関連当事者取引の開示理由と開示上の留意点

関連当事者取引の開示理由と開示上の留意点

関連当事者取引を開示すべき理由、制度の趣旨

関連当事者取引を開示すべき理由は、財務諸表の内容を正しく把握するためです。関連当事者取引は、通常の第三者との取引条件とは異なった条件で行われ、直接の企業間の取引がない場合においても、関連当事者の存在が、会社の財務状況や業績を含めた経営全体に重要な影響を与える可能性があります。財務諸表を見る人が、会社と関連当事者との取引や関連当事者の存在が財務諸表に与えている影響をしっかりと把握するために、適切な情報を開示することが求められています。

関連当事者との取引とは、会社と関連当事者との取引のことで、資源の移転や債務を移転させる、または役務の提供のことをいいます。さらに、関連当事者が第三者と企業の取引に重要な影響を及ぼしているものも含みます。「会社」とは、連結財務諸表上では連結会社のことを指し、個別財務諸表上は財務諸表作成会社のことを指します。

関連当事者とは、会社法、財務諸表等規則で定める取引注記の対象となる関係者のことであり、具体的には、以下の者を指しています(計算規則140条4項、財務諸表等規則8条の10)

  1. 親会社
  2. 子会社
  3. 親会社の子会社
  4. その他の関係会社ならびにその他の関係会社の親会社および子会社
  5. 関連会社および関連会社の子会社
  6. 主要株主(10%以上の議決権を保有している株主)およびその近親者(2親等内の親族)
  7. 役員およびその近親者
  8. 主要株主およびその近親者、役員およびその近親者が議決権の過半数を所有している場合の当該会社等および当該会社等の子会社

交通費・経費精算システム「楽楽精算」 経理プラス メールマガジン登録

実際、他社ではどんな関連当事者取引が開示されているか

関連当事者取引は1千万円を超えるものすべてに関連当事者の分類を行い開示することが求められています。

たとえば、親会社による、営業投資有価証券の取得、関係会社株式の売却、関係会社株式の取得等が有価証券報告書に記載される必要があります。

別の会社では、法人主要株主との製品販売及び原材料の購入取引が記載され、取引条件ないし取引条件の決定方針等が記載されていました。また、そこには、「(1)販売価格は市場価格、総原価を勘案してあらかじめ取り決めた仕切価格に市場の実勢価格を加味して決定している。(2)購入価格は市場の実勢価格により取引の都度決定している。」との記載があり、合理的な取引であることを印象づけています。

開示対象となる関連当事者との取引がある場合、個々の関連当事者ごとに、以下の項目を開示することが原則として定められています。

  1. 関連当事者の概要
  2. 会社と関連当事者との関係
  3. 行われた取引の内容。さらに、形式的・名目的には第三者との取引である場合は、形式上の取引先名を記載した上で、実質的には関連当事者との取引である旨を記載する
  4. 取引の種類ごとの取引金額
  5. 取引条件及び取引条件の決定方針
  6. 取引により発生した債権債務に係る主な科目別の期末残高
  7. 取引条件の変更があった場合は、その内容の詳細と、変更内容及び当該変更が財務諸表に与えている影響の内容
  8. 関連当事者に対する貸倒懸念債権及び破産更生債権等に係る情報(貸倒引当金繰入額、貸倒損失等)

注記の教科書

会社法の計算書類の注記表にも「関連当事者との取引に関する注記」が設けられています。同注記は、会計監査人設置会社であれば必ず記載しなければならないことになっています。これは、上場企業でなくても、資本金が10億円を超えた会計監査人設置会社になれば、注記が必要になることを意味しています。

数年前に私が働いていた会社でも資本金が10億円を超えてしまい「関連当事者との取引に関する注記」をせざるを得なくなりました。パートナーの監査法人から「会社法決算書の読み方・作り方」(新日本有限責任監査法人 (編集) 、中央経済社)」の本を渡され、「この本を参考に注記を仕上げてください」と言われたことがありました。有価証券報告書で見慣れた注記ですが、いざ、自分で作るとなるとなかなか難しいのに驚かされました。難しいのは内容ではなく、「関連当事者との取引に関する注記」は表形式にするのが一般的なので、エクセルを使ってうまく表に収めなくてはいけないことだったのです。当時は、この業務を本一冊渡して遂行させるのかと思いましたが、自身で学び実務を行ったことは良い経験でした。

表は作成のノウハウは注記すべき内容によって異なるのでお伝えできませんが、株主総会招集通知に添付する会社法決算書の作成には「会社法決算書の読み方・作り方」が個人的に非常に勉強になりました。経理、債務担当者として目を通しておくといいでしょう。私の場合、業務として遂行する必要があったので読んだのですが、「関連当事者との取引に関する注記」も含めて良い教科書になりますのでご一読ください。

経理プラス:「関連会社」と「関係会社」と「子会社」って何?違いを理解しよう

「経理プラス」無料メルマガ会員登録はこちら

この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。

経費精算システム「楽楽精算」汎用

● 著者

矢田 裕実

矢田 裕実

マスコミ、商社、IT、小売、メーカーなどの異なる業種において、また、外資、内資、中堅規模やベンチャーなど幅広い規模の企業にて経理財務を中心に経験。管理部門長や取締役も務め、経営再建、事業計画作成や資金調達、IPO前後の制度作り、内部統制の整備などを実行。現在は、ベンチャー企業の経営アドバイザーとして活躍。