製品保証引当金の種類とリコール時の経理処理

さまざまな種類が存在する引当金の中で、製品保証引当金という科目があるのをご存知でしょうか。
引当金という言葉は耳にする機会も多いかと思いますが、一部の製造業事業者を除いて、製品保証引当金に触れる機会は多くないかもしれません。

今回は、製品保証引当金を含む引当金についてご紹介するとともに、リコール時などに処理が必要となる製品保証引当金について見ていきたいと思います。ぜひ参考にしてみてください。

 

引当金とは何か

引当金とは、将来の資産の減少に備えて、その見積額のうち、当期の負担に属する金額を費用または損失(または収益控除)として計上するために設定される貸方のことをいいます。

引当金を設定する目的は2つあり、当期の収益に対応する費用を計上することで、適正な期間損益計算を行うため。もう一つは、当該企業の資産額の減少額を見積計上することによって、当該資産の決算日現在の貸借対照表価額を明らかにするためです。

 

引当金の種類

引当金は、資産の部に記載される評価制引当金と、負債の部に記載される負債制引当金の2つに分別されます。さらに負債制引当金は、債務性のある引当金と、債務性のない引当金の2つに分類されるのです。

評価制引当金とは、企業が所有している資産の期末の現在価値(貸借対照表価額)を示す目的で設定される貸方の項目であり、代表例としては貸倒引当金が挙げられます。

一方、負債制引当金とは、将来の支出額を意味するものであり、そのうち債務性のある引当金とは、企業が負っている条件付債務を示す目的で設定される貸方の科目です。代表例としては、退職給付引当金、製品保証引当金等が挙げられます。
また、債務性のない引当金とは、企業が所有している資産に係る将来の支出負担を示す目的で、主として会計的見地から設定される引当金です。代表例としては、修繕引当金、特別修繕引当金などが挙げられます。

 

製造・販売メーカーが無視できない製品保証引当金

製品保証引当金とは、販売した製品の保証書などで、一定期間無償サービスで修理する保証を行っている場合、期末に当期の売上高に係る将来の修理費を見積り、これを当期の費用として計上する時に生ずるものです。

また、製品保証引当金は、販売済の製品に重大な欠陥が見つかった場合に行う製品回収、いわゆるリコールの事態発生に備えて、費用計上するために使用されることがあります。
自社製品に問題が潜んでいると分かっていて販売するメーカーなど、まず存在しないとは思います。しかし、人が造り、人が利用する製品である以上、絶対に問題が発生しないと断言する事はできません。つまり、「想定していなかった問題が生ずる事態は一定確率、発生すると考えるべき」との考え方に基づく会計処理であるということです。

実際、大手の老舗メーカーは、規模の大小こそありますが、ほとんど漏れなくリコールを経験しています。自社製品に係る問題が生じたとき、消費者に損害・迷惑が及ぶ前に、また高い企業価値と信用・ブランドを維持するためにも、速やかな処置を行わなくてはなりません。実際、製品の瑕疵が疑われるとき、企業体力がある大手企業ほど迅速な対応を行う傾向にあります。

最近生じた大規模リコールといえば、三菱自動車によるリコールでしょうか。

2017年1月、三菱自動車工業は、「eKワゴン」「eKカスタム」「eKスペース」「eKスペースカスタム」の4車種、合計60万台を対象としたリコールを発表しました。エンジンのプログラムが不適切で、スターターモーターピニオンギアがエンジンのリングギアに強嵌合して始動できなくなるおそれと、触媒が劣化しても警告灯が点灯しないおそれがあることがその理由でした。
次いで2017年9月、三菱自動車工業は、「デリカ」などのエンジンコントロールユニットの電源制御等に使用されるリレーに不具合があるとして、合計4万台のリコールを実施しました。それでは次に、リコール時の経理処理についてみていきましょう。

 

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リコール時の経理処理

1.将来のリコール発生に備えた製品保証引当金計上

ご紹介した通り、製造業事業者にとって、リコールの事態はどんなに細心の注意を払っていても、一定確率において生じるという経験的事実があります。そのため、企業としては、将来のネガティブな不確定性は極力排除したいと考えるため、リコール発生を見越して予め引当金を計上しておきたいと考えるわけです。損失が実際に発生するまでは税務上の損金算入として認められませんが、一定の範囲内で引当金計上を行うことが認められているため、多くの製造業事業者は各々の算定根拠に基づく引当金を計上しています。

将来のリコール発生に備えた製品保証引当金計上の仕訳は、以下の通りです。

 借方金額貸方金額
製品保証引当金繰入10,000円製品保証引当金10,000円

2.リコール発生時の特別損失計上

リコールが発生した場合、製品保証引当金を取り崩し、特別損失を計上します。

リコール発生時の特別計上の仕訳は、以下の通りです。
なお、計上済の引当金を超える損失については、営業外損失や特別損失を計上するのが一般的です。

 借方金額貸方金額
製品保証引当金10,000円現金等10,000円
特別損失5,000円現金等5,000円

会計上は、一定の範囲内での引当金計上が認められていますが、税務的観点からは注意が必要となります。引当金計上時点では、当該損失の損金算入が認められないからです。
いざリコールが発生して、費用がかかったり、保証契約に基づいて修理代を負担したりしたときに、初めて税務上の損金算入が認められるのです。

また、引当金計上が認められる範囲についても注意が必要です。
「企業会計原則」では、引当金計上の要件として以下3点を挙げています。

  1. 将来の費用または損失(収益の控除を含む。以下同じ)が特定(費用・収益の特定性)しており、その発生原因が当期以前の事象にあること(発生原因の当期以前性)
  2. 費用または損失につき、その発生の可能性が高いこと(発生の確実性)
  3. 設定金額の見積もりを合理的に行い得ること(見積計算の合理性)

この要件を満たさない範囲の引当金計上は、不当な利益操作と判断されかねませんので、注意しましょう。

 

まとめ

ここまで、引当金の概要と製品保証引当金の意義、リコール時の経理処理について見てきましたが、いかがでしたでしょうか。
一定確率においてリコールが避けられない業種の事業者は、引当金の科目を有効に活用して、損益のぶれを抑えています。ぜひ参考にしてみてください。

 

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● 著者

田中 仁

田中 仁

大手総合商社にて10年間勤務し、新規事業開発を中心に資金調達、財務・会計等を担当。 東京のほか、アメリカのベンチャーキャピタルやイギリスの金融機関等にて勤務経験もあり。