宅に対する固定資産税の税額軽減の概要

要件①:工事内容

以下のA~Dまでの工事のうち、Aを含む工事を行うこと。

  • A:窓の断熱改修工事
  • B:床の断熱改修工事
  • C:天井の断熱改修工事
  • D:壁の断熱改修工事

A~Dまでの改修工事により、各部位が現行の省エネ基準を新たに融合するようになること。

要件②:費用

50万円以上

軽減内容

1年間、120m2までの部分に相当する税額の1/3が軽減される

まとめ

ここまで地方税の全体像と固定資産税に係る税制について見てきましたが、いかがでしたでしょうか。
地方税は頻繁に税制改正が行われ、その時々の政策の意向が反映されていること、また固定資産税についても軽減制度が細かく整備されていることがお分かりいただけたかと思います。また、固定資産税の算定方法、およそいくらくらいになるのかなど疑問へのご参考になれば幸いです。

この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。

著 者 田中 仁

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大手総合商社にて10年間勤務し、新規事業開発を中心に資金調達、財務・会計等を担当。 東京のほか、アメリカのベンチャーキャピタルやイギリスの金融機関等にて勤務経験もあり。