修繕費でもう迷わない!経理処理方法と資本的支出・消耗品費との見分け方

事業活動に必要なさまざまな資産が、壊れたり摩耗したりするのは、使い続けていれば当然のことです。それらの資産を修理・メンテナンスする費用である修繕費の経理処理について全体的な内容を確認していきます。

修繕費に該当するものと経理処理

法人税法基本通達7-8-2には、修繕費について以下のように規定されています。

法人がその有する固定資産の修理、改良等のために支出した金額のうち当該固定資産の通常の維持管理のため、又はき損した固定資産につきその原状を回復するために要したと認められる部分の金額が修繕費となる

(引用)国税庁 第8節 資本的支出と修繕費(修繕費に含まれる費用)7-8-2

キーワードとなるのは維持管理、そして原状回復です。「通常使用をしていれば定期的に支払わざるを得ないメンテナンス」や「事故などで壊れたり、使用に伴い摩耗したりしたものを元々の状態に戻す」ための支払いであれば、基本的には修繕費に該当します。

  • 建物の外壁塗装
  • 機械装置や自動車の定期メンテナンス時の部品交換

このような支出は「資産を元の状態に戻すためのもの」と考えられます。従って、支出した時点で修繕費として費用処理をするのが妥当でしょう。

経理処理は以下のようになります。

 借方 金額貸方金額
修繕費(費用)30万円現預金(資産)30万円

経理プラス:どんなものが修繕費の勘定科目になる?修繕費の会計処理は?

資本的支出とは? 修繕費との違い

その一方、支出の目的が維持管理や原状回復に該当しないものについては、修繕費には該当せず「新しく固定資産に該当するものを購入した」と考えます。このときの支払いを“資本的支出”と呼んでいます。

資本的支出について、基本通達7-8-1は以下のように規定しています。

法人がその有する固定資産の修理、改良等のために支出した金額のうち当該固定資産の価値を高め、又はその耐久性を増すこととなると認められる部分に対応する金額が資本的支出となるのである

(引用)国税庁 第8節 資本的支出と修繕費(資本的支出の例示)7-8-1

例えば、先程は「外壁塗装の塗り直しや自動車などの定期メンテナンスは修繕費」と紹介しました。しかし、次のようなものだと、少し話が変わってきます。

  • 建物の外壁塗装に合わせて、耐久性が向上するような下地を敷設した
  • 機械装置の定期メンテナンス時に、性能を向上させるための新しい部品を取り付けた

これらは明らかに資産の価値を向上させる、または耐久性を高めるためのものと考えられます。従って、修繕費ではなく資本的支出と考えられるため、経理処理も変わってきます。

 借方 金額貸方金額
建物(資産)150万円現預金(資産)150万円
機械装置(資産)60万円現預金(資産)60万円

計上された固定資産は、減価償却の手続きを経て、耐用年数期間中の各年度に費用配分されます。

修繕費となるのか、資本的支出になるのかにより、費用の計上時期が大きく変わってきます。利益の数字にも影響しますので、税金計算にも影響が出ます。

企業としては、やはり「支払った時点で全額を修繕費にしたい」というのが一般的な考え方です。そういった事情もあり、修繕費と資本的支出の判断は大きな論点となっています。

経理プラス:修繕費と資本的支出はフローチャートですばやく判断しよう

経理プラス:修繕費と資本的支出の判断基準は?具体事例に基づき解説

交通費・経費精算システム「楽楽精算」 経理プラス メールマガジン登録

修繕費の判断基準

しかし、実際にはその支出が原状回復なのか、価値向上を伴うものなのか簡単には判断ができません。そこで、実務においては以下のような流れで判断が下されています。

  1. その一の修理、改良等のために要した費用の額が20万円に満たない場合
  2. その修理、改良等がおおむね3年以内の期間を周期として行われることが既往の実績その他の事情からみて明らかである場合
  3. ※1、2に該当した時点で、修繕費に該当します。ここで判断できない場合、3以降に進みます。

