償却資産税の節税ポイント ―経理担当者が知っておきたいこと5つ―

償却資産税の節税ポイント ―経理担当者が知っておきたいこと5つ―

1月末日が期日の手続きは「給与支払報告書」、「法定調書合計表」、「償却資産税申告書」とあります。
いずれも「書類を機械的に作るだけの作業」と思われがちですが、いくつかのポイントを意識すれば節税に繋がります。

今回の記事では、経理担当者ならば知っておきたい、償却資産税節税のポイントについてお伝えします。

ポイント1:1月1日時点の資産内容を正確に把握しましょう!

償却資産税は「1月1日において事業の用に供することができる資産」が対象となります。裏返せば、「1月1日時点において所有していない資産」は申告する必要がありません。具体的には「前年12月31日までに売却や廃棄した資産」や「1月2日以降に取得した資産」は申告する必要がないということです。
経理担当者の人は、次の作業を毎年必ず行い、本来は申告不要だった資産を申告してしまわないようにしてください。

12月中に償却資産税申告書が届いた時点で行うこと

年内に売却した資産や、廃棄する予定の資産が全資産明細書に載っていないかチェックする

1月1日前後で行うこと

実際の資産内容を把握し、1月2日以降に購入したものが分かるようにしておく

ポイント2:会計帳簿に計上されていても「申告の対象外」となる資産があるので注意しましょう!

償却資産税の対象は「会計帳簿に計上されている固定資産」とおおよそ一致します。ただし、一部例外があり償却資産税の申告の対象とならない資産がありますので注意が必要です。詳しい内容は、下記の記事でも紹介しているので確認してみてください。

経理プラス:償却資産税のQ&A ―経理担当者ならマスターしたい、償却資産の対象と対象外の重要ポイント―

対象外:自動車税・軽自動車税が課税されているもの

普通自動車、軽自動車の他にも、排気量50cc以下のオートバイや小型フォークリフトなども償却資産税申告の対象外です。

対象外:無形固定資産

ソフトウェア、特許権、実用新案権など、法律上の権利や物理的実体のない資産は対象外です。

対象外:繰延資産

創立費、開業費の他にも、商店街のアーケード負担金など、税務上繰延資産として取り扱われるものは対象外です。

ポイント3:家屋に含まれるために償却資産税の申告が不要な資産があるので注意しましょう!

固定資産税というのは2種類ある

固定資産税は2種類あり、「償却資産税」の他にも「土地家屋に対する固定資産税」があります。
償却資産税は、言うまでもありませんが「申告」が必要です。反対に、土地家屋に対する固定資産税は、市区町村の方で資産を把握するため「申告不要」です。

家屋に含まれる設備について理解する

  • 償却資産税の対象として、申告が必要な設備

家屋と設備の所有者が同じ場合、独立した機器としての性格が強い設備、特定の生産又は業務の用に供される設備は償却資産として取り扱うため申告が必要です。

  • 土地家屋に対する固定資産税の対象として、申告不要の設備

家屋と設備の所有者が同じ場合、家屋と一体となって家屋の効用を高める設備については家屋に含まれるため、償却資産税については「申告不要」です。たとえば、火災報知設備、衛生設備(便器等)、エアコン以外の空調設備などは家屋に含まれるため申告が不要です。
40以上の設備に分けて取扱いが定められており、詳しくは東京都主税局ホームページでご確認ください。
東京都主税局ホームページ

ポイント4:償却資産の時価の合計が150万円未満の場合は、課税が免除されることを忘れないようにしましょう!

償却資産税は次の算式により計算されます。 税額 = 課税標準額 × 税率(1.4%)

課税標準額とは

買った金額(取得価格)から、耐用年数と経過年数をもとに年々減少する形で計算されます。価格等の算出の結果、課税標準額の合計が150万円未満の場合には償却資産税は課税されないことになっています。
この課税が免除される金額を免税点といいます。

【参考】
土地家屋に対する固定資産税についても免税点は設けられており、土地は30万円、建物は20万円となっています。

ポイント5:経理処理を変えるだけで償却資産税の節税に繋がります!(少額の減価償却資産の取り扱いを理解しましょう)

少額の減価償却資産は会計上の処理により償却資産税の対象となるか、ならないかが変わります。
詳しい内容は、下記よりご確認ください。
経理プラス:償却資産税のQ&A ―経理担当者ならマスターしたい、償却資産の対象と対象外の重要ポイント―

経理処理を変えるだけで償却資産税を節税する方法をお伝えします。

30万円未満でも、あえて3年償却を適用することで、償却資産税が節税?

実務の現場では、法人税を節税する観点から30万円未満の資産を取得した場合には、中小企業特例(30万円未満を全額経費計上する方法)を適用し全額経費計上することが多いです。
今回お伝えするテクニックは、10万円以上20万円未満の資産には中小企業特例を適用せず、あえて3年償却を適用するという方法です。

節税テクニック解説

中小企業特例を適用し全額経費として計上した場合には、その資産は償却資産税の対象となり、課税標準に対して1.4%の税額が売却ないし廃棄するまでかかり続けます。
今回の方法では、10万円以上20万円未満の資産をあえて3年償却とすることで償却資産税の申告の対象外にするという方法です。なおこの方法を採用するにあたっては、償却資産税は節税になりますが法人税にも影響が出るため、十分な検討を行うよう注意してください。

最後に

いかがでしたでしょうか。
償却資産税申告書については、「経理プラス:償却資産税申告書作成の業務概要 ―経理担当者なら知っておきたいこと―」、「経理プラス:償却資産税のQ&A ―経理担当者ならマスターしたい、償却資産の対象と対象外の重要ポイント―」に続き、今回は節税ポイントについてお伝えさせて頂きました。

償却資産税申告書は、毎年同じような作業に見えますが、経理担当者ならば知っておかなければならないポイントが多くあります。
いずれの記事も毎年の申告書の作成前の準備、提出前のチェックに活用して頂き、スムーズな作業と、償却資産税の節税にご活用ください!

この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。

著 者 公認会計士 服部 峻介

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北海道大学経済学部卒。有限責任監査法人トーマツ入社後、上場企業の監査、内部統制、IPO支援、株価算定、M&A、不正調査等を実施。経営コンサルティング会社役員を経て、Seven Rich会計事務所を開業。スタートアップ企業を中心に、3年で160社以上の新規クライアントに対して会社の設立から会計税務、総務、ファイナンス、IPOコンサルなど幅広い支援を行っている。

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