リース取引の仕訳と会計処理 ―リース取引の基本と実務:経理担当者の苦手意識克服シリーズ―

リース取引の仕訳と会計処理 ―リース取引の基本と実務:経理担当者の苦手意識克服シリーズ―

経理担当者が苦手意識をもってしまう取引のひとつにリース取引があります。その理由は「リース取引に関する会計基準(企業会計基準第13号)」が登場したのは2008年からの改正項目と比較的新しいことや、リース取引に関する用語に横文字が多いことなども原因のひとつだと思います。

苦手意識を持っている経理担当者のリース取引の印象は「よく分からないけど何種類かあって、それぞれ複雑な会計処理が決められている」という感じではないでしょうか。

今回の記事では、経理担当者のリース取引に対する苦手意識を払拭できるように、 2019年以前からのリース取引や、新しい基準でのリース取引を分かりやすく説明します。

リース取引とは

リース取引とは貸し手側(レッサー)がリース物件を貸し手(レッシー)に対して使用収益券を与え、借り手はリース期間中にリース料を支払う取引を指します。2019年以前のリース取引は大きく分けると「ファイナンス・リース取引」と「オペレーティング・リース取引」の2つに分けられていました。

ファイナンス・リース取引とは

一言で言ってしまうと「カネを借りて、モノを買って、使いながら返済する」のとほぼ同じ取引のリースのことです。「リース取引」という名前は付いていますが、契約は中途解約不能、そのモノが故障した時の費用は全て使用者が負担(フルペイアウト)しなければならないなど、買ったのとほとんど同じ売買取引となるリース取引です。

「ファイナンス・リース取引」はさらに、「所有権移転ファイナンス・リース取引」と「所有権移転外ファイナンス・リース取引」の2つに分けられます。

所有権移転ファイナンス・リース取引

リース期間が満了するとその資産をリース会社からもらうことが可能です。ローンを組んで資産を買うのとまったく同じ経済的実態で、実際に会計上もローンを組んで買うのとまったく同じ売買処理をします。

所有権移転外ファイナンス・リース取引

契約したリース料を全て支払ったあともその資産をもらうことはできません。契約を続けるためには再リース料を支払うことや、資産を受け取るためには買い取り費用などが必要です。日本のリース取引のほとんどはこの「所有権移転外ファイナンス・リース取引」です。

オペレーティング・リース取引とは

簡単に言うと「誰かから借りているだけ」のリース取引です。契約が終われば相手に資産を返さなければなりませんし、故障した時は持ち主が直してくれます。資産を保有している経済的実態もなければ、借金をしている実態もありません。借りているだけです。

砕けた言葉で説明しましたが、リース取引には3種類あること、3つそれぞれの経済的実態はどのようなものか、これさえ分かればその経済的実態に合わせた会計処理をするだけでリース取引を正しく会計処理することができます。

リース取引の3つの会計処理方法

リース取引は3種類に分類されていましたが、それぞれどのように会計処理をするのでしょうか。それぞれ具体的な処理方法を見ていきましょう。

所有権移転ファインナンス・リース取引

【経済的実態】
借入をして、資産を購入したものとまったく同じです。

【前提】
キャッシュで買った時の値段:5,000,000円
リースを組んだ時の支払総額:6,000,000円(※120,000円を50回支払うとします)

【取得時】

借方科目金額貸方科目金額
リース資産5,000,000円リース債務5,000,000円

リース資産は、キャッシュで購入した時と同じ金額で計上します。

【リース料支払い時】

借方科目金額貸方科目金額
リース債務100,000円現金120,000円
支払利息20,000円

毎月のリース額120,000円は、借入金の返済を行う時と同じく、元金部分と支払利息部分に分けられます。

【決算仕訳】
資産計上されたリース資産に対して減価償却費を計算しますが、キャッシュで資産を取得した場合とまったく同じ算出方法で減価償却費を計算します。

所有権移転外ファインナンス・リース取引

【経済的実態】
借入をして資産を購入したものとほとんど同じですが、最後はリース資産を貸主に返却しなければなりません。そのため、残存価額をゼロとして減価償却費を計算します。

【前提】
キャッシュで買った時の値段:5,000,000円
リースを組んだ時の支払総額:6,000,000円(※120,000を50回支払うとします)

【取得時】

借方科目金額貸方科目金額
リース資産5,000,000円リース債務5,000,000円

【リース料支払い時】

借方科目金額貸方科目金額
リース債務100,000円現金120,000円
支払利息20,000円

【決算仕訳】

借方科目金額貸方科目金額
減価償却費1,200,000円リース資産1,200,000円

リース期間定額法という「所有権移転外ファイナンス・リース取引」専用の償却方法で減価償却費を計算します。リース資産総額を、リース期間で月数按分して、その事業年度の減価償却費を計算します。

減価償却費1,200,000円 = リース資産 5,000,000 ÷ リース期間50ヶ月 × 事業年度12ヶ月

【例外】
所有権移転外ファイナンス・リース取引は最終的には借主に返すので、経済的実態としては所有権移転ファインナンス・リース取引よりも、オペレーティング・リース取引に近い性格も持っています。
そのため、下記に該当する場合には月々のリース料を費用処理するだけのオペレーティング・リース取引と同じ賃貸借処理も認められています。

借主が中小企業である場合
 リース期間が1年以内のリース取引
 リース契約1件あたりのリース料総額が3,000,000円以下の場合

オペレーティング・リース取引

【経済的実態】
リース資産を契約期間の間だけ借りているだけで、資産を取得しているような実態はありません。

【前提】
キャッシュで買った時の値段:5,000,000円
リースを組んだ時の支払総額:6,000,000円(※120,000を50回支払うとします)

【取得時】
仕訳なし

【リース料支払い時】

借方科目金額貸方科目金額
リース料120,000円現金120,000円

【決算仕訳】
仕訳なし

新基準のリース取引とは

2019年1月1日からのIFRS16号による新基準のリース取引は、ファイナンス・リースとオペレーティング・リースと分けられていたものが廃止され、ひとまとまりのリース取引と扱われます。リース取引の中で細分化されることはなくなりシンプルなものとなっています。また、原則的に全てのリースがオンバランス(資産計上)になる点に注意しましょう。

経理プラス:新リース会計基準が強制適用開始!IFRS未適用企業にも影響があるIFRS16号

最後に

いかがでしょうか。今までのリース取引の基本的な考え方と会計処理、2019年からの新基準のリース取引の概要をお伝えしました。

次の記事では応用編として、近年税率の変更に伴いその複雑さがさらに増しているリース取引に関する消費税についてお伝えします。

経理プラス:リース取引の消費税 ―リース取引の応用項目:経理担当者の苦手克服シリーズ―

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この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。

著 者 公認会計士 服部 峻介

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北海道大学経済学部卒。有限責任監査法人トーマツ入社後、上場企業の監査、内部統制、IPO支援、株価算定、M&A、不正調査等を実施。経営コンサルティング会社役員を経て、Seven Rich会計事務所を開業。スタートアップ企業を中心に、3年で160社以上の新規クライアントに対して会社の設立から会計税務、総務、ファイナンス、IPOコンサルなど幅広い支援を行っている。

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