経理必見!企業会計・財務会計・管理会計・税務会計 その違いとは

経理必見!企業会計・財務会計・管理会計・税務会計 その違いとは

ここ10年ほどで、会計に関する情報の流通がずいぶんと増えてきました。繰り返されるM&Aや粉飾の不祥事など、話題も尽きません。一口に会計と言っても、いくつかの種類があります。今回は会計の種類について確認をしていきましょう。

企業会計・財務会計・管理会計・税務会計の定義

企業会計

主に営利企業に適用される会計です。その活動について金銭という尺度を用いて記録し、内外の関係者に情報提供を行います。企業会計は財務会計と管理会計に区分することができます。

財務会計

外部の利害関係者(投資家や金融機関など)に企業の財政状態、経営成績などの情報を提供するための会計です。多くの関係者に公表されることから、公正だと認められる会計基準に従って処理をされる必要があります。

管理会計

内部の利害関係者が利用する会計です。原価管理や損益分岐点分析など、さまざまな手法を用いて経営方針を検討するために用いられます。

経理プラス:管理会計とは?財務会計との違いや目的など基礎知識を解説

税務会計

税法の規定に従って処理をされた会計です。課税庁を外部利害関係者として、財務会計の一部として捉える考え方もあります。

会計の基本目的

今日の企業会計は「適正な期間損益計算」を基本目的とします。この言葉を少し分解すると、

適正

正しい方法で処理をすること。

期間

一定の期間を定めること。一般的には一年です。上場企業などは四半期で情報を開示します。対前期情報は、多くの利害関係者が注目する重要な情報です。

損益計算

利益を計算することです。

利益 = 収益 ― 費用

で計算します。
正しい基準に従って収益と費用を計上することが必要です。

この基本目的を達成するために、さまざまなルールが設定されているという大前提を忘れないようにしましょう。

企業会計原則

上述の通り、会計は正しいルールに従って処理をする必要があります。その会計処理を進めるうえでの基本ルールが企業会計原則です。詳細については、リンク先の記事を確認してみてください。

経理プラス:「企業会計原則」の基礎知識 7つの基本原則とは

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発生主義会計と現金主義会計

今日の会計を理解するための大前提として、収益や費用は、現預金の収入や支出時点ではなく、経済的価値の増加や減少が起こった時点で計上されなければなりません。このような考え方を「発生主義会計」と言います。これに対して現預金の収入支出にあわせて収益費用を計上する方法を「現金主義会計」と言います。

例)3/31、取引先に商品を100万円で販売した。代金は5/31に受け取った。決算日は3月末日とする。

  • 発生主義
    日付借方 金額貸方金額
    3/31売掛金(資産)100万円売上(収益)100万円
    5/31現預金(資産)100万円売掛金(資産)100万円
  • 現金主義
    日付借方 金額貸方金額
    5/31現預金(資産)100万円売上(収益)100万円

発生主義と現金主義では、収益の計上時点が異なります。そのため、どちらの主義を採用したかによって、その事業年度の利益額が変わってしまうのです。現在の会計は発生主義会計を採用しています。
経理担当者は、請求書や納品書、給与明細などを基準に、現預金の入出金に惑わされず、収益や費用の計上漏れがないように留意する必要があります。

キャッシュフローの把握

上述の通り、現在は発生主義会計ですが、行き過ぎた時価会計の発展など、弊害も生まれました。そこで、ある程度「現預金の裏付けがある情報の提供」が求められるようになりました。その要請に従って生まれたのがキャッシュフロー計算書です。

この2つの計算式について、区別をする必要があります。

利益 = 収益(売上) ― 費用
キャッシュフロー = 収入(売上代金の回収や新規借入) ― 支出(仕入代金の支払いや借入返済)

現在の会計では、適正な期間損益計算(利益計算)を行いつつ、キャッシュフローについても把握を進める、というこの両方を目指しています。特にキャッシュフロー計算書は企業の健全性(財務的な安定度)を分析する上で非常に重要です。どれだけ利益があっても、現預金の裏付けがないと突然倒産をすることもあります。

経理プラス:キャッシュフロー計算書の読み方と注意点

税務会計の留意点

税金の計算は財務会計を基準に行います。ただし、財務会計で計算された利益にそのまま課税されるのではなく、税法の規定に従って調整を行います。調整後の課税所得(税法上の利益)に対して課税されます。

例)

  • 減価償却処理
  • 財務会計:減価償却の年数は企業が独自に算定。
    税法:法定耐用年数を用いて処理をする必要あり。

  • 引当金計上
  • 財務会計:将来の費用を見越して計上する必要がある。
    税法:基本的に計上を認めていない。

税法では収益を益金、費用を損金、利益を所得と言います。益金と損金の計上基準が収益と費用の計上基準とズレるため、所得と利益は一致しない部分が出てきます。税務申告書では、そのズレについて各種調整をしたうえで納税額を計算します。多くの企業では、毎年同様の項目を調整することが多いです。前年の申告書を確認し、どのような項目が調整されているのかを確認すると、申告書作成が比較的円滑に進みます。
一方、財務会計ではズレについて税効果会計という制度を用いて「財務会計と税務会計の差異」について表示をしています。

まとめ

企業会計は財務会計と管理会計に区分されます。財務会計は外部利害関係者、管理会計は内部利害関係者が活用します。会計の基本目的は「適正な期間損益計算」であり、その目的を達成するためには適正なルールに従って会計処理が行われる必要があります。現在の会計は発生主義会計を採用していますが、現預金の裏付けがある情報を求める声からキャッシュフロー計算書が誕生しました。税務会計では、財務会計とのズレについて申告調整が行われ、財務会計側では税効果会計によりズレが表記されます。経理担当者としては、各会計制度がどのような要請のもとで発展してきたのかを認識し、なんのために必要な処理なのかを総体的に理解することが重要です。

この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。

著 者 税理士 高橋 昌也

税理士 高橋 昌也

高橋昌也税理士・FP事務所 税理士 1978年神奈川県生まれ。2006年税理士試験に合格し、翌年3月高橋昌也税理士事務所を開業。その後、ファイナンシャルプランナー資格取得、商工会議所認定ビジネス法務エキスパートの称号取得などを経て、現在に至る。

高橋昌也税理士・FP事務所