経営力向上計画の認定までの流れ 対象と必要な準備とは

経営力向上計画の認定までの流れ 対象と必要な準備とは

中小企業が様々な特典を受けることができる経営力向上計画。今回はその認定取得までの流れについて、概要を確認していきましょう。

どんな企業が経営力向上計画の認定取得を目指すべき?

最初に確認をしたいのは、どのような企業が経営力向上計画の認定取得を目指すべきなのかということです。経営力向上計画における最大の目玉は「設備投資に対する減税措置」です。従って、設備投資計画がある企業は認定取得について積極的に検討をするべきでしょう。

税制特典は「固定資産税の半減」と「法人税等における経営強化税制」の2つがあります。それぞれの特典について、取得する設備には次のような条件があります。

対象設備

対象設備条件
機械装置160万円以上のもの
工具測定工具および検査工具で30万円以上のもの
器具備品30万円以上のもの
建物附属設備60万円以上のもの
ソフトウェア70万円以上のもの(経営強化税制のみ該当)

国税庁HP:中小企業等投資促進税制(中小企業者等が特定経営力向上設備等を取得した場合の特別償却又は税額控除)

それぞれの設備については、販売開始時期についても指定があります。あまり古いものの場合には該当しないことがありますので注意が必要です。また、あくまでも対象となるのは新品の取得で、中古資産の取得は対象外です。

リースによる取得の場合にも対象となりますが、注意すべき点もあります。リースの場合、経営強化税制では即時償却を選択することはできず、税額控除のみ対象となります。また固定資産税の半減については、リースの形態によって手続きの流れも変わりますので、リース会社に確認をするようにしましょう。

経営力向上計画認定に必要な事前準備を確認する

経営力向上計画の作成時には、事前に準備が必要な資料・手続きがあります。

税制上の特典

上で紹介した各種設備について、その設備が「生産性の向上に資することを証明する書面」が必要になります。簡単なのは、購入予定のメーカーに対して証明書の発行をお願いする方法です。流れとしては

  1. 設備投資計画を立てる
  2. 購入する設備が決まった時点で、メーカーに証明書の発行を依頼する
  3. メーカーは工業会に発行を依頼、メーカーから証明書が企業に届く
  4. 企業は届いた証明書に記載されている情報を経営力向上計画に記載する
  5. 経営力向上計画が完成、主務大臣に提出
  6. 計画が認定を取得、取得した情報に従って税務申告を行う

このようになっています。メーカーから受け取った証明書は「固定資産税の半減」「経営強化税制」どちらの用途にも使用することができます。なお、リースでの取得時にはリース契約に関する資料も必要となりますので注意が必要です。

また、経営強化税制に関してはメーカーからの証明書取得以外にも方法があります。自社で収益力強化設備に該当する旨の投資計画を作成し、それを経済産業局に提出をして確認を受けることで、経営力向上計画の適用を目指すことができます。
たとえば工場をまるごと建設するような場合、それぞれの設備についてメーカーから証明書を取得するのは非常に煩雑です。そのような場合には「工場全体としての収益力向上に関する投資計画」を作成し、経済産業局から確認を受けることにより全体が適用の対象となります。

金融上の特典

政策金融公庫などから低利融資を受けたい場合、計画書を作成する前の時点でそれぞれの機関に事前相談をしておく必要があります。

期限について

上で紹介した作業ですが、基本的には設備投資が行われる前の時点で経営力向上計画の認定を取得している必要があります。従って、設備投資について計画が始まったら、できる限り速やかに証明書の取得依頼、あるいは経済産業局に対する投資計画の作成に着手することが必要です。
ただし、固定資産税の半減および経営強化税制ともに例外規定も設けられています。設備の取得から60日以内に経営力向上計画の申請をすれば、取得後の認定でも適用を受けることは可能とされています(経済産業局への投資計画提出については、設備取得前に済ませておく必要があります)。

しかし、この例外規定については注意が必要です。固定資産税の半減については設備取得年の12月31日まで、経営強化税制に関しては設備取得をした事業年度末までに経営力向上計画の認定を取得していなければなりません。従って年末や事業年度末に設備投資を行う場合には、一連の作業について事前に済ませておかないと特典の適用が不可能になってしまいます。

他にも色々と細かな注意点が存在します。自社だけで作成、認定を受けることに心配がある場合には、まず認定経営革新等の支援機関にあらかじめ相談しておくことを強くおすすめします。また、経営力向上計画は設備投資をしない企業においても、税務上の特典が適用できる方向で税制改正が進んでいます。今後、様々な企業で特典を活用できる可能性が広がっていますので、気になる場合にはともかく認定経営革新等支援機関に相談をしてみましょう。

まとめ

特に設備投資を検討している企業は経営力向上計画の策定および認定取得を検討する価値があります。計画の作成および認定取得には、事前に資料の準備が必要です。基本的には設備取得前の時点で認定を受けることが必要なので、設備投資の計画が動いた時点で行動を始めるべきです。心配な場合には認定経営革新等支援機関に相談してください。また今後、設備投資以外の面でも経営力向上計画を活用した特典が拡充されていきます。

この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。

著 者 税理士 高橋 昌也

税理士 高橋 昌也

高橋昌也税理士・FP事務所 税理士 1978年神奈川県生まれ。2006年税理士試験に合格し、翌年3月高橋昌也税理士事務所を開業。その後、ファイナンシャルプランナー資格取得、商工会議所認定ビジネス法務エキスパートの称号取得などを経て、現在に至る。

高橋昌也税理士・FP事務所