スループット会計とは スループット会計の理論を徹底解説

スループット会計というものをご存知でしょうか。メーカーにお勤めの経理担当者の方であれば、スループット会計という言葉をお聞きになったことがあるかと思います。スループット会計は、2000年頃から注目を集めている、製造業向けの管理会計手法です。
今回は、このスループット会計について詳しくご紹介していきます。

 

スループット会計とは?

スループット会計とは、製造業向けの管理手法の一種で、伝統的な原価計算管理手法に、経営レベルの視点、全体最適の視点を加味した概念です。経営レベルの視点とは、すなわち、現在と将来にわたって儲け続けることを目的に掲げ、意思決定を行うための評価尺度を手にしようとする意識です。
あらゆる製造業は、原材料や構成部品の購入、原材料から完成品への技術的変換、製造(加工・組立)製品の販売、という3つの基本活動を行っています。
スループット会計の概念においては、こうした活動に沿って、次の包括的な尺度を用いて製造活動を自己評価するのです。

  • スループット (Throughput)
  • 在庫 (Inventory)
  • 業務費用 (Operating Expense)

1. スループット (Throughput)

スループットとは、「生産ではなく、販売によって生み出す貨幣」のことです。
そのため、以下の式で表されます。

スループット = 売上 ― 直接材料費

生産ではなく販売時点で成果の測定を行うことは、多くの製造業が直面している「売り手市場から買い手市場への移行」という環境変化を反映しています。売り手市場では、作ったものがすべて売れるという確たる前提がありますが、買い手市場では必ずしもそうではありません。製品が売れたときに初めて利益が生じるのであって、決して製品在庫を生産したときに利益を計上してはならないと考えます。
業績尺度を見かけ上の利益ではなく、実際の利益にリンクさせるためには、生産ではなく売上を測定する必要があります。スループットを見る際のポイントとして、活動ではなく成果を測定する点を強調しなければなりません。

スループットは金額で成果を測定しますが、時間や重量等で活動を測定することはしません。売上、つまり原材料を販売製品に変換することに寄与しない活動は、無駄なものとして捉える点に特徴があります。

以上を要約しますと、スループットは、記帳を行う時点を製造活動時点から販売時点にシフトさせ、さらに測定単位を時間、重量、個数などの原単位から金額へシフトさせることを意図しています。

2. 在庫 (Inventory)

在庫とは、「企業が販売を意図する資材(加工度に応じて原材料、仕掛品、製品等が含まれる)に投資した金額」のことをいい、具体的には、原材料在庫、仕掛品在庫、製品在庫に含まれる直接材料費です。
在庫の概念に関して、スループット会計と伝統的な原価計算の定義との違いは2つあります。

第一に、スループット会計においては、製造企業が販売しようとする資材のみを含めます。ダイナミックな市場に対応できるかどうかは、在庫をスループットに変換する速度に依存します。

第二に、スループット会計においては、資材の加工進捗度が高まっても価値を付加しません。従来の考え方では、加工進捗度が高まるにつれて、労務費や製造間接費を吸収すると考えられてきました。つまり、「資材の棚卸資産価値は各工程が進むにつれて増加する」という、いわゆる「原価の凝着性」という原価計算思考です。

スループット会計における在庫の価値は、常にその取得原価とされます。なお、労務費やその他の費用は、次のカテゴリーである業務費用に含めることとなります。

3. 業務費用 (Operating Expense)

業務費用とは、「在庫をスループットに変換するのに支出した貨幣」です。業務費用の中には、在庫以外のすべての管理可能な支出額が含まれます。

従来の原価計算との違いは、2つあります。

第一に、スループット会計は、直接労務費と間接労務費を基本的には区別しないという点です。双方とも、在庫をスループットに変換すること、あるいは顧客への製品の流れに寄与すると解釈し、すべての労務費は業務費用に含まれます。

第二に、スループット会計は、大部分の業務費用は実際の支出額から成るという点です。製品原価計算システムとしての標準原価計算の下では、あるオペレーターがその業務に対して設定された工学的な標準値よりも早く製品を生産すれば、仮に当該製品に対する需要がなかったとしても、有利差異を計上し、単位原価は低下すると考えられます。しかし、同一の状況下でスループット会計では、スループット不変、在庫増大、業務費用不変と解釈します。

スループット会計においては、以上のような3つの包括的業務尺度を用いて、企業の目的をスループットの増大、在庫の減少、業務費用の減少に読み替えます。そして、「スループットの増大」が最も重要であり、次に「在庫の減少」、最後に「業務費用の減少」という優先順位を与えているわけです。

 

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求められる内部尺度と外部尺度のバランス

昨今、かつてのメーカー主導の生産・流通システムから、小売主導の生産・流通システムへの転換が迫られています。

具体的には、買い手(一般消費者)の購買力が向上し、価値観が多様化した結果、売り手とのパワーバランスが崩れ、より大きな力を買い手が持ち始めています。結果として、商品ライフサイクルは短期化しているのです。
そのため、売り手側、製造業側としては、常に実需を正確に捉え、適切な在庫管理によるキャッシュフロー経営のためのサプライチェーンマネージメント(SCM)への移行が求められています。
これは、「造りたいものを造る」のではなく、「売れるものを造る」ことが求められているとも言えるでしょう。しかし、これが有効に作用するためには、「売れる予測」の確実性が前提となります。そのため、販売の不確実性を少しでも低減させるために、小売側との情報連携により、戦略提携関係を構築していく必要があるとされています。

こうした問題点を踏まえて、より現実に即した対策を講じる場合、製造企業としては、競合他社や顧客企業に対する非財務的な外部尺度を織り込んで、内部尺度(スループット・在庫・業務費用)とのバランスを保つような尺度体系を用意しなければなりません。

 

まとめ

今回は、スループット会計の概念をみてきましたが、いかがでしたでしょうか。
会計ルールの話ではなく、管理会計手法の話ですので、少々概念的な議論で取っつきにくい面があったかもしれません。
要するに、造りたいものを造るのではなく、売れるものを造らないと意味がないということです。そして、売れるものを適切な在庫水準と業務費用で制御し続けることこそが、キャッシュフローが潤沢な、安定した経営につながるという考え方に基づく管理会計手法なのです。

伝統的な原価計算の概念との対比において、似て非なるマインドセットに基づくことを読み取っていただければ幸いです。

 

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● 著者

田中 仁

田中 仁

大手総合商社にて10年間勤務し、新規事業開発を中心に資金調達、財務・会計等を担当。 東京のほか、アメリカのベンチャーキャピタルやイギリスの金融機関等にて勤務経験もあり。