生産性分析の基本計算方法や目安の値、分析方法を分かりやすく紹介
生産性分析は、企業が効率的に運営できているかを測る上で大切なものです。とはいえ、実際にどのようなものなのか、詳しくは理解できていないという方もいらっしゃるでしょう。そこで今回は、生産性分析の概要や指標についてご紹介するとともに、その計算方法や活用法などについても詳しく解説していきます。ぜひお役立てください。
生産性分析とは
はじめに、「生産性」の概要と必要性について理解していきましょう。
生産性について
生産性とは、労働者1人あたり、機械1台あたり、または、資金○○円あたり、どれくらいの成果を生み出すことができるかの値を指した言葉です。生産性には「労働生産性」「人時生産性」「資本生産性」「全要素生産性」などがあります。
生産性分析とは
できるだけ利益を出すには、1人、あるいは1台で大きな成果をあげることが望ましいとされます。そのため、どのくらいの生産性があるかを数値で算出し、ヒト(雇用)・モノ(設備)・カネ(資金)の経営資源と成果について詳細に分析することが大切になるのです。その詳細な分析のことを「生産性分析」といいます。
生産性が注目される背景
経済産業省によると、日本国内の64歳以下の生産年齢人口は、1990年頃の8,400万人ほどから年々減少傾向となっており、2050年には6,000万人ほどになる予想となっています。そもそも1970年代の第2次ベビーブーム以降は出生数が減り続けており、少子化には歯止めがかかっていません。
参照:経済産業省「2050年までの経済社会の構造変化と政策課題について」
生産年齢人口が減少するなかでも、企業が安定して利益を確保していくためには、生産性の向上が求められます。ヒト・モノ・カネを効率良く活用して生産性を高め、さらに付加価値のある経営が必要とされているのです。また、労働生産性を高めることで、会社の業績が向上し、社員の賃金にも反映されることにもつながれば、モチベーションアップが期待できます。同じ労力で効率的に利益を生むために、生産性分析は重要な指標となるのです。
生産性分析のメリット・方法
先ほども触れましたが、生産性分析を行うことによって、ヒト・モノ・カネの生産性効率の実態を数値で表すことができます。そこで算出された数値を前年と比較したり、同業他社と比較したりしながら、自社の経営状態を把握できる点が分析のメリットでしょう。また、分析をすることで、課題が明確化されるため、何をどのように改善すべきなのか、具体的な対策をできることも重要なポイントです。ここからは、生産性分析の計算方法や指標についてご紹介していきます。
生産性の指標
生産性分析には、「物的生産性」「付加価値生産性」という二つの指標が存在します。
それぞれの指標において、1人当たりの労働生産性、1時間当たりの労働生産性、資本生産性、全要素生産性という4項目で表すことができます。
物的生産性
生産性を算出する際に、対象となる「モノ」の重さや数など物量を基にするものです。対象物を金額ではなく量で判断することがポイントです。計算式では分子が生産量になります。
付加価値生産性
対象となる物量ではなく、新しく生み出された付加価値を基にするものです。付加価値は、原材料や外注加工費など外部要素のあるものを除きます。計算式では分子は付加価値額になります。
全要素生産性
全要素生産性とは、付加価値生産性の資本を含めて基にするものです。革新的な経営戦略、労働能力の伸長など企業の技術進歩を表します。労働生産性を向上するには、全要素生産性の向上が欠かせません。
計算方法
「物的生産性」「付加価値生産性」を算出するには、一般的に次の計算式を用います。ここでは例として、1人当たりの「労働生産性」と「資本生産性」を算出する計算式をご紹介します。
【物的生産性を算出する計算式】
資本生産性=生産量÷資本投入
【付加価値生産性を算出する計算式】
資本生産性=付加価値÷資本投入
生産性の目安
生産性分析のうち、労働生産性について中小企業庁が発表している2019年度(令和元年度)の日本国内の目安をご紹介します。主に中小企業における付加価値生産性の平均値となり、単位は万円/人です。
- サービス業(宿泊・飲食)・・・・・・327万円
- 小売業・・・・・・・548万円
- 卸売業・・・・・・951万円
- 運輸業・・・・・・663万円
- 製造業・・・・・・674万円
- 情報通信業・・・・・・851万円
各業種により、労働生産性はバラつきがあります。これらはあくまで平均値となりますので、参考資料として捉えておきましょう。
参照:中小企業庁「2020年版 中小企業白書」
生産性分析の活用方法
生産性分析をすることで、ヒト・モノ・カネの経営資産がそれぞれどのくらい効率化できているかを知ることができます。言い換えれば、効率化できていない部分を発見できるということです。
たとえば設備の場合、投資に見合うだけの生産性が確保できているかを、具体的に数値で把握できます。製造業であれば、単に設備の問題ではなく、ラインの作り方に問題が隠れていることもあるかもしれません。いずれも、生産性分析を年度や月ごとで比較しながら、確実に業績を向上させる戦略へとつなげることが可能です。
なお、生産性分析以外にも経営のために抑えておきたい指標があります。こちらの「財務分析をする上で押さえておくべき5つのポイントと重要指標」の記事で詳しくご紹介していますので、あわせてご覧ください。
まとめ
今回は、効率的な運営について把握できる生産性分析についてご紹介しました。設備や資金はもちろん、労働生産性も大切な部分です。労働人口が減少するなかで、企業の利益確保のためにどのような改善や施策が必要なのか、常にさまざまな方向性から分析して対策を実行できるようにしていきましょう。
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