役員退職金は損金算入できる! ポイントは計算方法にあり
創業者や取締役などの役員が退職するときには、役員退職金が支給されることが多いでしょう。
従業員の退職金と違い、役員退職金については曖昧な知識しかなく不安に感じている人もいるかもしれません。そこで今回は、役員退職金を理解するために、役員退職金の金額の決め方や支給するときの手順、節税効果や損金算入するときのタイミングなどについてお伝えしていきます。
これから役員の退職を控えている職場にお勤めの人、または将来的に役員の退職が発生することが予想される職場にいる人は、ここでしっかりと確認しておきましょう。
役員退職金とは
役員退職金とは、会社の創業者や代表取締役、その他取締役などの役員が退職するときに支給されるもので、従業員で言うところの退職金にあたります。しかし、従業員の退職金とは会計の取り扱いが異なることから、専用に役員退職金勘定を設けています。
役員退職金には、よく節税効果があるといわれており、基本的には損金算入ができることが特徴です。節税効果については後ほど詳しく解説します。
退職金は、所得税などで通常の給与所得よりも優遇されており、個人が受け取る退職金は税金の負担が少なくすむことが多いです。役員退職金も同じように個人の所得税で優遇されています。
役員退職金の金額の目安とは
会社のリーダーとなって貢献してきた役員が退職するとなると、やはりそれなりの待遇で対応されるべきではあります。しかし、常識を超えて退職金を支給することは、当然ながら望ましくありません。それではいったい、役員退職金の目安はどれくらいが妥当になるのでしょうか。
高額すぎると損金算入できない
まず、役員退職金が損金算入できるとはいえ、あまりにも高額な役員退職金の支給の場合は税法上、損金算入が認められないこともあると理解しておきましょう。ただし、算出された役員退職金にしっかりとした根拠がある場合なら損金として認められます。
一概にはいえませんが、同族会社の場合などは役員退職金を高額に設定するケースもあります。同族会社は役員が親族にあたりますので、親族間での忖度が働くこともあるのでしょう。
しかし通常では、役員退職金は会社に在籍した期間や支給されていた役員報酬額、会社での功績などが考慮された上で決定されることが一般的です。法律でも役員退職金の金額決定は定められておりませんので、同業者や同じ会社規模の役員退職金と比較して、著しく高くなりすぎないように注意しながら、会社内でしっかりと熟考して決めることが望ましいでしょう。
功績倍率法の算定は原則損金算入が認められる
2018年度の税制改正で功績倍率法によって算出された役員退職金は、原則として高額すぎなければ損金算入が認められることになっています。
功績倍率法とは、役員を退職する直前に支給されていた給与を基にして、会社での勤務年数や経験の職務、功績などに応じて一定の倍率を乗ずる算出方法です。会社の役員退職金規定などに乗ずる倍率が明記されていることで、損金算入が認められます。あくまで、算出方法が過大ではないことが条件になりますので注意しましょう。
役員退職金を支給するときの方法
上記で解説した功績倍率法は、原則として損金算入が認められます。では、功績倍率を基にして、実際に役員退職金を計算してみましょう。算出式は次のとおりです。
仮に直近の月額報酬が90万円、役員勤続年数が15年、功績倍率が1.5倍とした場合、計算式は、90(万円)×15(年)×1.5(倍率)=2,025(万円)になります。
算出する上での注意点は、功績倍率がどのくらいなら妥当であるかというところです。最高で3.0倍ともいわれていますが、これについては同業者や同規模の会社を参考にするといいでしょう。さらに、妥当な倍率がどのくらいなのかを正確に把握するためには、専門家にアドバイスを求めることもひとつの方法です。
そして役員退職金を支給するときには、きちんとした手続きを踏む必要があります。まず、株主総会の決議があり、そこで議事録を残します。けして自由なタイミングでは支給できませんので、しっかり理解しておきましょう。
役員退職金と税金の関係、損金算入の時期
最後に、役員退職金を支給することでの節税効果と、損金算入ができる時期について紹介します。
役員退職金の節税効果
役員退職金を高額すぎない範囲内で支給すれば、原則として損金算入できるということを上述でご紹介しました。損金算入できるということは、法人の所得税負担が削減されることになりますので、利益がでているなら会社にとっては節税効果が期待できます。
また、次に解説する損金算入のタイミングによっても、節税の効果を活用することが可能になります。役員退職金は、制度を基に節税できるごくスタンダードな方法といえるでしょう。
役員退職金の損金算入時期
役員退職金の損金算入をするためには、ふたつのタイミングがあります。
- 株主総会で役員退職金を決める決議をした事業年度
- 会社が役員退職金を支払った事業年度
株主総会の決議をした事業年度と役員退職金を支払った事業年度は、必ずしも同じ年度とは限らないでしょう。そのため、損金算入したい年度を会社が選択できるということになり、税務上でより条件のよい年度を選べるということになります。
事業年度の利益が出るようなら、その年度の内に1、2のどちらかの方法で損金計上すれば、所得税の負担が削減されます。ある程度の計画性を持って計上できることは会社にとってはメリットであると考えられますね。
まとめ
いかがでしたか。今回は、役員退職金について金額の目安や支給するときの方法、損金算入の時期などについてお伝えしました。大事なポイントは、損金算入できる目安額と、支給するときの手順、計上するときのタイミングでした。
毎年のように役員の退職があるという会社よりも、数年に一度という頻度の会社の方が多いかもしれません。時間が長く経過してしまうと、手順についても忘れてしまうことがあるでしょう。しかし、税務上の注意点などが細かくあるため事前にしっかりと確認をとり、最適なタイミングで進められるように備えておきたいですね。
また、役員報酬の損金算入方法は下記の記事で紹介しておりますので、併せて確認してみてください。
経理プラス:役員報酬と給与の違いとは 決め方と改定の注意点、勘定科目を解説
この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。