【保存版】経理担当者が決算月に行わなければならない重要ポイント4つ

【保存版】経理担当者が決算月に行わなければならない重要ポイント4つ

日々のルーチン業務に追われる経理担当者の方にとっては、年に一度の決算は「忙しい」というだけのイメージをお持ちの方が多いと思います。
作業が多くなるという意味では忙しいのですが、年に一度の決算だからこそ重要な項目が多くあります。
今回は、決算を単なる作業として対応するのではなく、ワンランク上の経理担当者となるための「決算月に行わなければならない重要ポイント」をまとめてみました。

決算とは「経理担当者にとって」なにか?

決算は、その事業年度の正確な利益を確定するために行いますが、必要な作業は大きく分けると2つあります。
ひとつは、年度内に行った記帳は正しいか、漏れはないかなどの全取引の確認作業です。
もうひとつは、粗利を正確に計算するための在庫を集計や、減価償却費を計算するために期中に取得した固定資産の税務判断を行うなどの決算調整です。

決算は、「全取引に対してどう処理するのがベストなのか、を考える年にたった一度のチャンス」です。
忙しい時期ではありますが、経理業務見直しとスキルアップの機会としましょう。

決算月に行わなければならない重要ポイント4つ

では、決算の手順の中で経理担当者が注意しておきたい項目はなんでしょうか?

1.棚卸作業

売上に対応する原価を正確に計算するために行うのが棚卸作業です。企業会計において費用として認められる仕入れは、「買った金額」ではなく、「使った金額」です。
つまり、棚卸作業は「倉庫にある在庫を数えること」ではなく、「買ったけど、使ってないもの」を洗い出す作業を指します。
税務調査で指摘の多い事例で考えてみましょう。

ケーススタディ(3月末決算の会社の場合)

 

・3月29日
 到着まで1週間かかる商品Aを発注します。
・3月31日
 倉庫の在庫を数えますが、商品Aは含まれないことになります。
・4月2日
 仕入先から3月締の請求書が届き、商品Aの代金を3月末日付で買掛金計上します。
・4月5日
 商品が到着します。

上記の場合、商品Aは「買ったけど、使ってないもの」になりますので、在庫に計上しなければ税務調査で指摘されてしまいます。

棚卸は在庫状況の確認にもなり、1年前の棚卸表と比較することでデッドストックを把握するなど、適正な仕入れ量を検討すれば経費削減につながります。
他にも「在庫の単価をどう計算するか」は複数の方法があり、うまく使うことで経理作業を合理化することができますし、節税にもなりますが調査の指摘項目にもなります。

2.減価償却資産の処理

減価償却資産の処理は、使用が長期間に及ぶ固定資産を使う年数に分けて費用計上するために行います。
30万円未満のいわゆる「少額減価償却資産」の理解を深めておくと日々の経理業務がスムーズになります。

経理プラス:少額減価償却資産の基本と応用 ―決算月の節税も!日常の経理処理も!―

税務調査などで指摘されやすい項目としては、「購入したけれど事業の用に供していない資産がないか?」や「修繕費として一期の経費にしたけれども、固定資産計上するべきものではないか?」などがあります。
減価償却の規定は細いので、どんな資産が当てはまるのか、耐用年数は何年かなど慎重な判断が必要です。

3.経過勘定の処理

経過勘定の処理としては、前払費用・未払費用・貸倒引当金等の引当金の計上、開業費などの繰延資産の処理、仮払金・仮受金の計上などがあります。実際にキャッシュが動かない処理のため、計上漏れが起きやすい業務です。ご注意ください!

4.精算表及び勘定科目内訳書の作成

精算表は、決算整理仕訳の数字を決算整理前の残高試算表に反映させたものです。
ここで、勘定科目の貸借が一致しているか?現金残高の整合性がとれているか?などを確認します。金額にズレがあると決算に誤りがあることになってしまうため、注意が必要です。
各勘定科目の詳細を記載した勘定科目内訳書の作成も同時に行います。

決算が終わったら、今期の結果を吟味し、来期及び来期以降に向けての反省と経営の方向性の確認、経理処理の検討などをして経営体制の改善を行うことが理想です。

また、税制は毎年改正されるため常に目を向けていなければなりません。たとえば平成26年度の変更では、車両を購入した際の税率が減少しました。他にも交際費の損金算入の基準などについても変更がなされています。税制の変更によって決算に影響がでることがあります。

経理プラス:交際費等の損金不算入制度改正による影響とは?
経理プラス:決算前には必ずキャッチアップしておきたい最近の税制改正5つ

決算月こそ節税をするとき!

今回の記事で、在庫単価の計算方法や少額減価償却資産など節税できる可能性がある項目について述べましたが、決算月に行うべき節税は他にもいくつもあります。
決算月は経理担当者が忙しくなりますが、決算月にこそ見直すべき項目があります。たとえば、決算賞与の支給をしたか、家賃の前払いをしたか、生命保険の加入・見直しをしたかなどです。

ワンランク上の経理担当者を目指す方は作業量に屈せず、会社経営にインパクトのある検討を行うようにしてはいかがでしょうか。

この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。

著 者 公認会計士 服部 峻介

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北海道大学経済学部卒。有限責任監査法人トーマツ入社後、上場企業の監査、内部統制、IPO支援、株価算定、M&A、不正調査等を実施。経営コンサルティング会社役員を経て、Seven Rich会計事務所を開業。スタートアップ企業を中心に、3年で160社以上の新規クライアントに対して会社の設立から会計税務、総務、ファイナンス、IPOコンサルなど幅広い支援を行っている。

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