決算公告の義務は守れている?公告企業がいまだ少ない理由とは
決算公告という言葉を耳にしたことがある人は多いでしょう。この決算公告は大企業だけのものと考えていませんか。
株式会社の場合、その規模に関係なく決算公告を行うことが「義務」とされているのです(2005年7月公布「新会社法 第440条」)。しかし、多くの企業がこの義務を遂行してないのが実情です。そのため今回は、決算公告についてご紹介するとともに、公告の方法や罰則、多くの企業が決算公告をしていない理由などについて解説します。
決算公告とは
「公告」とは、公の場で告知をするという意味であり、「決算公告」は株式会社が決算を公の場で告知することを指します。これは、会社法440条1項で定められているものです。決算公告は株式会社が行うものであり、別の企業形態である合同会社などにおいては決算公告が定められていません。
一般的には、定時株主総会のあとに速やかに決算公告をすることになっており、決算公告は法律で「義務」とされています。しかし、「義務化」としていながらも、特に中小企業では決算公告をしていないことが多いのが実情なのです。
決算公告が義務化されている理由
前述の通り、決算公告は株式会社の「義務」です。そのため、義務の対象となる株式会社は国内に非常に多く存在するわけですが、なぜあえて「義務」としているのでしょうか。
株式会社には、株主が存在します。また、取引先となる企業が債権者となることがあります。企業の経営状況、財務状況が公開されることで、株主や債権者が万一のときに不良債権などの危険を避けることができるような、いわば「安全な取引が可能な環境」を整えることができるのです。
投資している企業や取引をしている相手企業の経営を知ることは、とても重要なことです。決算公告の義務化は、取引の安全性が保たれることで、より活発な市場が生み出されることにもつながるでしょう。
決算公告の手続き
決算公告をするには、どのような手続きが必要となるのか、おおまかな流れを解説します。はじめに、株式会社が行う決算公告の3つの方法について見ていきましょう。公告には、次のような方法があります。
官報に掲載する
官報は国が発行している機関紙で、法律や政令などの制定、改正などが掲載されます。行政機関の休日以外は毎日発行されています。
官報を定期購読している人はかなり限られており、一般的な新聞のように目に触れる機会が少ないため、決算内容を控えめに公告したい企業にとっては利用しやすい方法でしょう。
日刊新聞紙面に掲載する
日刊新聞は、比較的に購読者が多い新聞です。そのため、企業の業績アップや安定感を広くアピールしたいと考えている場合に利用しやすい方法です。しかし、ほかの方法よりも大幅に掲載費用が必要となることが予想されます。
Webに掲載する
自社のWebサイトや外部の信用調査機関のWebサイトなどに公告をする方法があります。自社サイトで公開する場合であれば費用がかかることはなく、公告までの時間も最短でできます。しかし、信用調査機関で公告する場合は、調査費用が必要になります。
公告する方法を選択したら、定款に記載しなければなりません。方法を変更した際にも同じように記載をします。
決算公告の流れ
官報に公告をする場合は、専用のフォームから申し込みをします。必要な書類等を準備して申し込み完了となりますが、掲載までは少し時間がかかります。日刊新聞に公告をする場合も、基本的な流れは同じです。
Webに掲載する電子公告の場合は、専用のページを作成する必要があります。電子公告の場合には掲載の細かい規定がありますので、確認しながら進めるとよいでしょう。
決算公告しないときの罰則
決算公告の義務を怠ったとき、または、不正の公告をしたときには、会社法976条第2号で「100万円以下の過料に処す」という罰則が定められています。
また、不正な公告により第三者に損害を与えたときには、会社や役員に損害賠償責任があると定められています。
しかし、法律で罰則が定められているにもかかわらず、決算公告の義務を遂行している企業は少なく、また、公告義務を遂行していない企業のほとんどは中小企業であるというのが実情のようです。
義務化でも公告企業が少ない理由
決算公告は義務ですが、なぜこれほどまでに公告をしていない企業が多いのでしょうか。
毎年行わなければならない決算公告は、中小企業にとって「公告のための費用も手間も大きな負担となってしまう」ことが理由として考えられます。
手続きに必要な労務時間も、公告掲載に必要な実質的費用負担も、抱えられる社員の数が限られる中小企業には、対応が難しい点があります。
また、以前から多くの中小企業が公告をしていない通例があること、罰則がありながらも実態としては罰則が行使されることがないこと、そして刑罰になる罰則ではないことが、積極的な公告につながらない要因と考えられます。
大手企業は自社サイトなどで公告を行っている例がありますが、なかなか手が廻らないという現状もあるのではないでしょうか。公告を行わない企業の数があまりにも多く、罰則の徹底をすることも現実的ではないのかもしれません。
まとめ
今回は、決算公告の方法や罰則、公告しない理由などについてお伝えしました。取引の安全性を高めるために公告を義務付けるという目的には、理解できる点があります。しかし、費用負担や公告手続きの労力負担は、中小企業にとって決して軽いものではないでしょう。
実際には行使されることのない罰則ですが、「義務化」になっていることは企業として意識していく必要はあるかもしれません。国としての改善があるかは未定の段階ですが、将来的に対応しなければならない可能性があることも視野に入れておいたほうがよいでしょう。
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