融資担当者はここを見ている -交際費編-
融資を判断する金融機関の担当者は、決算報告書だけではなく、法人税の申告書もチェックしています。
前回は、グループ内取引に関して融資担当者がどのような視点で申告書を確認しているのかについて見てみました。
今回は、交際費に関してどのような視点で融資担当者が申告書を見ているのかについて見ていきましょう。
企業統計上、交際費は増加傾向
企業が営業活動をするにあたって、多かれ少なかれ一定の交際費は支出していると思います。
融資の担当者は融資先が有効的な交際費を使っているのか、無駄に交際費を使って本業に邁進していないのではないかどうかという視点で交際費に着目をしています。
景気浮揚策のひとつとして交際費の損金算入限度枠もここ数年で広がってきており、ついつい使いたくなってしまう交際費でしょうが、企業側としてもコスト意識をもって使わないと利益の圧迫要因になってしまいます。
国税庁が発表している会社標本調査によれば、平成23年度までは5年連続で減少傾向にあった交際費の支出が、平成24年度、平成25年度と増加に転じており、景気の回復と合わせて交際費の支出が増えていることが統計からも見て取れます。
税務上の交際費は別表15という申告書に記載される
法人税の申告書では、「別表15交際費等の損金算入に関する明細書」という別表があり、その別表に会社の交際費の支出状況が記載されます。
中小企業であれば800万円まで損金に算入出来ますが、交際費を支出してればどこ会社でもこの別表作成はしております。
また、大企業の場合は、かつて交際費は全額損金不算入でありましたが、税制改正によって平成26年4月1日以降開始する事業年度から社外の方との飲食を伴う交際費であれば支出金額の50%が損金算入できるようになりました。
そのため、交際費のうち社外の方との飲食費については、別掲されますので、どの程度飲食代を支出しているかが読み取れます。
今までは、交際費の金額は分かっても社外の方との飲食費がいくらなのかというのは外部からは見ることが出来ませんでしたが、申告書の別表で簡単に見られてしまうようになったのです。
決算書との違い
会計上で計上した交際費と税務上の交際費が一致していれば決算書に計上されている交際費勘定の金額だけが支出交際費の金額として別表15に計上されます。
ただし、次のような事象があることで、単純に申告書に記載された金額と決算書の数値が一致しません。
決算書上、「交際費」という勘定科目以外で税務上の交際費を処理しているケースがあるからです。
たとえば、接待をするためにお客様にタクシーを利用していただいた場合には、会計処理上は、「旅費交通費」勘定で処理していても、税務上は交際費に該当するため、他科目交際費として別表15に計上されます。
このようなケースは本来あるべき勘定科目で会計処理をしていますが、税務の扱い上は交際費処理することを忘れないようにしているとのことで問題はないです。
ただ、悪質なケースとして、交際費を多く使っていることを外部に見られないようにするために、決算書上で、交際費勘定以外の勘定科目で処理しているケースがあります。
たとえば、飲食した経費を本来であれば「交際費」勘定で処理するべきところを
雑費等の勘定科目で処理した場合などがそれにあたります。
決算書だけしか見なければ、交際費をたくさん使っていないように見誤らせることは可能ですが、別表15を見るとその事実が確認できるのです。
「交際費」勘定以外の他の勘定科目で処理している場合でも税務上の交際費に該当するのであれば、他科目交際費として別表15の勘定科目名と金額が記載されていて、融資担当者はそれをチェックしているということを認識しましょう。
コスト感覚があるのかどうか
社外の方との飲食を伴う接待について、一人あたり5,000円以下であれば、交際費であっても損金算入をすることができます。
このような5,000円以下の交際費も別表15の上では、税務上の交際費から除外する交際費として記載されます。
交際費を使っているにしても、コスト意識をもって接待をしている会社であれば、交際費から除外する金額が別表15に計上されていると思います。
ただし、損金になるように人数をごまかして5,000円以下になるようにしているかまでは申告書からは読み取れません。
そこまでは申告書から読み取れないので、そこは限界と言えます。
最後に
融資担当者は、決算書のみならず別表15も見ながら企業の交際費の状況をウォッチしておりますので、その点忘れないようにしましょう。
この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。