ルールが細かい減価償却費!税務調査で指摘されやすいポイントと対策
減価償却費はルールが複雑です。
そのため、税務調査で「知識不足による誤った判断」を指摘されることが多いので注意が必要です。
今回の記事では、税務調査で指摘されやすいポイントについて、前提となるルール、経理担当者が気を付けなければならないポイントについてお伝えします。
税務調査の実態 ―減価償却費のミスが発覚するまでの流れ―
減価償却費の調査は、関係書類を調べられるところから始まります。
まずは、固定資産を購入する際に発生する書類のやり取りを始めから終りまで思い浮かべてみてください。購入するかどうかを決めた会議で議事録をとる、見積書を作ってもらう、契約書を結ぶ、資産が納品される、納品書を受け取る、実際に事業で使う、使用履歴を日報に記載する、請求書を受け取る、代金を支払う、領収書を受け取る、と多くの書類が発生します。
税務調査で指摘されやすい4つのポイントと対策
ルールが細かい減価償却費ですが、指摘されやすいポイント4つを抑えておけば税務調査で修正が加わるリスクをぐっと下げることができます。
指摘ポイント1:取得価額 ―「いくらで」買ったのか―
指摘されやすいポイント
本来は資産計上しなければならなかった支出を、費用処理してしまったことを指摘されます。
対策
減価償却資産を「いくらで買ったのか」という取得価額の金額には、本体価額だけではなく使用するために必要な付随費用も含めなければなりません。
そのため、引取運賃、運送保険料、取付手数料などを支出時に費用処理してしまっていないか確認することが大切です。 また、処理を誤ってしまうことが多い項目のひとつに「建物の固定資産相当額の支払いを租税公課として費用処理してしまった」というものがあります。
前の所有者が負担した固定資産税のうち、譲渡後の期間に対応する分を次の買主が負担するというのは取引慣行上よく行われます。しかし、固定資産税はあくまでも1月1日に所有していた売主に課税されたものであるため、買主が取得後期間に相当する金額を支払ったとしても、その金額は「固定資産税」ではなく「建物の代金」とみなされます。
指摘ポイント2:耐用年数 ―「何年で」償却するのか―
指摘されやすいポイント
経理担当者が選んだ資産のカテゴリが、資産の内容と合っているかどうかに指摘が入ります。
各減価償却資産に用いる耐用年数については、「どう作られていて」、「何に使用しているのか」によって細かく決められています。
参考サイト:国税庁HP:耐用年数表
対策
専門書などを用いて、法令を正確に理解してから判断することが必要です。
資産のカテゴリは耐用年数表で細かく分けられていますが、とても分かりづらく苦労した経験はありませんか?
取得資産が「何から作られていて」、「何の目的で使用しているのか」は所有者側の経理担当者として当然知っていても、耐用年数表で「どのカテゴリに該当するのかが」しっくりこない事はよくあります。
その場合は、実務問答集などを用いて、あてはまるケースを調べてから判断を行うことが有効です。
参考書籍:Amazon:大蔵財務協会『減価償却質疑問答集〈平成26年版〉』
指摘ポイント3:償却開始時期 ―「いつから」償却できるかどうか―
指摘されやすいポイント
購入した月から減価償却費を計算したけれども、実際に事業で使用したのが翌月だったという場合には指摘が入ります。
対策
償却資産を初めて事業で使用した日を記録に残しておくことが大切です。
税務調査では、新規に取得した減価償却資産の事業供用日を明らかにするために、賃貸用建物であれば入居者管理簿、機械装置であれば作業日報などが確認されます。
購入した日にすぐ使っていたとしても、記録が残っていなかった場合には記録を確認できる翌月以降の減価償却費しか認められない可能性がありますので注意しましょう。
指摘ポイント4:少額減価償却資産 ―「例外的に」処理しても良い資産なのか―
指摘されやすいポイント
非減価償却資産(電話加入権や骨董品など)を費用処理してしまった、20万円未満の一括償却資産の除却損を計上してしまったなどがあります。
対策
金額が少額のため、手続きが簡易的に認められている少額減価償却資産ですが、判断も簡易的にしてしまうと「誤った判断」をしてしまいます
上記に挙げた他にも、応接セットはイスとテーブルの合計額で金額判定を行わなければならないなども注意しなければならないポイントのひとつです。
下記記事で少額減価償却資産についてまとめております。税務調査だけでなく少額減価償却資産を用いた節税などについても理解を深めて頂ければと思います。
経理プラス:少額減価償却資産の基本と応用―決算月の節税も!日常の経理処理も!
最後に
いかがでしたでしょうか?ハッとしたポイントはありましたか?
税務調査で指摘されやすいポイントを数点押さえておくだけで、法令の理解が深まり、「誤った判断」が減り、修正のリスクを小さくすることができます。
下記の記事では棚卸資産について調査で指摘されやすいポイントがまとめてあります。
本記事と併せてお読み頂きまして、経理担当者としてさらなるスキルアップの一助としていただければと思います。
経理プラス:減価償却とは?定率法と定額法の違いと計算方法を解説!
この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。