決算書作成に役立つ!残高試算表の作成方法とその他試算表との違い

決算書作成に役立つ!残高試算表の作成方法とその他試算表との違い

試算表とは

会社は、外部に正しい決算書を示さなければなりません。正しい決算書を作成するには、正しく作成された会計帳簿が必要になります。会計帳簿の作成や保管は青色申告の要件でもありますから、会計帳簿を正しく作成することは会社にとって非常に重要なことです。

試算表とは、会計帳簿が正しく記載できているかをチェックできるもので、決算書よりも前に作成する表です。試算表のうち代表的なものは残高試算表ですが、このほかにも合計試算表や合計残高試算表が存在します。今回は、残高試算表とその他試算表との違いや、残高試算表の作成方法などについて解説します。

残高試算表とは

残高試算表とは、総勘定元帳の帳簿残高が転記されたものです。フォーマットは後述する合計試算表と同じで、残高の記載欄は借方と貸方に分かれています。残高試算表では借方・貸方を合算した残高を記載しますので、借方か貸方のいずれか一方にしか数字は記入されません。そのため、残高がプラスかマイナスかを視覚的に捉えやすい仕様となっている点が残高試算表の魅力です。

また、残高がいくらであるか、ひと目で把握できるでしょう。そのため、月次業績の把握にもちょうどよく、3つの試算表の中でもっともよく活用されるものと言えます。

標準的な残高試算表は、勘定科目を挟んで、左側に借方残高、右側に貸方残高を記載するもの(下記1参照)です。ただし、会計ソフトによっては左側に勘定科目を記載し、右側に借方・貸方残高を記載するもの(下記2を参照)もあります。

<残高試算表1>
残高試算表
○○年○○月○○日

借方 勘定科目貸方
400現金
200繰越商品
借入金200
資本金500
売上300
200仕入
200支払利息
10001000

<残高試算表2>
残高試算表
○○年○○月○○日

勘定科目借方 貸方
現金400
繰越商品200
借入金200
資本金500
売上300
仕入200
支払利息200
100010001000

また、残高試算表は前期の数字とも比較しやすく、説明資料としても使い勝手がよいことが特長です。

残高試算表
○○年○○月○○日

第Ⅱ期第Ⅰ期
勘定科目借方 貸方借方 貸方
現金400400
繰越商品2000
借入金300350
資本金500500
売上20050
仕入200300
支払利息200200
10001000900900

さらに借方と貸方を合算した残高が記載されることから、たとえば貸借を入れ替えた修正仕訳が期中にあったとしても相殺済みの金額が反映されるため、無意味な数字が表示されることがありません。

残高試算表と合計試算表の違い

合計試算表とは、各勘定科目の貸借を差し引きせずに、借方、貸方それぞれの残高を表した表です。残高試算表と違って貸借それぞれに数字が記入されるため、ひと目で残高を把握することはできません。しかしながら、残高試算表では見つけにくい会計処理の間違いを発見できることもあります。たとえば借方にしか通常発生しない費用科目において、貸方に残高が発生していれば、すぐに誤処理を疑うことができるでしょう。

ただし修正仕訳(反対仕訳)を行うと、貸借の数字がかさ増ししていくため、試算表の合計値にはあまり意味がありません。たとえば前記の残高試算表では、現金の残高が400、支払利息の残高が200となっていました。しかし、期中に次の誤仕訳と修正仕訳が行われていた場合、合計試算表の数字は下記のようになります。

・誤仕訳(貸借が反対)

借方 金額貸方金額
現金40支払利息40

・修正仕訳

借方 金額貸方金額
支払利息40現金40

修正仕訳があると、次のような合計試算表に仕上がります。

合計試算表
○○年○○月○○日

借方 勘定科目貸方
440現金40
200繰越商品
借入金200
資本金500
売上300
200仕入
240支払利息40
10801080

誤処理と修正仕訳によって、残高合計が前期の残高試算表に比べて借方、貸方で80ずつ増えていますが、実際には何も増えていません。

実務では、このかさ増しを防止するために修正仕訳での反対仕訳は行わず、金額をマイナスで処理することが多いでしょう。内部確認用の資料にはよいのですが、外部に業績などを説明する資料としては、やはり残高試算表の方が使いやすい資料と言えます。

残高試算表と合計残高試算表の違い

合計残高試算表とは、残高試算表と合計試算表を合わせたものです。中央部分だけ見れば残高試算表ですが、その両隣に合計試算表の内容が書かれているところが特徴です。

合計残高試算表
○○年○○月○○日

借方 勘定科目貸方
残高合計合計残高
440400現金40
200200繰越商品
借入金200200
資本金500500
売上300300
200200仕入
240200支払利息40
1080100010001080

残高試算表の作成方法

見やすく使い勝手のよい残高試算表ですが、普段の作成にあたっては、会計ソフトにお任せの状態かもしれません。ここでは、残高試算表の作成方法を会計帳簿から順に解説します。

まず会計帳簿で必ず作成しなければならないものが、主要簿と呼ばれる仕訳帳と総勘定元帳です。日々の取引を仕訳帳に記録し、その仕訳を勘定科目ごとに総勘定元帳に転記します。

<仕訳帳>
取引の内容

  • 期首(1月1日)に前期繰越の現金400、資本金400を転記
  • 6月1日に、売上200を現金で受取り
日付摘要元丁(※)借方貸方
1月1日現金1400
資本金2400
6月1日現金1200
売上3200

(※)総勘定元帳のページ数(数値は適当に記載)

続いて、この内容を総勘定元帳に転記します。

<総勘定元帳>
総勘定元帳では、仕訳帳の内容を、勘定科目ごとに転記します。

現金
日付摘要仕丁(※)借方日付摘要仕丁(※)貸方
1月1日前期繰越1400
6月1日売上1200
翌期繰越600

(※)仕訳帳のページ数(数値は適当に記載)
資本金
日付摘要仕丁借方日付摘要仕丁貸方
1月1日前期繰越1200
翌期繰越200

売上
日付摘要仕丁借方日付摘要仕丁貸方
6月1日現金1200

<残高試算表>
総勘定元帳の残高に従って残高試算表を作成。残高試算表では、上部に資産科目、下部に損益科目を記載します。

残高試算表
XX年12月31日

借方 勘定科目貸方
600現金
資本金400
売上200
600600

精算表とは

精算表とは、決算整理前の試算表の数字に決算整理仕訳を加えて決算を行うものです。試算表ができたら、決算書(損益計算書、貸借対照表)を作る前に精算表を作成します。たとえば、さきほど合計試算表の説明で行った修正仕訳を決算整理仕訳として記載すると、次のような精算表ができ上がります。

勘定科目決算整理前試算表修正記入損益計算書貸借対照表
借方貸方借方貸方借方貸方借方貸方
現金44040400
支払利息2004040200

まとめ

残高試算表は残高を把握しやすく、業績の把握や説明資料としても利用できるとても便利な表です。本来は会計帳簿が正しいことを検証するのが試算表ですが、各試算表の違いを比べ、目的に合ったものを業務に活用しましょう。

この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。

著 者 石田 夏

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理士事務所、上場企業の経理職を経てフリーライターに転身。 簿記やファイナンシャルプランナー資格を活かして、税務・会計に関する企業向けコンテンツを中心に執筆中。 ポリシーは、「知りたいをわかりやすく」。