経理のミスで税金が増えてしまった!経理でよくある「失敗」事例集

経理のミスで税金が増えてしまった!経理でよくある「失敗」事例集

経理業務はミスが許されません。

たとえば、売上の計上をミスしてしまった場合、本来よりも納税額が増えるため経済的な負担の面だけでなく、企業の信頼を大きく損ねることにもなります。

今回は、単純なミスにより起こってしまった恐ろしい「失敗」事例5つからミスをしない経理のヒントを学びたいと思います。
失敗を防ぐための仕組みづくりに活用してみてください!

◆領収書の書き間違いで売上を二重計上してしまった

◆「何の」売上なのかを間違ってしまった

◆在庫の計上が漏れてしまった

◆もうない固定資産を、帳簿に残したままにしてしまった

◆経費の領収書を紛失してしまった

失敗1:領収書の書き間違いで売上を二重計上してしまった

事例

売上代金を受け取った場合は領収書を書きますが、領収書を書き損じてしまったケースです。注意して書いても起こりうるミスです。

売り上げたのは1回なのに、書き損じた領収書が1枚、正しい領収書がもう1枚、合計2枚の領収書が作成されます。誤って2つとも売上計上した場合、その期では売上が二重に計算されてしまい無駄な税金を払うことになります。

さらに悲劇的なのは、税法では過去の売り上げを訂正できる期間は特定の一期に限られるなど、限定されていることです。そのため、数年後に処理を誤ったことに気付いたとしても、払いすぎた税金を取り戻せないという場合があります。

売上を100万円二重計上してしまった場合には、増えた売上分に対する消費税が約10万円、増えた売上には原価がないため、100万円がそのまま利益となり法人税等の約40万円を損することになります。
(※)2019年10月から導入された軽減税率において、一部は8%のまま据え置きとなります。
軽減税率の対象などについては、以下の記事をご参照ください

経理プラス:軽減税率でいつから何がどう変わる? 基本を押さえて正しく対策

ミスを防ぐための業務改善例

書き損じた領収書には分かりやすく大きなバッテンを付けるなど日々の小さな習慣付けのほか、売上管理表を作成し管理体制を見直すことによりミスを防ぐことができます。

失敗2:「何の」売上なのかを間違ってしまった

事例

学校法人「河合塾」で消費税約2,000万円の追徴を受けた事例がありました。

内容は、学生寮での食事の売り上げ約4億円を消費税がかからない取引として処理していたというものです。原因は、経理担当の人員が減らされ一人当たりの仕事量が増えたことによる単純な作業ミスだったそうです。

ミスを防ぐための業務改善例

消費税は、どこで(国内において)、誰が(事業者が)、どうやって(対価を得て)、何を(課税される資産)取引したかによって決まり、その取引内容を正確に把握しなければ正しい判断ができません。またの名を「取引の税務」とも呼ばれています。

具体的なミス防止のための方法としては、まずは作業者がひとつひとつの取引をよく理解してから仕訳を判断していくしかないという部分と、上長が深度のあるチェックをできるようしっかりとしたエビデンスを付けることなどがあり、そのような基本的な体制作りがミスを減らします。

失敗3:在庫の計上が漏れてしまった

事例

在庫の計上が漏れるケースは、

「年度末に行う棚卸作業のときに在庫を少なく数えてしまった」、

「発送はされたけれどもまだ会社に届いていない商品の計上を漏らしてしまった」、

「下請けの会社に預けている材料の存在を忘れてしまった」、等があります。

在庫の計上が漏れてしまった場合は、その分だけ利益が過少に計算されます。正しい税額に修正する際には、増えた税金を追加で納付するだけでなく、計算を誤った罰則の税金を支払う必要も生じます。たとえば、税金100万円の増加を3年後に気付いた場合には、その他追加で約30万円の罰則の税金を支払うことになります。

ミスを防ぐための業務改善例

在庫の計上漏れを防ぐためには、実地棚卸の精度を高める他、チェックリストを作成し未着品や預け在庫などの計上漏れがないかを確認する仕組みを作ること、仕入れた個数と出荷した個数をシステムで把握し在庫管理を強化するなどの方法があります。

交通費・経費精算システム「楽楽精算」 交通費・経費精算システム「楽楽精算」

 

失敗4:もうない固定資産を、帳簿に残したままにしてしまった

事例

すでにない固定資産なのに、廃棄の処理をし忘れた場合には、法人税が過大に計算されてしまうだけではなく、固定資産税を過剰に納め続けることになります。

資産価値の約2%を気付くまで毎年毎年納め続けることになります。

ミスを防ぐための業務改善例

年に1度送られてくる固定資産税の内訳書をそのまま目を通さず保管していませんでしょうか。毎年6月にチラッとでも良いので目を通す習慣をつけるようにしましょう。また、決算の際にも固定資産台帳に「実際にはない資産が載っていないか」を確認しましょう。

失敗5:経費の領収書を紛失してしまった

事例

経費の計上が漏れてしまい、その分所得が大きく算出されるため、法人税(約38%)が余分にかかります。これは、本来は払わなくて良かった税金を払い過ぎてしまったことを意味します。なお、法人税率は以下の表をご参照ください。

所得金額2016年4月1日以降の開始事業年度2018年4月1日以降の開始事業年度
800万円以下の部分15%19%(15%)※
800万円超えの部分23.4%23.2%

※カッコ内の税率(15%)は、事業年度が2019年3月31日までに開始した場合に適用される税率となります。

ミスを防ぐための業務改善例

領収書をもらった場合には、しまう場所を決めておくなどの管理を習慣化する必要があります。100円の領収書には約40円の節税の力があります。なくさないようにしましょう。

最後に:ミスを防ぐ仕事にも時間を使えるように。

今回挙げた例はごく一部に過ぎません。経理のミスにより引き起こされる損害は税金が増えるというだけではなく、意思決定を誤ってしまうことや不要な手間が増えてしまうなど様々な場面に影響を与えます。

仕事において人為的ミスはつきものです。

ITを駆使した自動化や社内業務の定型化によりいかにルーティンの作業に時間をかけず、ミスを防ぐためのチェックやリスクの大きい検討に経理の時間を割けるようにすることが、不要な税金を支払わない為にも大切です。
 

この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。

著 者 公認会計士 服部 峻介

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北海道大学経済学部卒。有限責任監査法人トーマツ入社後、上場企業の監査、内部統制、IPO支援、株価算定、M&A、不正調査等を実施。経営コンサルティング会社役員を経て、Seven Rich会計事務所を開業。スタートアップ企業を中心に、3年で160社以上の新規クライアントに対して会社の設立から会計税務、総務、ファイナンス、IPOコンサルなど幅広い支援を行っている。

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