経営力向上計画でお得な特典!?受けられるメリットを理解しよう

経営力向上計画でお得な特典!?受けられるメリットを理解しよう

日本企業の大多数を占める中小零細企業。そういった小規模な企業が、より生産性の高い事業環境を構築できるよう“経営力向上計画”という制度が2016年から始まっています。企業はこの制度を活用しているか否かによって、税制上の特典や制度融資の活用など、非常に大きな影響が出てきます。

 

経営力向上計画とは

経営力向上計画は、条件に該当する中小企業(資本金や従業員数の制限あり)が、特定の書式に基づいて事業計画書を策定し、所管の省庁から認定を受けることで、優遇税制や金融支援などの特典を活用することができるようになる制度です。

上述のとおり、制度は2016年から始まっています。2019年4月時点において、この計画を策定し認定を受けているのは約8万6,000社と言われています。これは日本全体の中小企業者数で考えると、約2%に該当します。

つまり大多数の中小企業は、この計画を策定しておらず、各種特典の適用も受けていないということを意味しています。

経理プラス:経営力向上計画とは?制度の概要とお得な特典

 

経営力向上計画のメリット(受けられる特典の種類)

本制度の特典には、以下のようなものがあります。

1.優遇税制(経営強化税制)の適用

建物附属設備、機械装置、一定の工具や器具備品、ソフトウェアなど、一定の設備投資を行うとき、その投資の規模や効果についてまとめた経営力向上計画を策定し、認定を受けることで、一定の優遇税制を適用することができます。

    • 即時償却

設備取得と同時に、全額(100%)を損金(経費)として計上することができます。

    • 税額控除

取得価額の10%相当額の税額控除を受けることができます。
※一定規模以上の法人は7%。また一定の制限額があり。

似たような制度としては「中小企業投資促進税制」というものがあります。しかし、投資促進税制では建物附属設備や器具備品は対象に含まれていません。また、その内容も特別償却(30%)と税額控除(7%)に制限されており、経営強化税制は対象資産の範囲、その効果ともに完全な上位互換制度として存在しています。

2.所得拡大促進税制の上乗せ

企業が従業員に対する賃金の支払額を増やした場合、その増加額に応じて法人税などを控除する「所得拡大促進税制」が2013年から始まっています。
2018年4月以降に開始される事業年度からは、制度の名前と規定の内容が変更され、引き続き“賃上げを続ける企業を支援する”という目的のもと、継続して適用されています。

改正後の本制度では「対前年度で当年度において増加した賃金総額」の15%が控除されます。しかし経営力向上計画の認定を受け、その計画に基づいて経営力向上がなされている場合には25%の税額控除をすることができます。

3.政府系金融機関からの制度融資

経営力向上計画の認定を受けている企業は、日本政策金融公庫による制度融資を活用することができます。新事業の開拓、経営の多角化などを進める場合に、政策金融公庫が掲げる基準金利の-0.9%という低金利による融資を受けられる可能性があります。

そのほか、M&A実施時における優遇税制(登録免許税や不動産取得税の減免)や、ものづくり補助金などの申請に関する審査時に加点がされるなど、多種多様な特典が用意されています。本制度の適用を受けられるか否かにより、税負担の金額や資金繰りの改善などにおいて大きな差が出てきます。

<具体例>
貸しテナントで飲食店を開業する場合

 

  • 開業資金について制度融資を活用することで金利負担を大きく軽減
  • 開店時に行う各設備投資(電気・給排水・ガス工事、厨房機器など)が即時償却や税額控除の対象になる
  • 開店に伴う人件費の増加額が所得拡大促進税制の対象に経営力向上計画の認定を受けていれば控除額が10%上乗せ

これらすべての特典を合計すると、数十万、数百万円の差は簡単についてしまいます。

以前は設備投資をする企業が中心となっていましたが、所得拡大促進税制の上乗せ措置も始まったこともあり、「これから成長しようとする企業」は、まず本計画を策定し認定を受けておくべき、という状況です。

参考:中小企業庁『中小企業等経営強化法に基づく支援措置活用の手引き(平成31年度税制改正対応版)』

経理プラス:固定資産税の軽減措置が受けられる?ヒントは「経営力向上計画」

 

交通費・経費精算システム「楽楽精算」 経理プラス メールマガジン登録

 

経営力向上計画の策定と認定を受けるまでの流れ

大まかに、次のような流れで計画を策定します。

  1. 「日本標準産業分類」で、該当する事業分野を確認する
  2. 事業分野に対応する事業分野別指針を確認する
  3. 事業分野別指針または基本方針を踏まえて計画を策定

計画策定後、事業分野に応じた主務大臣に計画書を提出します。認定がおりると、認定書が郵送で戻ってきます。

設備投資に伴う経営強化税制の適用を受ける場合には、計画の策定にあたり「その設備投資が経営力向上に資すること」の証明をする必要があります。工業会などからの証明書が出る場合(A類型)には証明書を取得します。そういった証明書が出ない場合には、自社で投資計画を策定し経済産業局から確認を受ける(B類型)必要があります。

経営強化税制の適用を漏らさず受けるためには、以下のような期日にも注意が必要です。

A類型の工業会証明書の取得:設備取得前にメーカーなどを通じて工業会に取得を申請しなければなりません。

B類型の投資計画書:設備取得前に投資計画書を作成し、管轄の経済産業局へ提出する必要があります。例外のない規定ですので、B類型を採用するときには一番注意しなければならない点です(計画の確認は設備取得後でも可)。

経営力向上計画の申請:基本は設備取得前に申請をし、その計画について認定を受ける必要があります。ただし、設備取得から60日以内に申請をすれば良いことになっています。

そして、何よりも気をつけなければならないのは、経営力向上計画の認定は事業年度末までに取得していなければなりません。計画の申請から認定までは約一ヶ月かかると言われているため、期末近くの設備投資については、念入りに準備をしておかないと、経営強化税制の適用漏れを起こす恐れが非常に高いです。

自社だけでこれらの期限を守りながら手続きを行うことが困難な場合には、認定経営革新等支援機関から計画の策定などについて支援を受けることが可能です。支援機関に早めの相談をすることが、確実に適用を受けるための重要なポイントです。

参考:中小企業庁『経営サポート「経営強化法による支援」』

参考:中小企業庁『- 中小企業等経営強化法 – 経営力向上計画策定の手引き』

経理プラス:経営力向上計画の認定までの流れ 対象と必要な準備とは

 

まとめ

経営力向上計画を策定し認定を受けることで、税務や金融での各種特典を活用することができます。本制度を活用しないと対象とならないものも多く、これから事業を発展させようという企業は、まず認定を取っておくべき制度です。計画の策定や認定には期限もあり、自社で進めるのが難しい場合には支援機関のサポートを受けることもできます。

この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。

著 者 税理士 高橋 昌也

税理士 高橋 昌也

高橋昌也税理士・FP事務所 税理士 1978年神奈川県生まれ。2006年税理士試験に合格し、翌年3月高橋昌也税理士事務所を開業。その後、ファイナンシャルプランナー資格取得、商工会議所認定ビジネス法務エキスパートの称号取得などを経て、現在に至る。

高橋昌也税理士・FP事務所