消費税の経過措置とは 今から経理担当者ができること

2019年10月に消費税率の引き上げが予定されています。それにあわせて、消費税については経過措置が設けられています。いわゆる「軽減税率」と混同されがちな本制度について、あらためて確認をしていきましょう。

 

消費税の経過措置とは

消費税の経過措置とは「税率変更の前後にまたがる取引についての取り扱い」をまとめたものです。
社会に流通する商品やサービスの中には、契約の締結と実際の引き渡し、消費の時期がずれるものがあり、例として以下のものが挙げられます。

  • 電車の回数券
  • 映画館や遊園地等の前売り券

など

2019年9月に映画の前売り券を買って10月に映画館に行った場合、消費税率は8%なのか10%なのかについて整理されているのが、消費税の経過措置です。

 

経過措置の具体例

大前提として、経過措置が適用されないものについては、2019年9月までに契約されていたとしても、実際の引き渡しや提供が10月以降であれば新税率(10%)が適用されます。

経過措置には次のものがあります。

  • 旅客運賃等
  • 先ほど紹介した電車の回数券や映画館の前売り券などが該当します。2019年9月までに購入したものについては、旧税率が適用されます。

  • 電気料金等
  • 電気や水道などのインフラ料金の中には、月初から月末で期間が区切られていないものもあります。2019年10月31日までに支払料金が確定するものについては、旧税率を適用します。

  • 請負工事等
  • こちらは、内容が細かいため後ほど詳述します。

  • 資産の貸付け
  • 指定日よりも前に締結された契約に基づいて、2019年10月1日より前から同日以後も貸付けをおこなっている場合、旧税率を適用します(一定の要件に該当するものに限られます)。

    その他、以下のものも該当します。

  • 指定役務の提供
  • 予約販売に係る書籍等
  • 特定新聞
  • 通信販売
  • 有料老人ホーム
  • 家電リサイクル法に規定する再商品化等

請負工事等の取り扱い

指定日(2019年3月31日)までに締結された請負契約(住宅の建設や機械装置の製造など)で、2019年10月1日以降に引き渡しが行われるものについては、旧税率が適用されます。

この制度については誤解される方も多いようですので、以下に例を示します。

  • 例1)
  • 2019年4月15日に住宅建設の請負契約を締結し、8月31日に引き渡し
    →引き渡しが8月中ですから、適用されるのは旧税率です。

  • 例2)
  • 2019年4月15日に住宅建設の請負契約を締結し、11月30日に引き渡し
    →契約の締結日が指定日よりも後なので、新税率が適用されます。

  • 例3)
  • 2019年3月15日に住宅建設の請負契約を締結し、11月30日に引き渡し
    →契約の締結日が指定日よりも早く、引き渡しが10月以降なので、経過措置が適用され旧税率となります。

一部の住宅メーカーなどが「2019年3月までに契約をしないと消費税が高くなります!」という売り文句で、駆け込み需要を狙い積極的な営業をかけていたのは、指定日までに契約をすれば旧税率が適用されるためだったのです。

 

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経理処理担当者は、全容を把握しなければならない!

経過措置でもう一つ重要なのは、適用は強制だということです。「経過措置に該当をしているけど新税率を適用すればいいや」とはならないのです。

この制度について「当社の事業には関係なさそうだな……」と思われた方もいるかもしれません。しかし、自社の事業(売上)が経過措置に該当していなくても、費用側には該当するものが混在している可能性があります。

  • 電気や水道等の料金
  • リース料の支払い

これらの取引は、多くの企業で発生しています。

他にも、例えば次のような取引には特に注意が必要でしょう。

定期購読やメンテナンスサービス

定期的に書籍が届くようなサービスは、1年払いや3年払いのものが珍しくありません。また定期保守契約の場合、契約締結の時期や実際に保守を受ける時期にズレが生じます。これらの取引については「いつからサービスの提供を受けているのか」「途中で契約内容を変更することはできるのか」などの条件を確認する必要があります。また、取引先から出てくる明細はしっかりと確認するようにしましょう。

未成工事支出金や建設仮勘定

建設工事に係る経過勘定である未成工事支出金や建設仮勘定については、仕入税額控除の時期に選択の余地が認められています。自社がどのような方法を採用しているのか、当該工事の完成引渡日はいつなのかを確認しなければなりません。

プラン変更による追加徴収や返金など

収益、費用はもちろん、設備投資等が絡む場合には、状況がより複雑になります。該当する可能性のある取引をしっかりと把握し、消費税の申告時に誤りがないように注意しましょう。

経過措置の全体像は非常に複雑です。国税庁の発表しているQ&Aなども確認しておきましょう。

(参考)国税庁
平成31年(2019年)10月1日以降に適用する 消費税率等に関する経過措置
平成 31 年(2019 年)10 月1日以後に行われる資産の譲渡等に適用される消費税率等に関する経過措置の取扱いQ&A 【基本的な考え方編】
平成 31 年(2019 年)10 月1日以後に行われる資産の譲渡等に適用される消費税率等に関する経過措置の取扱いQ&A 【具体的事例編】

 

まとめ

消費税率の引き上げにあわせて、契約と提供に期間のズレがある取引については経過措置が設けられており、経過措置に該当する取引については旧税率が適用されます。消費税の仕入税額控除を正しく計算するためには、自社の取引内で経過措置に該当するものが含まれていないかを確認をしなければならないのです。

 

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● 著者

高橋 昌也

高橋 昌也

高橋昌也税理士・FP事務所 税理士 1978年神奈川県生まれ。2006年税理士試験に合格し、翌年3月高橋昌也税理士事務所を開業。その後、ファイナンシャルプランナー資格取得、商工会議所認定ビジネス法務エキスパートの称号取得などを経て、現在に至る。