融資担当者はここを見ている -修正申告編-

融資担当者はここを見ている -修正申告編-

融資を判断する金融機関の担当者は、決算報告書だけではなく、法人税の申告書もチェックしています。

今回は、別表5(1)や5(2)と税務調査との関連について、どのような視点で融資担当者が申告書を見ているのかについてみていきましょう。

税務調査が入ったことへの情報開示は消極的

会社が税務調査を受けたことを、積極的に金融機関等に伝えることは、あまりないと思います。
税務調査はあくまでも減点方式です。
税務処理に関して会社に何か問題がないかを税務署が調べにくるもので、何も問題がなければ、追加で税金の納税はありませんが、間違いがあると追加納税をするという話になってしまいます。
まったく問題がなくても、特に恩典があって税金を返してもらえるというようなことはないので、とにかく減点がないかどうかということに重きが置かれるのです。
ですから、税務調査を受けることになりましたなどと外部の人に伝えた場合、外部の人は、何か問題があったのかどうかという視点で聞いてくることと思います。
そのため、積極的に税務調査を受けることを会社側から伝えることはないのです。

強いて言えば、何も問題がなかった時に、得意げに、外部に税務調査があったけど問題なかったということを伝えている会社もありますが、比較的少数派と言えるでしょう。

そのため、融資担当者としては、入手した資料から、対象会社が税務調査を受けていたのかどうかを識別するようにします。
ここで、役に立つのが、法人税の申告書です。

修正申告していたことが分かる

法人税申告書の5(1)という別表の前期と当期の分を見比べます。
通常であれば、法人税申告書の別表5(1)の前期の差引翌期首現在利益積立金額と当期の別表5(1)の期首現在利益積立金額の数値は一致しますが、一致していない会社があります。そのような会社は要注意です。

一致していない原因の一つとして考えられるのが、前期末の申告に関して税務調査が入って、修正申告をしているケースです。
たとえば、3月決算法人で平成26年3月期の申告書と平成27年3月期の申告書を入手したところ、平成26年3月末の利益積立金と平成27年3月期の期首、つまり平成26年4月1日の利益積立金が一致しない場合があったとします。

原因として考えられるのは、平成26年3月期の申告に対して税務調査があり、修正事項が生じて修正申告をした場合には、修正申告書での翌期首現在利益積立金額は当初の申告書の金額と変わることが多いです。
その結果、修正申告書を入手していない場合は、前期末と当期末の申告書で数値がつながってこない場合があるのです。

修正申告の内容によっては、厳しい視点で見られることも

会社の側としては、税務調査があって修正申告をした場合に、わざわざ金融機関にその事実を報告しないことが多いと思います。
期ズレの問題等あまり影響を及ぼさない内容であれば、金融機関としても税務調査での修正内容を知らなかったとしても大きな問題になることはないかもしれません。

ただ、経営者が私的な費用を会社に多額に負担をさせていたような修正事項であれば、経営者の資質を疑われるかもしれませんし、本来会社の売上とすべきものが、経営者あるいは従業員が横領していたような修正内容であれば、会社の内部管理体制の脆弱さを指摘されるかもしれません。

このように修正申告書には会社が有している課題が露見する場合もありますので、修正申告書を出しているようであれば必ず提出を求められると思います。
そのためにも、別表5(1)の前期末と当期首の数値が一致しているかは確認されているのです。

別表5(2)も情報源になる

別表5(1)以外にも税務調査に関して、着目されている別表があります。
それは、税金の支払い状況が分かる別表5(2)です。
税務調査が実施されて、修正申告があった場合には、追加納税が発生した場合には、本税以外に、加算税や延滞税といったペナルティを別途支払うことになります。

加算税や延滞税を支払った事実が別表別表5(2)に記載されるのです。これらは損金不算入の税金なので、別途区分するために別表別表5(2)に特別に記載する欄が設けられています。
加算税や延滞税といったペナルティを払った場合は、その金額が記載されますので、どの程度の金額のペナルティが出たのかという事実も知られることになります。こちらも合わせてチェックされているので、「何でペナルティが発生したいのですか?」と融資担当者に聞かれても、答えられるように準備をしておきましょう。

この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。

著 者 公認会計士 中尾 篤史

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CSアカウンティング株式会社専務取締役  公認会計士・税理士 日本公認会計士協会 租税調査会 租税政策検討専門部会・専門委員 会計・人事のアウトソーシング・コンサルティングに特化したCS アカウンティング㈱の専務取締役として、中小企業から上場企業及びその子会社向けに会計・税務のサービスをひろく提供している。 著書に「BPOの導入で会社の経理は軽くて強くなる」(税務経理協会)「たった3つの公式で「決算書」がスッキリわかる」(宝島社新書)「経理・財務スキル検定[FASS]テキスト&問題集 」(日本能率協会マネジメントセンター)など多数

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