棚卸資産評価損とは? 正しい評価方法と発生したときの対処法
棚卸資産評価損とはどのようなものであるか、なんとなくイメージはあるものの、詳細には理解していない人も多いのではないでしょうか。損失というからには棚卸が減少するということになりますが、決算ではどのように扱われるのか、曖昧な場合もあるでしょう。ここでは、棚卸資産評価損の概要や評価損になりやすいもの、決算時の計上の仕方などについて紹介します。ぜひ参考にしてください。
棚卸資産評価損とは何か
「棚卸資産」とは、いわゆる「在庫」のことを指しており、「棚卸資産評価損」とは、在庫の価値が下がることで発生する「損失」のことを指します。
在庫の価値が下がる要因としてあげられるのは、「災害などの外的要因で商品や原材料が損傷」する場合や、「在庫品の流行が過ぎ需要が変わった」場合などがあります。
今までの価格で販売することが難しくなるということは、在庫を販売したときに得られる利益も減少するということです。また、販売価格を下げる場合に、ときには仕入価格よりも下回るケースもあります。
安易に不良在庫を抱えるより、在庫を処分しなければならない場合、仕入価格より下回る取引では「損失」が発生しますので、棚卸資産評価の損失計上をすることになるわけです。
国税庁によると、棚卸資産評価損が計上できるものとして法令が規定する「評価損の計上ができる著しい陳腐化」とは、次のような「棚卸資産そのものに欠陥等はないが、経済的環境の変化などで棚卸資産の価値が著しく減少し、今後も価値の回復が見込めないと認められるもの」とされています。
- いわゆる季節商品で売れ残ったが、今後は通常価格で販売できないことが既往の実績などから明らかである
- 既存の棚卸資産とおおむね同様であるが、型式、性能、品質等が著しく異なる新製品が発売となり、既存の棚卸資産を通常通りの価格で販売することができない
国税庁 棚卸資産の著しい陳腐化の例示
上記の例のように特別な事実であることが認められれば損失計上が可能となります。ただし、ただ単に物価変動や過剰生産、建値の変更などの理由による場合は、損失計上ができないケースがあります。
棚卸資産評価損のリスクがあるものとは
棚卸資産評価が減少してしまうリスクが高いものにはどのような商品があるか、その一例を紹介します。
- 一時的に流行となりやすい商品
- 季節が限定された商品
- イベントに特化された商品
- 市場価格の変動が大きな商品
流行を追うような商品は、一時的なブームが過ぎるとまったく興味を持たれなくなり、売れなくなるリスクがあります。また、夏や冬など季節限定で売れる商品も、該当の季節が過ぎると極端に売れなくなることがあるでしょう。
クリスマスなどのイベントに特化した商品も、イベント後には途端に売れなくなる可能性が高く、流行や季節商品などは仕入価格よりも販売価格が下回る評価損となるリスクが高いといえるでしょう。
棚卸資産評価損の計算方法について
ここからは、棚卸資産評価損の計算方法を確認してみましょう。計算式は次のとおりです。
たとえば、ひとつの棚卸資産(在庫)金額が2,000円のものを、販売価格1,800円とした場合、棚卸資産評価損の計算は次のようになります。
ひとつの棚卸資産評価損の金額は200円となりますので、同じ商品の在庫の数を積算します。そのため、もし在庫数が50品であった場合は、200×50=10,000円の評価損になるということです。
棚卸資産評価損が発生したときの計上方法
棚卸資産評価損が発生したときには、決算書に計上することになります。損失分を損益計算書に計上し、在庫の金額が減少します。
損益計算書では、原則的に売上原価(製造原価)内に含まれることになるため、評価損が単独で記載されることはありません。評価損の内容を個別に確認するには、決算書類の中の注記事項に記載されていることが多いでしょう。
ただし、棚卸資産評価損の発生要因が、重要な部門の廃止など多額に損失が発生するものであったり、地震や水害などの災害で臨時的な事象によるものであったりする場合には、売上原価(製造原価)ではなく特別損失として区別して計上されます。
棚卸資産の評価は、決算のときの利益に反映されます。評価損の計上は十分に検討する必要があるでしょう。また、棚卸資産の評価損をした事実は、税務調査の際にその根拠を詳細に調査される可能性があります。なぜ評価損をする必要があったのか、事実を説明できる書類を作成し、保管しておくようにしましょう。
通常、評価損を計上する明確な理由がない場合は、損失分を認められないことがありますので、認められる理由かどうかをしっかりと確認しましょう。
まとめ
今回は、棚卸資産評価損とはどのようなものか、基礎知識や計算式、決算での計上方法などについてお伝えしました。ただ単に古い商品であることや、過剰生産しただけでは評価損として認められないケースもあるため、損失の計上の際にはしっかりと根拠を示しておくことが重要なポイントです。税務調査でも損失計上が認められるように、事前にしっかりと明確な根拠を書類で残しておきましょう。
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