移転価格税制について経理が知っておくべきポイント

移転価格税制について経理が知っておくべきポイント

移転価格税制とは

ベンチャー企業でそろそろ海外進出も視野に入れ始めている、という会社に勤めている方は、経理として移転価格税制に関する知識を付けておいた方がいいかもしれません。移転価格税制とは、海外に設立した子会社との取引について生じる価格を操作し、海外に所得を移転してしまうことを取り締まるための税制です。具体的な作業としては、海外子会社との取引価格を、まったく関連性のない企業との取引した場合の価格(独立企業間価格)を基準として計算し直す必要があります。日本では、独立企業間価格の算定方法としては、OECD移転価格ガイドラインにおいて国際的に認められた方法を取っています。

経理が知っておくポイント1:独立企業間価格の算定方法

まず1つ目として、先に述べました独立企業間価格の算定方法について知っておきましょう。法令上では、

  • 独立価格比準法
  • 再販売価格基準法
  • 原価基準法
  • 利益分割法

以上があります。詳細な内容については、財務省のHPなどで調べるといいでしょう。まずは、上記の種類があることを認識しておきましょう。
また、算定方法の選定に関しては、優先順位に関しては特につけられていません。発生している事案のケースに合わせて最適な方法を選定されることが求められます。

経理が知っておくべきポイント2:役員陣への説明

移転価格税制については、役員陣も知見がないところです。私の経験で、役員陣に移転価格税制についての理解がなく、税金を追加でとられるのは納得がいかないということを言われ、説明するのに苦労しました。その際は、私の力量も不足していたため外部のコンサルタントの方を入れ、役員陣への説明と、今後の対応策について策定してもらい、なんとか鎮めることができました。経理スタッフとして、海外子会社を出す際の税務上の注意として、早期に役員陣に説明しておく必要があります。

経理が知っておくべきポイント3:移転価格文書化制度

移転価格税制に関連して、移転価格文書化制度についても知っておきましょう。この制度についても、実務面に関しては経験値がないところだと思いますので、実際は税理士などを頼るべきですが、どのような書類が必要なのかを知っておくことは必要です。大きくは、国外関連取引の内容が記載された書類と国外関連取引について法人が算定した独立企業間価格に係る書類に分かれます。それぞれに関して以下が具体的な例としてあげられます。

国外関連取引の内容が記載された書類

  • 資産の明細・役務の内容
  • 取引において双方が果たす機能・負担するリスクに係る事項
  • 取引において使用した無形資産の内容
  • 取引に係る契約書又は契約の内容
  • 取引の対価の額の設定方法、設定に係る交渉の内容
  • 取引に係る損益の明細

国外関連取引について法人が算定した独立企業間価格に係る書類

  • 選定した移転価格算定方法、選定理由、その他独立企業間価格を算定するに当たり作成した書類
  • 採用した比較対象取引等の選定に係る事項、比較対象取引等の明細

経理として認識すべきなのは、文書化することはもちろんですが、文書作成に関するポリシーやガイドラインをしっかりと構築するところも重要であることを知っておきましょう。これが、3つ目のポイントです。

経理が知っておくべきポイント4:英語の経理書類に慣れる

移転価格税制に特化したポイントというと若干異なるかもしれませんが、私の経験からおススメするのは「英語」です。英語をしゃべれるようになるというのではなく、英語の経理書類に慣れることが必要です。海外と接点を持っていく中で、あなたが会社から必要とされる経理スタッフとして重要なポジションを担っていきたいのであれば必要となります。作成までできるといいのでしょうが、必要スキルとしては、確認ができるレベルまででいいでしょう。

まとめ

今回は、移転価格税制について知っておくべきポイントを4つご紹介しました。会社が将来的に海外を視野に入れているのであれば深く知っていく必要があるでしょう。さらに、経理として会社の成長に合わせ自身が習得すべきスキルも考えていきましょう。

この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。

著 者 矢田 裕実

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マスコミ、商社、IT、小売、メーカーなどの異なる業種において、また、外資、内資、中堅規模やベンチャーなど幅広い規模の企業にて経理財務を中心に経験。管理部門長や取締役も務め、経営再建、事業計画作成や資金調達、IPO前後の制度作り、内部統制の整備などを実行。現在は、ベンチャー企業の経営アドバイザーとして活躍。