予実管理を効率的に行うために押さえておきたい考え方と作成方法

予算とは会社の数値目標です。

会社を経営していくうえで数値管理はかかせません。会社としてまず避けたいのは赤字になることです。

赤字を避けるために月次決算や半期決算など、その都度会社の状態を把握して、判断をする必要があります。しかし、会社として成長していくためには赤字にならないようにするだけでは十分ではありません。きちんと利益を稼ぎ出し、その利益を投資して会社を成長させていくサイクルを描ける状態でなければなりません。

そのためにも、必要な売上と適正な費用を管理する必要があります。予算はそのための指数となるため重要なのです。

 

予実管理で押さえておきたい2つのポイント

  1. 予算管理を行う者が明確な予算を作成する
  2. 予算管理がしやすい予算を作成する

1.予算管理を行う者が明確な予算を作成する

それほど大きくない会社では、社長が会社全体の予算管理を行っている場合がほとんどですが、会社が大きくなれば「部」や「課」と組織化され、それぞれが与えられた予算管理を行うようになります。

「部」の長であれば「部」の予実管理をし、「課」の長であれば「課」の予実管理をし、個人に予算が与えられているのであれば、個人が予算を達成するべく管理する必要があります。
つまり立場によって管理しなければならない予算は変わります。

なぜ与えられた予算を達成しなければならないのかを、「会社」の予算はこれだけで、そのために各「部」にはこれだけの予算を達成する必要で、そのためには各「課」にはこれだけ必要と説明し、一人一人に予算を浸透させる必要があります。

予実差異が生じても誰が改善するかわからない予算にならないようにしましょう。

2.予算管理がしやすい予算を作成する

予実管理を行う上で重要なことは、予算と実績がかい離した場合に、その原因を突き止めて、説明できるようにしておくこと、そして解決策を提示できるようにしておくことです。
予算管理者が原因分析を行える資料を経理は提供できなければなりません。

そのために予算作成段階で費用をある程度細分化しておくと良いです。
細分化された予算であれば、何によって生じた差異なのか発見しやすくなります。

ただ細かくし過ぎても管理しにくくなりますので注意が必要です。

 

交通費・経費精算システム「楽楽精算」 交通費・経費精算システム「楽楽精算」

 

予算作成の工程

  1. 目標を決める
  2. 予算作成に必要な数値を見極める
  3. 人件費予算を作成する
  4. 施設予算(減価償却費)を作成する
  5. その他固定費予算を作成する
  6. 部門粗利率を求める
  7. 売上予算を作成する
  8. 各部署の予算を合わせる
  9. 販売管理費予算を作成する
  10. 目標との差異を埋めていく

1.目標を決める

理想としては3年後の目標をつくり、そこから逆算して1年後との予算を作成するやり方をしたいところですが、今回は1年分の予算作成の場合で説明したいと思います。

目標となる数字は「営業利益」です。
ただし借入が多い場合や資産運用に力を入れているといった場合、営業外損益を加えた「経常利益」を目標とするのもいいでしょう。

まず会社として利益をどれだけ出したいのか決めます。
これは経営者の判断になります。

利益の決め方は経営者によって異なりますが、多くの場合直前期の営業利益を参考に決めます。
しかし、予算作成の段階ではまだ営業利益は確定していないので、予想される利益を元に決めることになります。
そのためにも経理は判断に資する資料を作成する必要があります。

2.予算作成に必要な数値を見極める

予算数値は過去実績値をベースに作成をします。
項目によってどの期間の実績値を利用するか異なります。

例えば、家賃や人件費は売上に連動しない固定費ですが、同じ期間で集計した数値を利用できるわけではありません。
家賃は固定金額なので、直近月の数値をそのまま利用できます。
しかし、人件費の中の時間外は繁忙期と閑散期では数値が異なりますので、一定期間を集計して平均値を計算する必要があります。
このように費用によって作成方法が異なりますので、項目によって参考となる数値の集計を変える必要があります。

予算作成を1月に始める場合、直近12か月(昨年01月~今年12月)の数字を抽出し、費用項目に応じて参考にする数値を見極める必要があります。

3.人件費予算を作成する

人件費は人員計画に基づいて予算を作成します。
人件費は人事異動、新規採用、定年退職などさまざまな要因により増減が生じます。
人員は1人違うだけでも数字が大きく変わりますので、各部門において適正な人員を再検証する必要があります。

