与信管理は会社の要!経理部門が担う与信管理の重要性とは

与信管理は会社の要!経理部門が担う与信管理の重要性とは

与信とは

中小企業庁によると、株式会社東京リサーチが調査した平成29年の企業の倒産件数は8,405件でした。減少傾向にはありますが、決して少ない数字ではありません。もっとも多い倒産の原因として、約7割が販売不振を挙げています。

(参照)中小企業庁 倒産の状況

会社は常に、取引相手の経営状況にアンテナを張っておかなければなりません。万が一、経営状況の悪い会社と取引を行い、その会社が倒産して売掛債権が焦げ付いてしまったら、せっかくの売上が会社の損失となってしまうからです。もし売掛債権の多いお得意先だった場合は、共倒れとなる可能性もあります。そのため、会社は取引を始める際に、まず取引相手と取引内容に応じて安全に取引できる限度額を考えなければなりません。

今回のテーマである「与信」とは、取引相手の信用度のことです。売掛債権を安全に回収できる金額を決める基準となる考え方で、会社のリスクマネジメントを目的とした取引相手の査定になります。

与信管理とは

「与信管理」とは、取引相手の与信に応じて、取引の限度額を決めること。言い換えると、その取引で許容できる最大損失額を決めることでもあり、自社のリスクを管理する要です。また、与信管理には限度額を設定するほか、その限度額が適正かどうか取引相手の状況によって適宜見直すことも含まれます。

与信管理の方法は、「与信管理規定」などでルール化されていることが一般的です。このルールに基づいて取引相手の与信を判断し、そのリスクに基づいて安全に取引できる上限額を規定から算出し、その範囲内で取引を開始することになります。

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与信限度額

「与信限度額」とは、与信管理によって設定した取引相手ごとの取引上限額のことです。会社が支出できる取引上限額を前提に、取引相手の与信とその取引内容から必要な金額を決めていきます。
与信限度額を決めるには、まずその取引に必要な金額を算定します。具体的には、商談内容に基づいて取引した場合における売掛金残高の見込み額を計算することです。

たとえば毎月の取引額が100万円だったとしても、その回収サイト(支払期間)が4ヶ月という取引を続けた場合、取引を開始して4ヶ月経った頃には売掛債権の残高は400万円に到達します。つまり、この条件で取引する場合、その取引相手に必要な与信限度額は400万円です。
続いて、与信管理ルールに基づき、取引相手のリスクと自社の投入可能資金から、その取引相手との上限額を算出します。その金額が400万円以上であれば、この取引は安全に行えるということが判断できるでしょう。

理論上、取引額が常に与信限度額を下回っていれば、万が一の時の損失を許容範囲内で収めることができます。しかし経営の視点で考えると、取引内容によっては、計算式だけで取引金額を决定できないこともあるでしょう。
たとえば、経営陣が将来的にその取引が会社に必要だと感じれば、上限を上げる判断に至ることもあるかもしれません。あるいは、逆に与信限度額以下の取引であっても、縮小したい部門の取引であれば見直されることもあるはずです。

そうは言っても、日常のほとんどの取引は、与信限度額でリスク管理をしなければ追いつきません。したがって、与信管理に関係する社員は与信管理の意識を持ち、誤った判断で会社にリスクを与えないようルールをしっかり守る必要があります。

与信管理のポイント

与信管理は、商談が開始した時点から始まります。一般的には、まず取引相手の会社基本情報や財務諸表から取引相手の信頼性を分析。非上場企業など決算書がオープンでない取引相手であっても、調査会社に依頼して入手することが可能です。
また、自社で保有する情報もまとめる必要があります。たとえば過去に取引がある相手であれば、当時の取引内容や経緯など社内にある情報も関係部門ごとにまとめ、与信ための判断に起用するのです。

続いて、商談内容についての分析です。そもそも採算のとれる取引かどうか、取引量は適切か、取引条件にリスクはないかといった検討を行います。これらのプロセスによって判断した内容から、与信限度額を判断するわけです。

与信管理のポイントは、まずは社内規定に沿って、画一的に情報収集を進めることが基本です。与信管理では客観的に集めた数字以外にも、取引内容の将来性など画一的に判断できない要素もあるでしょう。しかし、まずはルールに従って、リスクを客観的に分析することが必要です。特に取引相手によって情報収集の手を緩めたり、基準を緩和したりしてはなりません。まずはルール通りに、情報収集するところからスタートします。

もう一つ、与信管理のポイントが関係部門の連携です。与信管理は取引相手の変化に応じて、限度額を適宜見直す必要があります。そのため、関係部門が入手した与信に関する情報を集約できる仕組みづくりを行うことが重要です。取引相手と接触機会の多い営業部門はもちろん、支払い状況を管理できる経理部門からの情報は、特に重要な判断材料になります。

経理部門で与信管理を行うには

会社の組織編成にもよりますが、一般的に与信管理を行う部門は管理部門と営業部門、そして経理部門です。経理部門は与信限度額を超えた取引がないかチェックするほか、売掛金の回収遅れや取引相手の代金の決裁方法が変わったことなど、与信管理を見直すきっかけとなる事実にいち早く気がつくチャンスが多くあります。
特に、取引相手からの入金のチェックは重要です。入金予定の日はこまめに通帳を確認し、遅れが認められればすぐに報告しなければなりません。

取引相手と接するのは営業部門ですが、人間ですから付き合いの長い取引相手に慣れが生じてしまい、変化を見落とすこともあるでしょう。また、売上を伸ばしたいという気持ちから、予断を許すこともあるかもしれません。

経理部門での与信管理は、あくまで数字や支払い状況といった客観的事実から、適正に取引が行われているか、また取引相手の経営悪化に気がつく糸口を見つけ出すことにあります。取引相手に対して経理は、常に与信管理に問題はないかという意識を持って臨みましょう。

まとめ

与信や与信管理、与信限度額の計算方法や経理部門のポイントなどを解説しました。与信管理は関係部門が連携して、情報を共有することが大切です。経理部門では、日常の業務の中で取引相手の変化に気がつくことができます。与信管理の意識を持って経理に臨み、会社のリスク管理をサポートしましょう。

この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。

著 者 石田 夏

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理士事務所、上場企業の経理職を経てフリーライターに転身。 簿記やファイナンシャルプランナー資格を活かして、税務・会計に関する企業向けコンテンツを中心に執筆中。 ポリシーは、「知りたいをわかりやすく」。