融資担当者はここを見ている -株主の異動・投資実績編-
融資を判断する金融機関の担当者は、決算報告書だけではなく、法人税の申告書もチェックしています。
今回は、株主の異動や投資実績について、どのような視点で融資担当者が申告書から読み取っているのかについてみていきましょう。
株主構成はここで見ている
法人税の別表の中に別表2というものがありますが、これは、税務的には同族会社の判定を行うために作成されるものです。
法人税法上の同族会社とは、上位3つの株主グループ以下で50%超の株式等を保有している会社のことをいいます。
会社が同族会社かどうかを判別するために、別表2は作成されるのですが、融資担当者は、別の観点で別表2を見ているケースが多いです。
別表2には、次のような情報が記載されます。
- 株主の氏名または会社名
- 株主の住所
- 株主の順位(株式数、議決権数別)
- 他の株主との続柄
- 株主別の株式数、議決権数
記載されている内容を見ると株主名簿に該当するようなものだということが分かると思います。
ここで株主の順位に関して、株式数と議決権数とで区分して記載がされていますが、普通株式だけを発行していたら順位に違いは出ませんが、種類株式を発行している場合は順位が異なるケースがあります。
そのような場合は、外部の第三者であれば会社の登記簿謄本を入手するなどして、どのような種類株式を発行しているのかを確認することでしょう。
中小企業の場合、株主名簿を外部から提出を求められても、株主の情報は機密性が高い方なので、すぐに渡すことはないと思います。
ただ、金融機関などから申告書の提出を求められると申告書一式を提出しているケースは多いと思います。
別表2は申告書類のひとつですので、申告書の提出を受けた外部の金融機関は株主名簿を見ることになるのです。
別表2を見るときの着眼点はこれ!
融資担当者は別表2を次のような視点で見ています。
- 前期と比較して、株主が異動していないかどうか?
- 異動しているとしたら、誰から誰に異動しているか?
- 親族の株主の構成はどのようになっているか?
- 次世代に株式が異動されているか?
- 事業承継対策として株式の異動はあり得るか?
- 株式の所有割合から判断して、誰が会社のキーパーソンか?
- 株主の中に問題のありそうな個人や法人がいないか?
- 種類株式を発行している場合、だれが議決権の多くを持っているのか?
などなど決算書からは分からない会社の事情や力関係を別表2は物語っているのです。
出資先からのリターンが分かる
会社が株式投資をしている場合に、その詳細が分かる資料が法人税の別表8です。
法人税の別表8は、会社が受け取った配当金の明細を記載して、そのうち益金に算入してなくて良いものを算出する別表です。
法人税法上、受け取った配当金は次の4つの株式の種類に分けて管理をします。
株式等の種類 | 出資割合 | |
---|---|---|
完全子法人株式等 | 100% | |
関連法人株式等 | 1/3超、100%未満 | |
その他株式等 | 5%超、1/3未満 | |
被支配目的株式等 | 5%未満 |
別表8ではこれらの株式等の種類別、銘柄別に受け取った配当金の金額が記載されます。
ですから、投資している実績が明らかにされるのです。
また、融資担当者の立場で考えると、融資先に子会社等がある場合に、それらの子会社に融資をしていない関係上、決算書等を入手出来ない場合であっても、子会社に出資をしている親会社の別表8を入手することで、子会社や関係会社が配当を出しているのかを知ることが出来ます。
配当を実施しているようであればある程度余裕をもった経営を子会社が実施していることが想定されます。
もちろん、儲かっても配当を実施していない会社もあります。また、配当を実施していない理由が、赤字があるためなのか、そもそも配当しない方針なのかと言ったことまでは別表8からは読み取ることは出来ませんが・・・
普段何気なく提出している法人税の申告書ですが、見る側からするとたくさんの情報が含まれているのです。そのような貴重な情報を渡していると言うことを改めて認識していただければと思います。
この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。