見えない固定資産?無形固定資産とは 概要と減価償却方法

無形固定資産とは

固定資産というと建物や機械、備品といった「形のあるもの」がイメージされやすい資産でしょう。しかしながら、会社の資産は形があるものに限られません。
例えば、特許権や商標権、製品のアイデアやブランド力は、商品の売上を長期間にわたって生み出してくれる会社の大切な資産です。このような資産は、建物などの有形固定資産と区別して「無形固定資産」と呼ばれ、いずれも固定資産として扱われます。なお、無形固定資産には特許権や商標権のほか、ソフトウエア、借地権、のれん、電話加入権などが該当します。

 

固定資産の減価償却とは

無形固定資産は有形固定資産と同様に、以下いずれをも満たすものについて「減価償却」を行います。

・その使用可能期間が1年以上のもの
・取得価額が10万円以上のもの

減価償却とはその取得費を一括で損金に算入せず、その耐用年数に応じて少しずつ経費に計上する会計処理のことです。経年による劣化に伴って資産価値を減少させるとともに、売上に対して費用を適正に配分することが目的です。

例えば、特許権の当期における減価償却限度額が5万円の場合、決算整理における仕訳は次のようになります。

 借方金額貸方金額
減価償却費5万円特許権※5万円

※固定資産の簿価を直接減価する方法と、「減価償却累計額」という勘定科目を使って間接的に減価する方法があります。

 

有形固定資産と無形固定資産の減価償却の違い

有形固定資産と無形固定資産では、減価償却の償却方法に違いがあります。まず、有形固定資産のうち建物や建物付属設備、構築物については定額法ですが、法人の場合、それ以外の資産については原則として定率法を使います。ただし、定率法を使う有形固定資産については、税務署への届け出によって定額法に変更することも可能です。

一方で無形固定資産の場合は、法人・個人ともに定額法しか選択できません。これを図にすると次のようになります。

法人/個人有形固定資産
(建物、建物附属設備、構築物)
有形固定資産
(左記以外)
無形固定資産
法人定額法定率法
(定額法を選択可)
定額法
個人定額法定額法
(定率法を選択可)
定額法

定額法とは、減価償却費が毎年定額で行われる償却方法です。ただし事業年度の途中から使用が開始されたものについては、月割計算します。
例えば3月決算法人において、無形固定資産であるソフトウエア(取得価額60万円、耐用年数5年)の使用を1月から開始した場合で考えてみましょう。まず、取得時の仕訳は次の通りです。

<取得時>

 借方金額貸方金額
ソフトウエア60万円現金預金など60万円
無形固定資産であるソフトウエア(取得価額60万円、耐用年数5年)の使用を1月から開始した場合
無形固定資産は定額法で減価償却しますので、当期の減価償却費は、

60万円÷5年×3ヶ月/12ヶ月=3万円

になります。そして、仕訳は下記のとおりです。

<決算整理>

 借方金額貸方金額
減価償却費3万円 ソフトウエア3万円
無形固定資産であるソフトウエア(取得価額60万円、耐用年数5年)の使用を1月から開始した場合
ただし、無形固定資産のうち鉱業権及び鉱業用減価償却資産については、「生産高比例法」という償却方法も認められます。

 

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ソフトウエアの減価償却に注意しよう

実務で扱うことが多い無形固定資産といえば、ソフトウエアです。
ソフトウエアには、無形固定資産になるものとそうでないものがあります。

自社で利用するソフトウエア

自社で使うためのソフトウエアは、以下いずれか一方が確実である場合のみ無形固定資産に計上します。

・将来の収益獲得
・費用削減

例えば、会計ソフトや業務管理のためのシステム既成品ソフトであれば、業務の効率化やコストカットになります。そのため、無形固定資産に計上するものと考えて構いません。上記のいずれも確実とはいえない場合は、その導入目的に合わせて費用処理することとなります。

販売するためのソフトウエア

販売目的で制作したソフトウエアについては、その製品マスター(複写して販売できる原本)の制作費を無形固定資産に計上します。ただし、研究開発費(最初に製品化された製品マスターの制作費など)に該当する金額は費用処理することも可能です。なお、製品マスターを複写して商品にしたものは棚卸資産になります。

ソフトウエアの耐用年数は3年or 5年

ソフトウエアの耐用年数には、以下の2種類があります。

・複写して販売するための原本又は研究開発用のもの…3年
・その他のもの…5年

例えば、自社利用のために購入した既製品のソフトウエアや外注して制作してもらったソフトウエアの耐用年数は、「その他のもの」で5年です。一方、販売目的で制作したソフトウエアで、複写して販売する原本ソフトは「複写して販売するための原本又は研究開発用のもの」に該当し、耐用年数は3年になります。

 

無形固定資産の耐用年数

無形固定資産の態様年数は、次の通りです。

種類細目耐用年数(年)
漁業権10
ダム使用権55
水利権20
特許権8
実用新案権5
意匠権7
商標権10
ソフトウエア複写して販売するための原本又は研究開発用のもの3
その他のもの5
育成者権種苗法第4条第2項に規定する品種10
その他8
営業権(のれん)5
専用側線利用権30
鉄道軌道連絡通行施設利用権30
電気ガス供給施設利用権15
水道施設利用権15
工業用水道施設利用権15
電気通信施設利用権20

「減価償却資産の耐用年数等に関する省令 別表第三 無形減価償却資産の耐用年数表」より

 

減価償却しない無形固定資産がある

無形固定資産の中でも減価償却しないものがあります。例えば、土地の上に存在する権利です。

・借地権:土地を借りる権利。普通借地権、定期借地権などがある
・地上権:建物の所有権等により、その土地を使用する権利
・地役権:他人の土地を自分のために利用する権利

有形固定資産の土地が減価しないことから、土地の上に存在する権利も減価償却はしません。その他、電話加入権(NTTの電話回線を引くための負担金)も減価償却は行いません。

 

まとめ

無形固定資産の減価償却について解説しました。減価償却は10万円以上の資産が対象ですが、実務では「中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」を適用することで、有形固定資産と同様に30万円を資産計上のラインに引き上げることが可能です。
また、ソフトウエアには「中小企業投資促進税制」「中小企業経営強化税制」で、特別償却の対象になるものもあります。これらの制度も合わせて確認しておきましょう。

 

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● 著者

石田 夏

石田 夏

税理士事務所、上場企業の経理職を経てフリーライターに転身。 簿記やファイナンシャルプランナー資格を活かして、 税務・会計に関する企業向けコンテンツを中心に執筆中。 ポリシーは、「知りたいをわかりやすく」。