粉飾は、見破られる! 融資担当者はここを見ている -在庫、売上編-

粉飾は、見破られる! 融資担当者はここを見ている -在庫、売上編-

粉飾決算や不適切会計が新聞を賑わせていますね。
上場企業がそのような会計を行う場合は、ノルマの達成や上場の維持等組織としてのプレッシャーが原因となっていることが多いです。

中小企業が粉飾決算をする場合は、金融機関から融資を受けたい、あるいは融資を継続してもらいたいということが引き金になっていることが多くあります。
決算数値が悪い会社にお金を融資してくれないだろうという恐怖心から、もっと良く見せたいと思って、粉飾決算に走ってしまうのでしょう。
ただ、融資をする金融機関側もノーチェックで決算数値を鵜呑みにするわけではありません。
定期的に研修等を行って、粉飾決算の手口等を学んでいるのです。
以下では、主に行われる粉飾の手口と融資担当者がどのような視点で決算数値を見ているのかについて記載致します。

もちろん粉飾は良くないことですし、決して手を染めてはいけないことですが、知識としてどのような目で見られているのかを知っておくことも重要でしょう。

期末の在庫は正確か?

会社の決算書の中で在庫の数値は、粉飾の目的で調整されやすい項目の一つです。
利益を多めに計上したい会社であれば、期末の在庫が実際よりも多めにあることにして、決算書に在庫として計上することで、実態よりも多めに利益を計上することができます。
このような決算数値をもとに融資の判断をすれば誤った判断を下すことになるので、そうならないように融資担当者は目を光らせています。
融資担当者は在庫を使った粉飾をどのような着眼点で見破っているのでしょうか。
まず、確認するのは、過去からの趨勢で見て、原価率が一定の推移となっているかです。異常な増減をしているようであれば、在庫の金額を操作して決算を組んでいる可能性があると考えます。
原価率がかなり動いている場合は、原因を聞いてみてその理由に妥当性があるかどうかを確認するでしょう。
また、在庫の回転期間(在庫の金額を年間売上原価の1ヶ月平均値で除した数値)を求めてみて、どの程度の期間相当の在庫を保有しているかを調べるでしょう。余りにも多めに在庫を保有しているようであれば、在庫を水増ししている可能性を疑われます。
中には、粉飾をしているわけではないのに、実際に在庫の金額が増えすぎている会社もあると思います。このような会社は、不良在庫をかなりかかえており、将来多額の損失を発生させる可能性が潜んでいたり、組織的な発注体制を敷いていなかったりするために無駄な発注が原因で在庫がかさんでしまっている可能性があります。
管理体制が悪いというのは融資を受けるにあたってプラスにはなりませんので、組織だった適正発注ができる仕組み作りを目指しましょう。

架空売上を疑われる

もう一つの決算粉飾の代表例は、本来翌期に計上すべき売上の当期への繰り上げ計上や、原価や販売費一般管理費の計上の先送りですが、損益計算書にだけに目を奪われず、貸借対照表の残高内訳や推移比較、同業種とのデータ比較がなされた結果、怪しい動きに気付かれることもあります。
売り上げの前倒し計上により、仕入れ等の原価が発生せず、売上のみが計上されるので、単純に考えれば、損益計算書の売上総利益がよくなるはずです。
特に業績が落ち込む流れの中にある企業にとっては、一般的には利益率の改善は至極困難なものですから、合理的でない売上総利益の改善は要注意の対象となります。
次に、貸借対照表へと目は向けられます。
売上の前倒し計上により売掛金が通常より膨らむので、売掛金回転期間の過去の年度との比較、貸借対照表の月次ベースでその比率の推移に目を配られると異常値があぶりでてきます。
さらに、怪しい場合は、翌期首の売掛金の中身まで見られます。たとえば仮に売掛金の回収サイトが2ヶ月であるとすると、本来4月の売上を3月に計上してしまうようなケースでは、5月の回収入金が3月計上の売掛金より大幅に少なくなってきます。資金繰り表で入金予定を見ると不整合に気付かれることもあります。
まして、売上の前倒し計上ではなくて、架空の売上を計上しているようなケースであれば、入金されない売掛金が雪だるま式に累積されていきますので、売掛金残高が残り始めたらそのあたりも疑われる対象となります。
また、仕入原価を先送りして損益をよく見せるケースもありますが、特に建設業等では貸借対照表の「未成工事支出金」に注目されます。この科目は在庫と同じ意味を持ちますが、材料費、人件費をはじめ多くの経費が集約され、かつその計算過程が複雑になりますのでその内容の真偽の程は分かりにくいものになります。工事台帳はもちろんですが、工事の進行度合いを確認できるものの提出を求められても説明できるようにしておきましょう。

粉飾決算、不適切会計を行うことは、言語道断ですが、融資担当者の目を意識して決算を行うよう心がける事が大切です。

次回は、「粉飾は、見破られる! 融資担当者はここを見ている -前期損益調整、押し込み販売編-」をお届けしますので、是非今回の記事とあわせてご覧ください。

この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。

経費精算システム「楽楽精算」

著 者 公認会計士 中尾 篤史

CSアカウンティング株式会社専務取締役  公認会計士・税理士 日本公認会計士協会 租税調査会 租税政策検討専門部会・専門委員 会計・人事のアウトソーシング・コンサルティングに特化したCS アカウンティング㈱の専務取締役として、中小企業から上場企業及びその子会社向けに会計・税務のサービスをひろく提供している。 著書に「BPOの導入で会社の経理は軽くて強くなる」(税務経理協会)「たった3つの公式で「決算書」がスッキリわかる」(宝島社新書)「経理・財務スキル検定[FASS]テキスト&問題集 」(日本能率協会マネジメントセンター)など多数

CSアカウンティング株式会社