マイナス金利が銀行融資に与える影響とは?

日銀がマイナス金利を導入

日銀は2月16日から金融機関が日銀に預けるお金の一部にマイナスの金利をつける「マイナス金利政策」を始めました。日銀の政策目標は〝”物価の安定との2%の「物価安定の目標」”となっています。しかるに、昨今の一段の原油安に加え、中国をはじめとする新興国・資源経済に対する先行き不透明感などから金融市場が世界的に不安定になっていることを取り上げ、これまでのゼロ金利政策だけでは日銀の政策目標達成が困難と判断し、「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」の導入を1月29日の政策委員会・金融政策会合で決定しました。

 

当面は▲0.1%だがさらにマイナス幅は拡大の可能性も

日銀は当面、金融機関が保有する日本銀行当座預金に▲0.1%のマイナス金利を適用します。そして、今後さらに必要な場合、金利を引き下げる方針です。欧州で採用されている階層構造方式により政策金利残高にはマイナスを、マクロ加算残高にはゼロを、基礎残高にはプラスを用い、スイスでは▲0.75%、スウェーデンでは▲1.1%、デンマークでは▲0.65%の事例をあげ、必要ならいつでも引き下げる決意です。
マイナス金利の導入により、質的にはイールドカーブの起点の引き下げ、量的には大規模な長期国債買入れと合わせて、金利全般により強い下押し圧力を加えていくことを日銀は表明しています。取引先金融機関全体でみると▲0.1%が適用される政策金利残高は、当初は約10兆円となりますが、金融機関でのばらつきにより、マイナス金利の適用部分はこれより大きいと見込んでいます。

 

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今後の影響と為替相場

日銀の政策目標を達成するには円安への誘導が必要だと言われています。アメリカが昨年12月16日にゼロ金利政策に終止符を打ったとき、為替相場は円安への流れが加速するものとみられていたのに、ドル円相場はすぐに円高基調に戻ってしまいました。期待通り為替相場が動かない背景には、日本の1,100兆円にのぼる現金・預金残高が深く関係しています。2015年12月22日付の日銀発表「資金循環の日米比較」の資料によれば、日本の金融資産総額1,684兆円の現預・預金比率は52.7%であり、いぜんとして50%を維持しており、アメリカの13.7%(ユーロエリア34.4%)と比べて極めて高いです。日本は金融資産が銀行に預けられる傾向が強く、債権や、投資信託や、株式へ向かわないことが円高圧力を高めています。
2月22日のロイターの記事では「国内銀行が大口預金にマイナス金利を適用すれば、円高抑制効果があるとの見方が出ている」ことが報じられています。その事例として、日本企業が海外部門の利益や配当を国内に移すリパトリエーション(資金の本国還流)を抑える可能性があるという見立てがあるとしています。また、現時点でマイナス金利を大口預金に適用すると決めた国内銀はゼロですが、仮に適用されれば、数千億円規模のドル売り/円買いが軽減され、円高圧力を和らげる効果はあるとの声が出ていると論評しています。

さらに、18日の佐藤康博・全国銀行協会長(みずほフィナンシャルグループ社長)は定例会見で、預金に対するマイナス金利導入の可能性について、各金融機関の判断としながらも、みずほとして調査・研究していると説明しました。その際、ユーロ圏では、大口預金に対して残高に応じた手数料を設定するケースもあるというというコメントもありました。
各銀行が大口預金にマイナス金利を適用しはじめれば、リパトリエーション(資金の本国還流)を含め、金融資産は銀行以外のところに向かうものとみられ、円高抑制に向かうことが期待されています。

 

銀行からの融資は受けやすくなるか?

日銀はマイナス金利の導入によって、銀行が資金を積極的に中小企業へ融資して総需要を拡大するよう期待しています。したがって、効果がなければ日銀はさらなるマイナス金利の導入を推し進めていくと思われます。
一方、マイナス金利が発表されたあと、銀行株が売られました。これは、銀行の収支が悪化するとみた投資家が銀行株を売ったことに起因します。マイナス金利の導入により銀行の収益源である利ざやが減少することは避けられず、経営状態は悪化するでしょう。そうなれば銀行は当座預金の保有残高を上げざるをえず、融資の引き上げという最悪のシナリオが待っています。
マイナス金利の導入と、日銀の決意を考え併せれば、金利は確実に低下していきます。当面、銀行は融資先をさがすのに必死になるはずです。企業にとっては好機到来です。銀行融資による資金調達額が増加するからです。この融資枠の増加分を長期金利が大幅に下がったタイミングで低利の長期借入金契約に振り替えることができれば、為替レートの安定度に注視しながら、設備投資や事業拡大に資金が活用できます。投資しきれずに資金を余らせたてしまった場合はマイナス金利が適用され多少の影響がでます。マイナス金利による損失の影響額より、積極投資によって得られるリターンははるかに大きくなるはずなので、この好機を活かすように企業は行動すべきではないかと考えます。

 

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経費精算システム「楽楽精算」

● 著者

矢田 裕実

矢田 裕実

マスコミ、商社、IT、小売、メーカーなどの異なる業種において、また、外資、内資、中堅規模やベンチャーなど幅広い規模の企業にて経理財務を中心に経験。管理部門長や取締役も務め、経営再建、事業計画作成や資金調達、IPO前後の制度作り、内部統制の整備などを実行。現在は、ベンチャー企業の経営アドバイザーとして活躍。