【2019年度税制改正】電子帳簿保存法の規制緩和で何が変わる?

電子帳簿保存法という法律をご存知でしょうか。なんとなく「帳簿を電子的に保存する」ということはわかるかと思いますが、実際に運用するには超えなければならない壁も存在します。その概略について学ぶとともに、2019年度の税制改正による影響についても確認しましょう。

電子帳簿保存法の大前提は「省力化」「省スペース化」

仕事を継続しているとどんどん溜まってくる紙の資料。その保管には多大なる空間が必要です。数多くの設備投資や家賃負担が、実際には生産性の向上にまったく関係しない「資料の保管」に費やされていることは、日本経済にとって多大なる損失と言えます。

そのような現状を変えるために運用が始まったのが電子帳簿保存法です。1998年に施行され、それまで紙による保存が絶対であった税務関係の資料について、電子データによる保存が認められるようになってきました。

その後、段階的に条件が緩和されてきました。特に紙データをスキャンすることによる電子保存が認められるようになったのは大きな進展です。相手先から紙で発行された資料について、自社で電子的に保存することができるようになりました。

さらに、以前はスキャンできる領収書等の金額に制限があったのですが、それも撤廃されました。またスマホでの写真撮影も許可されるようになるなど、制度としての使い勝手は年々良くなっています。

電子帳簿保存法は、この5年ほどで考えてもずいぶんと運用が変わってきたことがわかるかと思います。開始当初から考えれば随分と使い勝手が良くなってきたのは間違いがないのですが、実際にはまだ普及しているとは言い難いのが現状です。

電子帳簿保存法はどんな書類が対象で、どのような保存方法が考えられるのか

資料の種類によって許可されている保存方法が異なります。保存方法は「電磁的記録による保存」と「スキャン保存」の二種類に分けられます。前者は「PC等で作成したデータの保存」、後者は「紙でやりとりされた資料をスキャンして保存」と考えるとわかりやすいです。

帳簿&決算関係書類

具体例)仕訳帳 現金出納帳 売上帳 売掛金元帳 仕入帳 買掛金元帳 固定資産台帳 棚卸表 貸借対照表 損益計算書 等

これらの帳票に関しては「電磁的記録による保存」が認められています。

これらの帳票は、経理処理をした結果として作成されるものです。日常的な経理処理の記録や入出金の管理、資産に関する記録、そしてその集大成としての決算書作成まで含まれます。実際の業務に即して考えると、これらの書類は会計ソフトや税務用のソフトを使用して作成されます。業務用ソフトを使用して作成されたデータを保存しておく、というイメージです。

その他の資料

具体例)契約書 領収書 預り証 借用証書 預金通帳 小切手 約束手形 見積書 注文書 検収書 申込書 等

これらの資料に関しては「電磁的記録による保存」と「スキャン保存」の両方が認められています。また、これらは、個々の取引に付随して発生し、上述の帳簿や決算関係書類の基となる原始証憑類です。つまり、資料が発生するまでに様々な経緯が考えられるのです。

  • 自社で作成した資料を電子的な方法で相手に渡す
  • 自社で作成した資料を紙で印刷し、相手に渡す
  • 相手先から電子的な方法で自社に送られてくる
  • 相手先から紙で自社に送られてくる

電子的な方法でやりとりをしているのであれば「電磁的記録による保存」をし、紙でのやり取りであればそれを「スキャン保存」することになります。

また、これらの資料は重要書類と一般書類に分類されます。重要書類(契約書や領収書など)は取引の証明について根幹に関わる一方、一般書類(見積書や注文書)は比較的重要度が低いといえます。

概要は以上ですが、実際に運用するまでには以下に記載するような壁を超える必要があります。

電子帳簿保存法の利用には、事前に申請が必要

そもそも電子帳簿保存法は、勝手に始められるものではありません。事前に所轄税務署長に対して制度の適用を受ける旨を届け出る必要があります。

経理プラス:電子帳簿保存法の申請方法とは

タイムスタンプについて

スキャン保存した資料には、タイムスタンプを付与しなければなりません。ある時刻にそのデータが確実に存在していたことを証明するためのもので、これが付与されていないと正式な書類として認められないのです。

経理プラス:電子帳簿保存法のスキャナ保存要件となるタイムスタンプとは?

実稼働に至るまでには、求められている要件を満たせるだけの設備や運用指針を定める必要があります。その難易度がそれなりに高いこともあり、普及がなかなか進んでいないのが電子帳簿保存法の現状と言えます。

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2019年度 税制改正における電子帳簿保存法の変更点

2019年度の税制改正では、電子帳簿保存法に関して次のような話が出ています。

  1. 新たに業務を開始した個人の承認申請書について、業務を開始した日から2月以内に提出することができることとする。

    (引用)平成31年度税制改正の大綱

    個人事業主が開業と同時に運用を開始できるようになるということです。

  2. スキャナ保存の承認を受けている者は、その承認以前に作成又は受領をした契約書・領収書等の重要書類(過去に本措置に係る届出書を提出した重要書類と同一の種類のものを除く。)について、所轄税務署長等への届出書の提出等の一定の要件の下、スキャナ保存を行うことができることとする。

    (引用)平成31年度税制改正の大綱

上で紹介をした「重要書類」と「一般書類」ですが、これまで重要書類については承認以前の書類をさかのぼって電子化することは認められていませんでした。今回の改正で承認以前の重要書類についても電子化をすることができるようになるようです。

1.の改正は2019年9月30日以後に行う承認申請について、2.の改正は同日以後に提出する届出書に係る重要書類について、それぞれ適用されるとのことです。

今後、過去の書類もさかのぼって電子化して保存する可能性も出てくるでしょう。自社の経理について「何が重要書類に該当するのか?」「これまでの資料の保存状態はどうなっているのか?」といった点をあらかじめ確認しておくと、いざ電子帳簿保存を始めるときに助けとなることでしょう。

まとめ

電子帳簿保存法は1998年に始まり、少しずつ使いやすい制度へ変化してきました。保存する資料の種類に応じて保存方法が定められています。実際の運用には事前届出や必要な設備投資、システムの準備なども存在するので確認が必要です。2019年度の税制改正大綱でさらに適用の幅が広がる見込みです。

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● 著者

高橋 昌也

高橋 昌也

高橋昌也税理士・FP事務所 税理士 1978年神奈川県生まれ。2006年税理士試験に合格し、翌年3月高橋昌也税理士事務所を開業。その後、ファイナンシャルプランナー資格取得、商工会議所認定ビジネス法務エキスパートの称号取得などを経て、現在に至る。