2019年のIT導入補助金 経営努力する会社を厚く支援

2019年のIT導入補助金 経営努力する会社を厚く支援

近年では本当にさまざまなITツールが増えてきており、これらを有効に活用することが企業の存続と成長には必要不可欠です。今回はITツールの導入時に活用することができるIT導入補助金について説明をします。

IT導入補助金とは

IT導入補助金は、正式名称を「サービス等生産性向上IT導入支援事業」といい、経済産業省の所管する事業です。

大まかには以下のフローで作業を進めます。

  1. 制度全体の流れを把握する
  2. 自社の現状を分析し、必要なITツールについて検討をする
  3. 所定の申請をおこなう
  4. 交付決定があったあとに発注、契約等をおこなう
  5. ツールの納入を実施し、稼働させる
  6. 事業実績を報告し、交付金額が確定する
  7. 交付手続きをし、一定期間後に交付される
  8. 効果等の報告を実施する

3~8の手続きは、以下のスケジュールでおこなう必要があります。

 申請受付:2019年5月27日(月)を予定
 交付決定日:2019年6月下旬を予定
 事業実施期間:交付決定日から5ヶ月以内
 事業実績報告期間:交付決定日から2019年12月下旬までを予定

なお、二次募集は7月中旬から開始される見込みです。前年は四次募集まで続きましたので、追加の公募が発表されないか定期的に情報を確認するようにしましょう。

とても重要なのは4の部分です。大前提として本補助金は購入する前に手続きをしなければなりません。その流れを理解せずに契約等を進めてしまい、交付を受けられなかった事例もあるので注意しましょう。

実際には、購入者側だけでなく、ツールを販売しているベンダー側も必要な手続きが存在します。詳細については、下記リンク先で確認をしてください。

(参考)一般社団法人サービスデザイン推進協議会 「IT導入補助金」

2019年のIT導入補助金の変更点

補助されるのは購入額の半額

注目すべきは、予算規模と実際の補助金額です。
下表をご覧ください。

2017年2018年2019年
予算規模100億円500億円100億円
補助割合2/31/21/2
補助金額20万~100万円15万~50万円40万~450万円

制度開始のころは2/3が補助されていましたが、現在は1/2となりました。しかし、それ以上に重要なのは補助金額です。2019年の制度では、最低補助額が40万円になりました。逆算すると「最低でも80万円以上の投資でなければ対象とならない」ということを意味します。ITツールで80万円の投資は、それなりの金額です。

予算総額も2018年の500億円から100億円に減額されました。規模が小さくなり、単価が上昇したわけですから、実際に採択を受けるのは以前に比べると格段に難しくなった、ということがわかります。

ちなみに2018年は確保した予算が中々消化されず、ほぼ通年でずっと採択が続いているような状況でした。制度の意図として、2018年は「広く浅く支援をする」というものであったのに対し、2019年は「狭く深く支援する」方向に大きくかじを切ったと言えます。

門としては狭くなりましたが、その分「経営努力をしている企業には手厚い支援をする」という態度の裏返しでもあります。自社に必要な機能を吟味し、適切なベンダーと協力関係を構築することで、生産性を一気に向上させることも夢ではありません。

ホームページ制作は別の制度で対応

対象となるツールは「販売管理」「品質管理」「設計ソフト」など、さまざまなものが該当します。ただし、以前にIT導入補助金の対象となっていたホームページ制作については、対象から外れました。本制度の対象となるITツールは、生産性の向上に直接貢献するものに絞り込まれたといえます。最低限の投資額引き上げからしても「より積極的に生産性向上に取り組む覚悟がある企業」でないと、本制度の適用を受けることは難しくなりました。

なお、ホームページや会計など、より基礎的なITツール導入に関しては「小規模事業者持続化補助金」という別の制度が用意されています。
そして、より大きな投資を必要とする場合には「ものづくり補助金」を申請することになります。

(参考)中小企業庁 小規模事業者持続化補助金事業

(参考)中小企業庁 ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金

自社が導入を検討しているITツールがどの補助金の申請対象となっているのか、事前に確認が必要です。

経理処理について

補助金を受け取った場合、基本的には雑収入で経理処理をおこないます。

借方金額貸方金額
現預金600,000雑収入600,000

この場合、入金された600,000円はその事業年度において一時に法人税などが課されます。ちなみに、消費税については課されません。

なお、圧縮記帳と呼ばれる方法を採用することも可能です。

借方金額貸方金額
現預金600,000雑収入600,000
機械装置1,200,000現預金1,200,000
機械装置圧縮損600,000機械装置600,000

上で紹介した雑収入で一時に受ける方法と比べると、圧縮記帳を採用することで税負担を繰り延べることが可能です。ただし、非課税になっているわけではありません。後々計上できる経費(損金)が減少しますので、結局は税金を負担することになります。

どちらの方法を選ぶかは、当座の資金繰り等を踏まえて検討するのが良いでしょう。

経理プラス:補助金・助成金を受けたときの会計処理と注意すべき点

まとめ

IT導入補助金は、購入前に所定の申請をすることで、ITツールの導入額の半額について補助を受けることができる制度です。これまでに比べ、採択される難易度は高くなっていますが、その分支援の内容は手厚くなっています。対象となる資産も細分化されているため、他の補助金活用も含めて検討が必要です。経理処理は基本的に雑収入で処理をしますが、圧縮記帳という方法も認められます。

この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。

著 者 税理士 高橋 昌也

税理士 高橋 昌也

高橋昌也税理士・FP事務所 税理士 1978年神奈川県生まれ。2006年税理士試験に合格し、翌年3月高橋昌也税理士事務所を開業。その後、ファイナンシャルプランナー資格取得、商工会議所認定ビジネス法務エキスパートの称号取得などを経て、現在に至る。

高橋昌也税理士・FP事務所