決算月の節税 ―経理担当者ならば知っておきたい節税テクニック―
経理担当者として、決算月は腕の見せどころです。
棚卸表の作成や現金実査などの業務は当たり前。今回は、他の方よりも一歩進んだ経理担当者となれるよう、知っておきたい節税テクニックを紹介します。
決算月でのチェックリスト!
まずは、下記のチェックリストで気になる内容、抜け漏れがある内容を確認してみましょう。
「基本的な節税」項目と、さらに利益を出すための「ギリギリ節税法」で分けてあります。
「基本的な節税」のチェックリスト
- 30万円未満の備品の購入の検討
- 翌期以降に予定している修繕やプロモーションを今期中に行うかの検討
- 給与の未払計上
- 家賃の半年払い・年払いへの切替え検討
- 社員旅行の検討
- 決算賞与の支給の検討
- セーフティ共済の加入の検討
- 生命保険の加入や見直しの検討
- 不要な償却資産の処分や既に廃棄済みの資産が計上されていないかの検討
まだ利益がある? ギリギリの節税法のチェックリスト!
- 計上した交際費の再検討
- 会社としてスポーツクラブに加入するかの検討
- 20万円未満の備品の減価償却方法の再検討
- 不良債権が無いかの検討
- 4年落ちの中古車の購入の検討
いかがでしょうか?
「ギリギリの節税法」まで検討をできていれば、ほぼ網羅的に検討をしたと言えるのではないでしょうか。
下記に、1つずつ簡単に説明していきます。
基本的な節税1. 30万円未満の備品の購入の検討
資本金が1億円以下の青色申告法人は、取得価額が30万円未満の備品の購入について年間300万円までは、全額損金に計上することができます。
購入予定の備品や交換予定の備品があれば、前倒しで今期中に購入を検討してください。
基本的な節税2. 翌期以降に予定している修繕やプロモーションを今期中に行うかの検討
当たり前ですが、翌期以降の出費は、期中に行うと損金計上できます。
ただ、修繕費については、その修繕で価値が高まる、または使用可能期間が延びる場合は、資本的支出として減価償却資産に該当することになります。ご注意ください。
基本的な節税3. 給与の未払計上
給与の締日が20日など、末日以外の場合は、締日から決算月末日までの給与を日割りして経費計上が出来ます。
しかし役員報酬は、雇用契約による報酬ではなく委任契約による報酬のため日割りは出来ません。ご注意ください。
基本的な節税4. 家賃の半年払い・年払いへの切替え検討
1年以内の前払いは経費にすることが出来ます。これは、家賃に限ったことではありませんが、1年以内の前払いは経費にできるという「短期前払費用」という規定を利用した節税です。
注意点としては2点あります。どちらも大切ですが、特に2点目が重要となります。
家賃前払い・年払いをするときの注意点
・注意点1
家賃や駐車場であれば、大家さんやオーナーとの契約書の変更が必要になること
※日数の余裕を持って検討しましょう
・注意点2
短期前払費用は継続適用しなければならないため、来期以降も前払いとなること
基本的な節税5. 社員旅行の検討
決算月中に社内旅行を実施すると、その旅行費用を今期の損金にすることができます。
社員旅行では、注意点が複数ありますので、下記を確認して漏れなく損金にしていきましょう。
社員旅行の注意点
・会社が負担する旅行費用が10万円程度以内であること
・旅行の期間が4泊5日以内であること
※海外旅行の場合には、現地での滞在時間が4泊5日以内であること
・参加者が全体の従業員の50%以上であること
・旅行の目的、規模、行程が一般的であること
・自己都合による不参加者へ現金を支給しないこと
・日程表や旅行費用の明細書等の資料は必ず保管すること
基本的な節税6. 決算賞与の支給の検討
決算賞与は古くから行われてきた節税テクニックです。そのため、いくつかの条件があり、駆け込みボーナスが出来ない決まりとなっていますので、以下の条件をクリアできる場合には検討しましょう。
決算賞与支給時の注意点
・賞与給付の事実と金額を各人別に同時期に支給を受ける全員に通知すること
・翌期に入ってから1ヶ月以内に支給すること
・通知した期で決算賞与として費用処理すること
基本的な節税7. セーフティ共済の加入の検討
最大で240万円が経費計上できます。
しかし、解約した時に収益となる、40ヶ月以上加入しないと満額が返金されないなど、多少使いにくい制度です。キャッシュに余裕があれば、検討しても良いでしょう。
基本的な節税8. 生命保険の加入や見直しの検討
保険金を利用して、役員退職金等の原資を準備する方法です。
保険の種類に応じて法人の損金とすることができます。
基本的な節税9. 不要な償却資産の処分や既に廃棄済みの資産が計上されていないかの検討
資産の廃棄損を利用した節税です。
使わない資産があれば思い切って廃棄しましょう。再度必要になれば上記の30万円未満の節税テクニックを利用してみれば良いのです。
また、意外に多いのが既にない資産が固定資産の明細に残っていることです。改めて見直してみて、現状の資産状況になっているかを確認してみましょう。
ギリギリの節税1. 計上した交際費の再検討
5千円未満の飲食代で一定の記録をしたものは全額経費となることはご存知かと思いますが、「交際費」の中での規定であることはご存知でしょうか?
