実際に上場企業がアウトソーシングしている経理業務とは?

実際に上場企業がアウトソーシングしている経理業務とは?

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※デロイト トーマツ ミック経済研究所「クラウド型経費精算システム市場の実態と展望」(ミックITリポート2023年9月号:https://mic-r.co.jp/micit/2023/)より

日本では税理士事務所が中小企業の会計業務を積極的に引き受け、決算書作成と消費税申告書、法人税等申告書の作成を請け負っています。一方、上場企業では、垂直統合によりすべて内生化してきました。また、上場企業及びそのグループ企業や、上場準備企業の経理には、税務、会計、連結、開示、管理会計など多岐にわたる知識と経験が必要になります。

上場予定のない未上場企業では、経理業務のアウトソーシングに抵抗感が少なく積極的です。しかし、大手上場企業ではいまだにアウトソーシング活用への期待はあるものの、情報漏えいリスク、費用対効果への懸念、従業員の抵抗などがあるため、活用には消極的なようです。

なぜアウトソーシングするのか

経営面からみれば、アウトソーシングへの期待として、経理業務のコストダウン、経営資源を本業に集中させたい、経理業務の人材不足、連結グループ内の会計・経理業務の標準化を達成したいなどの期待があります。一方で、経営資源が効率的に活用されているのか、株主から預かった資金を使って運営している会社が持つ資産は安全に管理されているのか、数値情報が早く知りたい、株主である投資家や他のステークホルダーに十分な情報開示がしたい等の経営側からの要請が経理業務にはあります。

では、どんな業務がアウトソーシングできるのでしょうか。社内で議論すれば、交通費精算業務のアウトソーシングが可能だとか、固定資産台帳管理はアウトソーシングして問題ないとかの意見がでてきます。ただ、それらの業務はクラウド・システムを採用すれば、経理部員でなくてもできる業務になってきており、アウトソーシングが効率的かといえば疑問が残ります。単純作業をアウトソーシングに頼るとしたらコストダウンと相反する仕組みを作り出すことになるからです。

主な経理業務一覧とアウトソーシング適性ランク

上場会社の経理業務でアウトソーシング活用を考えるとしたら、以下のような業務が対象となり、活用すべきなのかの判断基準を私の考えでまとめてみました。ただし、会社よってはアウトソーシングを活用すべきとした経理業務が、会社の収益構造と直結した業務である場合もあります。会社主要業務との関係からアウトソーシング適性ランクを考える必要があります。

アウトソーシング適性ランク

◎はOS(アウトソーシング)を活用すべき業務、○はOSが可能業務、×はOS不向業務

販売管理業務(請求書発行、入金消込、滞留債権の管理)
購買業務(納品書・請求書の照合、支払一覧表の作成、振り込みデータの作成)
固定資産業務(専門知識を要する、取得価格の算定、減価償却費の算出、固定資産台帳の作成)
決算業務支援(月次・年次に発生する決算整理仕訳の起票、決算報告資料の支援)
財務諸表作成(記帳代行、試算表の作成、勘定明細の作成)
消費税申告書、法人税申告書、連結納税申告書の作成
×決算書、株主招集通知、決算短信、有価証券報告書の作成
×予算実績管理(予算作成に関する資料提供、実績値の更新)

上場企業でのアウトソーシング活用例

最初の2~3年はアウトソーシングしないときよりコストが膨らむのが一般的です。ですので、アウトソーシングをした初期では、何のために切り替えたのか分からなくなります。アウトソーシングをするときは、何年後にどれだけ効率化による経費をおさえられるのかを検討することも重要です。米国なら、アウトソーシング契約に特化したコンサルティングをしてくれる会社もあります。交渉専門のコンサルタントが企業の要望を聞き、契約期間やエンド・ユーザーへの教育などの面でアウトソーサーから好条件を引き出してくれますが日本ではまだまだ一般的ではありません。

大手上場の電気メーカー(東証一部)では、グループ会社の管理部門をすべて集め、子会社化して、そこに管理部門のすべての業務を集約するプロジェクトが始まっています。ビジネスの主要部門でもアウトソーシングのオフショアーを進めていることから、管理部門は統合して、グループ会社から管理部門のアウトソーシングを請け負えるオンショアーのアウトソーサーとして独立させることを目指しているそうです。

経理業務は専門知識が必要な業務です。ただし、専門性がいつでも活用されているわけではありません。業務には波があり、忙しいときと、暇なときがあります。暇な時を利用して専門性を高めてきても、会社が安定期に入るとルーチン化してしまい、新しいことに触れ合うことができなくなることも事実です。会社の垣根を超え、高い専門性が求められる仕事を複数こなすことができるようなれたら、さらに専門性は高まります。新しい研鑽の場になることは間違いありません。先延べの電気メーカーで計画しているのは、経理業務に限らず管理部門をすべて請け負えるアウトソーシング会社です。

まとめ

今後、経理業務のアウトソーシングの動きは日本でも加速し、やがて、アウトソーサーは上場会社の経理部門の中核業務を請け負うようになっていけるかもしれません。アウトソーシングを効率的、効果的に活用するには、経理業務で求められている基準・期待を明確にすることから始め、それらを達成するためのITやシステムを効率的に活用する仕組みを考え、達成手段として、アウトソーシングなのか内生化なのかをまとめあげる力が必要になります。この力が社内にないなら、外部にコンサルティングを依頼して考えてもらう必要があるかもしれません。外部に経理業務の制度設計を依頼するなら、これもまたアウトソーシングの活用です。

この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。

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※:デロイト トーマツ ミック経済研究所「クラウド型経費精算システム市場の実態と展望」(ミックITリポート2023年9月号:https://mic-r.co.jp/micit/2023/)より

著 者 矢田 裕実

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マスコミ、商社、IT、小売、メーカーなどの異なる業種において、また、外資、内資、中堅規模やベンチャーなど幅広い規模の企業にて経理財務を中心に経験。管理部門長や取締役も務め、経営再建、事業計画作成や資金調達、IPO前後の制度作り、内部統制の整備などを実行。現在は、ベンチャー企業の経営アドバイザーとして活躍。