予防接種は経費になる? 経費の基本と税務・会計上の処理方法を解説

予防接種は経費になる? 経費の基本と税務・会計上の処理方法を解説

従業員がインフルエンザにかかると、通常1週間ほど休暇を取ることになり業務に与える影響がとても大きいものです。会社としては従業員に予防接種を受けてもらい、少しでもインフルエンザの疾患リスクを抑えたいと考えるでしょう。では会社が従業員の予防接種代金を負担し、経費として計上することはできるのか。この点について、ここで詳しく見ていきましょう。

経費になるものの定義

まずは、経費になるものの定義を確認しておきましょう。経費とは、会社が利益を産出するために使用した費用のこと。つまり、会社が利益を産出(引いては売上の産出)するためにかかり、その合理性が認められるものは基本的に経費として認められることになります。

予防接種を経費とするための要件

予防接種を経費とするためには、以下3つの要件を満たす必要があります。

1)業務上必要であること

業務上必要である理由を示す必要があります。たとえば、従業員がインフルエンザにかかると業務に与える影響が大きく、予防接種を会社主導で実施してリスクヘッジをかけるためといった具合です。

2)全社員を対象とすること

一部の従業員だけでなく全社員を対象にし、予防接種受診を希望する従業員全員分の予防接種費用を会社で負担する必要があります。

3)社会通念上、あまりに高額でないこと

世間一般で受診する予防接種費用と比較して、不相当に高額でない必要があります。

以上の3つの要件が揃わないと会社の経費として認められず、給与支給(給与課税)とみなされる恐れがあります。これは、従業員が会社より無償または通常より低い金額で経済的利益を受けた場合、現物給与とされる所得税法の定めに基づくものです。給与支給とみなされた場合は通常給与と同様、従業員に所得税が課されることになるため注意してください。

なお、正社員のみならず契約社員やパート社員に関しても3つの要件を満たす限り、予防接種の受診対象として差し支えありません。対象従業員の範囲を明確化するために、社内規定に記載があると好ましいでしょう。

予防接種費用の税務上の取り扱い

予防接種費用を会社で負担した場合、会計上の取り扱いはどうなるのでしょうか。会計計上する際の勘定科目と、経費精算方法をご紹介します。

<会計計上時の勘定科目>

会計計上時は、販売費及び一般管理費(販管費)の福利厚生費に計上します。福利厚生費とは、企業が従業員のために提供する給与以外のサービス対価を示すもの。全従業員を対象としていること、社会通念上あまりに高額でないこと、支給内容が現金でないことが要件として存在します。

経理プラス:福利厚生費と法定福利費、何が違う?福利厚生費に計上できる支出とは

<経費精算方法>

予防接種費用は申し込み時から会社で管理・支払いすべきなのか、それとも従業員が個別に立て替えて経費精算を行うべきなのか。答えとしては、会社規模などによりケースバイケースで判断することになります。

会社の規模が大きく常時全社員が一拠点に出社している場合には、医者を会社に呼んで集団予防接種を実施することが可能です。50人くらい同時に受診できる状況であれば、医者を派遣してくれる医療機関が多いでしょう。その場合、会社に一括で請求されるため支払いが楽に済みます。

一方、会社の規模が小さかったり拠点が細分化されていたりする場合、医者を呼ぶことは非現実的でしょう。そのため、従業員それぞれが医療機関で予防接種を受診して、費用を一時的に立て替えてもらいます。立替経費になる以上、全社員から領収書を提出してもらうことになるため、経理上の処理の負担は増えることになるでしょう。

経費精算はシステムを活用して効率化

予防接種は年に一回受ける場合が多く、予防接種をした従業員は経費精算をする際に処理する方法が分からずに経理に問い合わせたり、申請ミスが起きやすくなります。また、経理担当者も頻繁に処理をするわけではないため、勘定科目が分からなくなってしまうなんてことも…。そうした時に「楽楽精算」等の経費精算システムを活用することでミスなく円滑に処理を進めることができます。

自動仕訳機能でミスなく精算

「楽楽精算」では経費申請時の申請項目を自由に設定することができます。そのため、「予防接種」という項目を作ることで、年に一度の申請でも従業員は迷うことなく処理を進めることができます。
また、「楽楽精算」では申請画面の項目と勘定科目、税区分を紐づけることができるため、処理が完了すると同時に仕訳も自動で完了します。経理担当者の仕訳の手間も省くことができるのです。

>>「楽楽精算」の自動仕訳機能について詳細を見る

会計ソフト連携でさらに効率化

「楽楽精算」では仕訳データを会計ソフトに合わせた形で抽出し、そのまま会計ソフトに取り込むことができます。そのため、今まで発生していた仕訳入力作業がなくなるため、手入力によるミスが大幅に削減されます。

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おわりに

インフルエンザ等に伴う予防接種について、その代金が経費になるか否かを詳しく解説しました。結論としては、要件さえ満たしていれば経費として認められます。従業員がインフルエンザにかかると業務がストップしてしまい、事業にも多大な影響が出ることでしょう。リスクヘッジのためにも、従業員に予防接種を受けてもらえば安心感が高まります。その場合、当該代金は経費として計上するようにしましょう。

この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。

著 者 篠原 泰之

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1990年生まれ、東京都出身。スタートアップで経営管理業務に従事する傍ら、管理部門構築支援や簿記講師、執筆活動など、財務経理を軸に幅広く活動している。日商簿記1級保有。