人件費にあたる項目はいくつもあります。

  • 基本給
  • 時間外
  • 通勤手当
  • 法定福利費
  • 退職金
  • 福利厚生費(健康診断料など)

これら人に基づいて発生する費用を人員ごとに試算し、人員計画に基づいて部門予算として作成します。
増員予定がある場合は、誰かをモデルにして人件費を加算します。

ただ社員数が多い会社で一人一人積み上げていくのは大変ですので、大まかな人数に平均給与をかけて計算したもので予算を作成する方法もあります。

その際に利用する平均給与は直近の月次のものを使うのがいいでしょう。
ただし、時間外は時期によって変動があるので一定期間の数字から試算する必要があります。
通勤手当も半年分を一括支給している場合に、月額で見ないといけません。

4.施設予算(減価償却費)を作成する

各部門が来期に購入予定の固定資産を把握するとともに、予算外の固定資産購入を管理するためにも必要な資料となります。

各部門に現在利用中の固定資産リストを渡し、購入予定の固定資産を記載して返してもらいます。
その際、購入予定額がわかるような見積書等を添付してもらい、減価償却費を計算します。

注意点として、現在償却中資産の買い替えによるものか、新規購入のものかで増える費用は大きく異なります。
買い替えによるものであれば、以前に償却費とあまり変わらない費用が発生することになりますが、新規購入の場合は償却費が純粋に増額されます。

5.その他の固定費予算を作成する

人件費や減価償却費は固定費の代表的なものですが、その他にも家賃や通信料といった費用があります。固定費には毎月一定額発生するものだけでなく、協会費や年払いの保険料のように半年や年に1回発生するものあります。営業交通費や交際費のように必ず発生するけども、月によってばらつきがある費用もあります。

そういった費用は1ヶ月間だけを見るのではなく年間発生額で見た方がいいです。その他にもその年度に特別発生した費用があります。

このように費用を仕分けして細分化して、その他の固定費予算を作成していきます。またこの作業を通じて見直し可能な費用がないか確認します。

6.部門粗利率を求める

求める粗利は業種によってさまざまです。
私の会社は工事、人材派遣、コールセンター、物販とさまざまな業種があり、部門によって意識すべき粗利率が異なります。
ただ色々な業種について説明するとわかりにくくなりますので、一番わかりやすい小売業で説明します。

小売業の場合
「売上-売上原価(仕入原価)=粗利」
「粗利÷売上=粗利率」

このように過去実績から目安となる粗利率を求めます。

7.売上予算を作成する

各部署から売上予算をもらいます。

8.各部署の予算を合わせる

3~7の予算を合算して仮の部門予算を作成します。
『売上予算-売上原価-人件費予算-施設予算-その他経費=部門利益』

各部門予算を合算して、全体の部門予算を作成します。

9.販売管理費予算を作成する

部門ごとに販売管理費予算を持たせている場合は不要ですが、分けている場合は別途販売管理費予算の作成が必要です。
基本的な作成方法は2~5と同じです。

10.目標との差異を埋めていく

会社の目標とする営業利益と各予算を積み上げて出た営業利益に差異がある場合、その差異を埋めていく場合があります。
差異を埋めるには、売上を増やすか費用を削減するかしかありません。
その場合、どの部門に改善させるかをこれまでに作成した部門利益の予算に戻ってどうするかを考える必要があります。

 

まとめ

予算管理の目的は予算を守ることではありません。会社を成長させていくために必要な利益を確保するために管理をするわけです。予算以上に利益が見込めるのであれば、予算計上していなくても将来の受注獲得のために先行投資するという判断も予実管理を行っていれば可能になります。

また決算賞与を出して社員のモチベーションアップを図るという判断も可能です。決算賞与支給を決算締め後に行う場合、「その支給額を、各人別に、かつ、同時期に支給を受ける全ての使用人に対して通知をしていること。」といった要件がありますので、決算締めて利益が出たから支給した場合は、その年度の損金として認められませんので、事前の見通しで対応しなければなりません。そういったことへ対応するためにも予実管理が大切です。

 

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● 著者

小栗勇人

小栗勇人

1980年生まれ。上場企業と上場企業子会社で経理を10年経験。ExcelやAccessの活用、クラウドサービスの導入、社内基幹システムの構築など、経理業務だけでなく、会社全体を効率化させることを日々実践中。運営ブログ「経理と事務の効率化」をきっかけにExcelの本『経理の仕事がサクサク進むExcel超活用術』を出版。

経理と事務の効率化