手形割引とは?メリット・デメリットや仕訳方法を解説
会社間の取引では、代金の支払いを手形で行うことがあります。受け取った手形を期日前に現金化するのが手形割引です。手形そのものをイメージできる方は多いですが、手形割引についてきちんと理解できていない方もいるのではないでしょうか。
そこで今回は、手形割引について詳しくご紹介するとともに、裏書手形・不渡手形との違いやメリット・デメリット、手形割引の仕訳方法などについて解説していきます。
手形割引とは
手形割引を知るには、まず手形とはどのようなものか理解する必要があります。そもそも手形とは、支払い期日を一定期間後に設定し約束するということで発行するものです。「約束手形」といわれるものが一般的です。
買掛金の支払いなどに使われることが多く、支払日に現金が用意できない場合でも手形を振り出すことで支払が完了したとみなされます。
約束手形を受け取った側は、手形に記載された期日まで現金化はできません。あくまで現金として受け取れるのは手形の満期日になります。
手形割引の仕組み
手形割引とは、受け取った約束手形に記載された期日より前に現金化できるものです。約束手形の期日は一般的に3か月から4か月後に設定されていることが多く、それまで資金繰りも圧迫されます。手形割引をすることで現金化が前倒しになり、資金繰りもスムーズになります。
後述でも詳しく解説しますが、手形割引は金融機関など割引業者へ依頼し、審査が通ると手形を渡す替わりに手数料などを差し引いて現金を受け取れます。
手形割引の目的
手形割引を行う目的としては、資金繰りを潤沢にすることが挙げられるでしょう。約束手形は小切手とは異なり、現金として受け取れるまで3~4か月かかります。資金繰りにゆとりがない企業の場合は、手形割引によって早く現金化が可能です。
なお、手形に関する詳しい解説はこちらの「約束手形の仕組みとは?2026年の廃止検討に向けた今後の注意点を解説」の記事でもご紹介していますので、併せてご覧ください。
裏書手形や不渡手形との違い
手形の種類の中に「裏書手形」「不渡手形」というものがあります。これらは手形割引とどのような違いがあるのか、詳しくご紹介します。
裏書手形
裏書手形は、手形を受け取った人が別の取引先との支払いに対して使う場合に行われるものです。
手形は期日まで現金化することができませんが、期日まで支払い手段として使うことはできます。手形の裏に手形を譲渡する人(会社)と譲渡される人(会社)の記名押印をすることで成立します。これが「裏書手形」といわれる所以です。なお、裏書手形となっても、もともとの支払者が変わりません。
手形割引も、手形を譲渡することとなるため裏書をします。そのため、手形割引は裏書手形の意味も持ちあわせます。
不渡手形
不渡手形は、手形の満期日となる支払期日が到来しても決済できなかった手形です。手形の支払いは口座から引き落とされるわけですが、残高不足により引き落としができない場合などに不渡りになります。
不渡りは一般的な約束手形のほか、手形割引や裏書手形でも起こりうるものです。裏書手形をしている場合、手形を譲渡した人(会社)は譲渡された人(会社)に支払いができなかったことになりますので、不渡り手形を買い戻す必要があります。
手形の裏書は、簡単な事務処理で済むものですが、万一不渡りになった場合は、買い戻しの資金も必要になることに注意が必要です。
手形割引のメリット・デメリット
ここからは、手形割引のメリット・デメリットについてご紹介します。
手形割引のメリット
手形の記事よりも前に現金化できることは、大きなメリットのひとつです。手数料が差し引かれるものの、資金繰りはスムーズになります。
また、手形割引の方が融資を受けるよりも短期間で審査結果がでます。さらに、割引のときの審査は融資の時よりも通りやすいといわれています。また、事業融資の利息よりも低い水準で資金を用意することができる点もメリットのひとつです。
手形割引のデメリット
手形割引は裏書手形の一種ともいえますので、万一不渡りになったときは買い戻しが発生する恐れがあります。
また、割引をする際には業者から手数料が差し引かれます。一時の資金繰りは楽になるかもしれませんが、本来の手形額面を受け取ることができないことを理解しておきましょう。
手形割引の流れ
手形割引は、手形を受け取った人(会社)が金融機関や割引業者に申し込みをします。手形の振出人が審査され、問題がなければ手数料を差し引いた分の現金が支払われるという流れです。
審査では、振出人のほか、割引の申込人も審査されます。ここでは買い戻しになった際に資金が準備できるかなどを注視されます。なお、手形割引を利用するときに必要な書類は次の通りです。
- 割引予定の手形
- 預金口座
- 本人確認書類
- 会社の登記関係
- 印鑑証明書
- 決算書、月次表 など
手形割引時の仕訳方法
最後に、手形割引の仕訳方法についてご紹介します。手形そのものを受け取ったところから、割引を行うまでの取引を例にします。
売上代金500,000円を手形で受け取った
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | 摘要 | |
---|---|---|---|---|---|
受取手形 | 500,000円 | 売掛金 | 500,000円 | 手形No.〇〇〇〇〇 (売掛金の回収) |
手形500,000円を割り引いた。手数料は10,000円。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | 摘要 | |
---|---|---|---|---|---|
当座預金 | 490,000円 | 受取手形 | 500,000円 | 受取手形の決済手形 No.〇〇〇〇〇 |
|
手形売却損 | 10,000円 |
手形を受け取るときは基本的な仕訳ですが、割引になるときは手数料分をきちんと差し引きます。
なお、通常の手形や裏書、不渡りについてはこちらの「手形取引がきても大丈夫!手形の基礎知識から受取手形の会計処理方法まで」でも詳しく解説していますので、併せてご覧ください。
まとめ
今回は、手形割引の概要やメリット・デメリット、実際の仕訳方法などについてご紹介しました。手形割引の良い点は、融資のハードルよりも低くしながら資金を早く集められることです。ただし、買い戻しのリスクもあるため、手形の振出先についても考慮することが大切になります。
資金繰りが厳しいと感じている企業は、手形割引の利用も選択肢のひとつとして検討してみてはいかがでしょうか。
この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。