会議費や本などの制作費であれば5千円の制限はありません。当然、「実態があるか」という基本がありますが、期中に計上した交際費について、もう一度詳細を検討してみても良いかもしれません。
ギリギリの節税2. 会社としてスポーツクラブに加入するかの検討
福利厚生の一環でスポーツクラブの法人会員になり、社員が利用する、という方法です。リフレッシュにもなり、従業員の運動不足も解消されます。
スポーツクラブに会社として入会し、社員全員が利用できればOKです。
役員だけが利用するのでは福利厚生費とはなりませんので、注意してください。
ギリギリの節税3. 20万円未満の備品の減価償却方法の再検討
20万円未満の備品については、一括償却資産という3年で均等に経費計上する方法が選べます。
経費計上をする際は、「3年で均等に」となりますので、期中に買った備品でも購入金額の1/3が経費となります。
注意点としては、売却や廃棄した際に、損失を計上することが出来ず、モノが無くても3年を通じて経費計上していく点です。
パソコンの法定耐用年数は4年ですので、1年早く経費にできるため一考の価値があります。また、償却資産税の課税対象からも外れるため、検討してみてください。
ギリギリの節税4. 不良債権が無いかの検討
あまり良くないことですが、不良債権がある場合にタイミングよく処理を行うことでできる節税です。
もちろんすべての不良債権が経費となるわけではなく、下記のようなものが損金に計上できます。
損金算入できる不良債権
・会社更生法や民事再生法によって、債権が消滅、回収不能に陥ったもの
・相手先企業の経営状況、支払能力からみて債権の全額が回収できないと認められるもの
・取引停止などの状況が1年以上続き、形式上の貸倒れとみなされるもの
損金算入できる不良債権
2点目と3点目は注意が必要です。事実上の貸倒れは、それを証明できることが必要となります。
何度も請求書を送って回収の意思表示をしているが回収が出来ていないなど、細かく状況を記録することが大切です。
ギリギリの節税5. 4年落ちの中古車の購入の検討
中古資産を利用した減価償却費で行う節税です。
4年落ちの中古車の場合、耐用年数が2年となり、定額法では半額が、定率法では全額を経費とすることが出来ます。特にベンツなどの高級車では減価償却が終わり、帳簿上の価値が0円でも、実際には売却が可能なため、心強い隠し財産となります。
決算月こそ経理の腕の見せどころ!自分の価値を再認識させましょう
決算月は経理業務が忙しく、ここまで気を回せていない方がほとんどだと思います。
通常の決算業務だけに加え、上記のような節税ポイントを見直すことで、経理担当者としての実力・ポジションのアップを狙えます。
ここまで読んでいただいた方はお分かりかと思いますが、一般的に言われる「節税対策に有効な手を打てるリミットは決算日の3か月前」ではなくとも十分な節税ができるのです。
もちろん、日数の余裕があることはとても大切ですので、来期以降は計画的に節税対策をしましょう。
この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。