  4. 実態に即して判断
    仮に金額が大きくても、明らかに維持管理・原状回復に該当するものであれば、修繕費として処理します。しかし、ここでも判断ができない場合には次の段階に進みます。
  5. その金額が60万円に満たない場合
  6. その金額がその修理、改良等に係る固定資産の前期末における取得価額のおおむね10%相当額以下である場合
  7. ※4、5の基準に該当するものは、修繕費として処理をします。そして、ここまでの流れでまだ修繕費と資本的支出の判断ができない場合、以下のような特例があります。

  8. 一の修理、改良等のために要した費用の額のうちに資本的支出であるか修繕費であるかが明らかでない金額がある場合において、法人が、継続してその金額の30%相当額とその修理、改良等をした固定資産の前期末における取得価額の10%相当額とのいずれか少ない金額を修繕費とし、残額を資本的支出とする経理をしているときは、これを認める。

どうしてもわからないときには「定められた限度額までは修繕費として処理し、残額を資本的支出とする」という方法で良い、と認められています。

ここまででおわかりいただけたかと思いますが、修繕費と資本的支出の判断は本当に難しいです。ときには、修繕費と資本的支出が混在している取引もあります。そういった場合には、合理的基準に基づいて修繕費と資本的支出を区分することが必要です。

修繕の中には、金額が大きなものも含まれています。判断を誤ると、短期的に過剰な税負担を強いられたり、逆に税務調査で課税漏れを指摘されたりすることにもなりかねません。

判断が難しい取引があったときには、上記のフローチャートを用いて判断するようにしましょう。

(参考) 国税庁 第8節 資本的支出と修繕費

消耗品費と修繕費の違い

物品の購入を伴うメンテナンスの場合、それが消耗品費なのか修繕費なのかは判断に迷うところです。イメージとしては以下のようになります。

  • 機械の部品や備品を買ってきて自分で作業をした:消耗品費
  • 機械の部品や備品をメーカーの人に取り替えてもらった:修繕費

ただし、どちらにせよ費用科目であることに違いはありませんので、どちらで処理をしても大きな問題にはなりづらいとも考えられます。

もちろん、大前提として「固定資産に該当するような支出でないこと」といった条件を満たす必要があります。また、取引によって勘定科目がコロコロ変わっていたりすると、処理をしていく上でも面倒ですし、仮に税務調査があったときには不要な疑いを持たれてしまうことにもなりかねません。統一的な基準を用意しておくことを推奨します。

固定資産の特例

検討の結果、修繕費ではなく固定資産に該当すると判断された場合でも、その金額が小さい場合には以下のような特例を活用することも可能です。

  • 一括償却資産
  • 中小企業者等の少額減価償却資産の特例

これらの特例を適用することも合わせて検討してみてもよいでしょう。

経理プラス:少額減価償却資産の基本と応用 ―決算月の節税も!日常の経理処理も!

まとめ

修繕費とは通常の維持管理や原状回復のためにかかった費用のことを指します。仮に機能向上や耐用年数の延長効果がある場合には、修繕費ではなく固定資産に該当します。どちらに該当するかの判断は非常に難しく、実務ではフローチャートを用いた判断が行われます。消耗品費との混同も起こりやすいですが、統一した基準で処理を継続することが重要です。固定資産に該当する場合でも、少額であれば特例的な処理も認められるので、そちらの採用も検討すると良いでしょう。

「経理プラス」メルマガでは、定期的に記事のランキングやおすすめ情報などをお届けしています。読み逃しがないよう是非ご登録ください!

「経理プラス」メルマガ登録は・・・ こちらから

この記事は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。

WEB帳票発行システム「楽楽明細」

● 著者

高橋 昌也

高橋 昌也

高橋昌也税理士・FP事務所 税理士 1978年神奈川県生まれ。2006年税理士試験に合格し、翌年3月高橋昌也税理士事務所を開業。その後、ファイナンシャルプランナー資格取得、商工会議所認定ビジネス法務エキスパートの称号取得などを経て、現在に至る。