経理が相談すべきは税理士?公認会計士?違いと適性を理解しよう
税理士と公認会計士の独占業務とは
経理担当者にとって税理士と公認会計士は、どちらも会社に関わる士業です。しかし違いがハッキリせず、付き合い方が分かりにくいかもしれません。しかも、中には「○○公認会計士・税理士事務所」を1人で兼業していたり、「○○会計事務所」なのに税理士がやっていたり。一般の目から見ても、この仕事は違いが分かりにくいのではないでしょうか。
この2つの士業との付き合い方を握るカギは、独占業務の違いを知ることあります。独占業務とは、特定の資格をもった人しか行うことができない業務のことです。
税理士の独占業務は、「税務代理」「税務書類の作成」「税務相談」の3つ。主な内容は、以下の通りとなります。
- 確定申告を代行すること
- 税務調査に立会うこと
- 申告書等を作成すること
- 個別の税務相談に応じること
このように、税理士の独占業務は税務です。しかし正しい税務申告を行うには、会計処理が正しく行われていることが前提となります。そのため、一般的には会計帳簿のチェックから確定申告書の作成までを、顧問として請け負うスタイルが多いでしょう。
これに対し、公認会計士の独占業務は「監査証明業務」です。会計監査を通じて作成された財務諸表が正しいものであると証明できるのは、公認会計士のみとなります。
また、公認会計士には税理士登録を行うことが認められています。このことから、公認会計士と税理士を1人で兼業している方がいるのです。なお、たとえ税理士登録していなくとも、一般的な税務に関する質問には対応してくれます。
税理士と公認会計士は絶対に必要なのか
税理士と顧問契約を結んだり、あるいは税理士の監査を受けることを義務付ける決まりはありません。確定申告書の作成なども、自社で行って提出すれば何も問題ないのです。
これに対して公認会計士の場合、法律で「会計監査人による監査」が義務付けられる法人があります。この法人に該当すると、公認会計士又は監査法人による監査を必要な頻度で受けなければなりません。
また、会計監査人による監査を受ける義務がなくとも、上場を目指して、あえて会計監査人を設置する会社もあります。会計監査人による監査が義務付けられる法人は、次のとおりです。
大会社
最終事業年度の貸借対照表の資本金が5億円以上、または負債の部の合計が200億円以上の会社
指名委員会等設置会社
会社の内部に指名委員会、監査委員会、報酬委員会を設置する会社。委員会の過半数は社外取締役で構成され、取締役とは別に業務執行を行う執行役がいるという特徴があります。
監査等委員会設置会社
会社の内部に監査等委員会を設置した会社。監査役設置会社に比べて必要な取締役の数が少なく、上場するために確保しなければならない人的要件を少数で充足できるなどのメリットがあります。なお、監査役設置会社に関する詳しい内容は、以下の記事をご覧ください。
経理プラス:監査等委員会設置会社の移行状況は?最新情報まとめ
会社法以外の法律で義務付けられる法人
医療法人や社会福祉法人は、それぞれのガバナンスを規定する法令により、一定の負債や収益がある各法人について会計監査人による監査を受ける義務があります。
経理担当者が税理士に相談すべきこと
確定申告についての不明点
確定申告書の作成は、税理士の独占業務です。確定申告についての不明点があれば、税理士に相談しましょう。
税務調査の立会い
税務調査に立ち会ってもらう場合は、税理士に依頼します。税理士の立会いがなくとも税務調査は行われますが、税務署からの質問に代わりに答える権限があるのは税理士だけです。
税務相談
一般的な節税スキームの解説などであれば、公認会計士やコンサルタントなども行ってくれます。しかしながら、個別の事例に答える形の税務相談は税理士の独占業務です。この線引きが実務では非常に難しいのですが、経理担当者が行う相談といえば、ほとんどが会社で具体的に発生している状況を解決するためのものでしょう。このことを考えると、経理担当者からの税務相談は税理士に相談した方がよいと言えます。
経理担当者が公認会計士に相談すべきこと
会計監査に関すること
会計監査人による監査が必要な会社は、会計処理の不明点や決算書の作成、注記の内容などについて、監査を行う公認会計士や監査法人の担当者に確認しましょう。顧問税理士がいたとしても、その後の会計処理に関わるような内容は監査機関に判断を委ねるべきです。
税理士と公認会計士どちらに相談してもよいこと
一般的な税務や会計の質問
一般的な税務や会計に関する質問であれば、税理士・公認会計士のどちらに尋ねても問題ありません。
記帳代行や決算書の作成
記帳代行や決算書の作成代行は、意外にも特定の職業の独占業務にあたりません。したがって、税理士と公認会計士のどちらにも依頼することができます。
創業支援、コンサルティング
資金調達や助成金の申請、事業承継など創業支援やコンサルティングに関することも、税理士・公認会計士のどちらに相談しても構いません。また、公認会計士というと大企業と関わるイメージが強いかもしれませんが、日本公認会計士協会では中小企業支援として、中小企業の創業支援や成長支援といった業務も扱っています。
まとめ
税理士と公認会計士はそれぞれに独占業務があり、税務と会計を中心に色分けされています。そのため、独占業務についてはそれぞれの士業に相談しましょう。
判断に迷うのは、独占業務以外の業務です。税理士と公認会計士には独占業務以外の部分は共通する業務が多く、どちらに尋ねてもほとんどのことは解決できるでしょう。しかし答えてくれるからと言って、顧問契約の内容を超えた質問を繰り返すことはよくありません。
上記はあくまで、税理士と公認会計士に相談する際の一般論です。実際にどう付き合うかは、顧問契約書の内容によるべきといえます。中には毎月顔を合わせているものの、契約書には一度も目を通したことがないという方もいるかもしれません。付き合いの長い税理士や公認会計士でも、この機会にぜひ顧問契約書を確認し、今の付き合い方が適切なのか見直してみてください。
この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。