CFOを目指す経理担当者が知っておくべき「財務」の本当の意味(前編) ―「経理」と「財務」の違い―

CFOを目指す経理担当者が知っておくべき「財務」の本当の意味(前編) ―「経理」と「財務」の違い―

経理担当者の皆様であれば「財務」という言葉を耳にする機会はあると思います。その意味を、確証を持って説明できる人は少ないのではないでしょうか。
今回の記事では、経理担当者の皆様が日々行っている「経理」と、「財務」という言葉それぞれの本当の意味を説明します。経理担当者が本当にしなければならないこと、経理担当者なら身に付けたい「財務」の力をお伝えします。

「経理」と「財務」は違う

経理と財務の違いとは、会社内での分け方を考えてみると、経理担当者が作成した会計資料をもとに、財務担当者が資金調達の予定を立て実行するというものです。このように「経理」と「財務」は密接な関係にありますが、担当部署が異なる様に違うものです。
時系列で分けると、「経理」は過去、「財務」は未来と言われます。扱うもので分けると、「経理」は利益を扱い、「財務」はキャッシュを扱うとも言われます。それぞれの役割について詳しく見ていきましょう。

「経理」とは何か ―過去の利益を扱う―

「経理」の仕事は、企業に入ってきたお金(収入)や企業から出て行ったお金(費用)を集計し、利益を算出することです。

「経理」がしなければならないこと

実際の業務は経理担当者の皆様が普段行っている作業をイメージしてください。毎日の膨大な取引を仕訳に起こし、その1本1本を各勘定科目に集計し、決算書を作成します。

【参考】―決算書の役割―

 

  • 貸借対照表

資金や将来資金となる資産がいくらあり、負債や将来支払わなければならない債務がいくらあり、差し引き会社としていくらの価値があるのかという財務状態が分かります。

  • 損益計算書

どんなものから売り上げが立ち、それにかかっている原価、販売管理費はどのようなものにかかっているか、その結果として会社がいくら儲けたのかという経営成績が分かります。

  • キャッシュフロー計算書

期首にいくらの現預金があり、どのような要因で増減し、その結果期末はいくらの現預金になったのかという資金の流れが分かります。

「経理」の役割

企業の事業活動を正確に記帳し、タイムリーな報告を上げることが経理の第一の役割です。
経営判断や「財務」の活動は、経理が作成した報告に基づいて行われます。正しい月次決算を組んだとしても作成するのが遅ければ次の手が遅れますし、タイムリーに月次決算を組んだとしても不正確であれば次の手を間違ってしまいます。
財務状態や経営成績の報告の他にも、会社の収益性を向上させるためにコストダウンや業務効率化を図ることも経理の大切な仕事です。

「財務」とは何か ―将来のキャッシュを扱う―

「財務」は、企業が事業活動に必要な資金を計算し、集めて、管理する仕事です。

「財務」がしなければならないこと

現時点より将来の資金の出入りを管理して、不足することがないようにすることや、新たな設備投資に必要な資金調達を行います。
具体的には、銀行融資や株式発行などの資金調達、予算管理、投資やM&Aなどの資金運用などです。財務には専門知識に加えて、将来に向けた行動を行うための計画実行力も必要になります。

「財務」の役割

経理部門が上げてくれた会計資料に基づいて、企業の将来の経営戦略を財務の視点で考えることが役割です。
会社が倒産するのは、儲けがなくなり赤字になるからではなく、黒字倒産の様に資金がなくなり取引先や銀行への返済ができなくなるときです。
無事に資金調達ができたとしても、過剰な投資を行えば会社の財務体力がなくなり何もできなくなります。しかし、慎重になりすぎて投資を控えてはチャンスを逃がしてしまいます。「財務」には、経営者が現在の状況から将来のリターンを見込み、適切な事業運営をするためのサポートをすることが求められます。

最後に

いかがでしょうか。まずは、「経理」は過去の利益、「財務」は将来のキャッシュという意味が少しは掴めましたでしょうか。
実務を考えてみると経理担当者の皆様が行っている仕事は単純な経理業務の他にも、交通費の精算や請求書の発行などの総務的なものもあります。また、「財務」の仕事もお願いされることも多いと思います。
経理担当者の皆様は、「経理」に何が期待されているのかというのをしっかりと理解した上で、本業だけでなく周辺業務についても経理担当者としての役割をまっとうして頂ければと思います。さらなるスキルアップを目指す方は、「財務」が担うべき役割を理解し、経営にインパクトを与えられる優秀な経理担当者を目指してみてはいかがでしょうか。
後編では、財務の仕事をより具体的に見ながら経理担当者が身に付けたい「財務」の力をお伝えします。

この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。

著 者 公認会計士 服部 峻介

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北海道大学経済学部卒。有限責任監査法人トーマツ入社後、上場企業の監査、内部統制、IPO支援、株価算定、M&A、不正調査等を実施。経営コンサルティング会社役員を経て、Seven Rich会計事務所を開業。スタートアップ企業を中心に、3年で160社以上の新規クライアントに対して会社の設立から会計税務、総務、ファイナンス、IPOコンサルなど幅広い支援を行っている。

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