会社法で求められる内部統制 内部統制システム整備の基本

会社法で求められる内部統制 内部統制システム整備の基本

内部統制への注目が年々高まっています。会社が規模を拡大しても適切に事業を行うためには、内部統制を整備・運用することが必要不可欠です。今回は内部統制の概要と、整備において大切なこと・基本的な考え方を解説します。

内部統制とは

内部統制とは、会社が事業活動を健全に遂行するための仕組みのことをいいます。
会社には、組織・規定があり、それぞれにたくさんのルールがあると思いますが、それらの仕組み全てのことをいいます。

難しい言葉を使うとわかりにくいので簡単な事例で見ていきましょう。
たとえば、営業担当者が取引先に対する接待で使った飲食費について経費精算する、という場面があったとします。

通常は、適切な支出であったかどうかを営業担当者の直属の上司が承認する、というプロセスがあるはずです。そうであれば、経理部は、上長の承認がある領収証のみを精算することとなり、不適切な支出に対する経費精算は行われません。

では、このルールがなかったら、どうなるでしょうか。
経理部は、営業担当者からの経費精算の依頼があれば何でも経費精算をすることとなってしまいます。経理部は営業担当者の行動を把握できないので、それが業務上の接待によるものなのか、それとも個人的な飲食なのかを判断することができません。こうなると「何でもあり」になってしまう可能性があります。

このように適切な業務遂行を担保するための仕組みが「内部統制」なのです。

会社法では内部統制にどのようなことが求められている?

内部統制は、会社が事業活動を健全に遂行するための仕組みのことを言うので、内部統制の整備や運用は会社が自身で行うものです。ただし、上場会社や大会社は内部統制に不備があったときに外部の利害関係者に与える影響が大きいため、金融商品取引法や会社法で、一定の内部統制を整備・運用することが義務づけられています。

会社法では、大会社に対して「取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他株式会社の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制の整備」を義務づけています。これは、内部統制システムの構築の基本方針を義務づけたものであるとされています。

内部統制システムを整えるために大切なこと(全般統制)

内部統制は適切な業務遂行を担保するための素晴らしい仕組みではありますが、大きな限界があります。それはどのような内部統制を整備・運用するかは経営者次第ということです。極端な話ですが、経営者が、「内部統制なんていいから、とにかく儲けろ!」という方針を採っていれば、当然、内部統制は機能しなくなるのです。

会社の持つべき正しい方向を示した経営理念、企業文化、遵法意識など(全般統制ともいいます)が土台となって、はじめて内部統制システムが有効に機能することになるのです。その土台の上に、販売業務、購買業務、経理業務といった業務レベルの内部統制を構築していかなければなりません。

業務レベルの内部統制システムの構築の基本

業務レベルの内部統制システムの基本は、1.分業、2.ダブルチェック、3.承認です。

1.分業

分業というのは、ある一つの業務について、その最初から最後までを一人の担当者が進めるのではなく、複数名の担当者が分担して行う、ということです。
たとえば、出納業務と記帳業務を経理担当者が一人で行っている場合は、自分で会社からお金を出し個人的に費消して、わからないように会計処理をする、ということが可能となってしまいます。そうではなく、出納業務と記帳業務の担当者が分かれていれば、個人的な支出をわからないように会計処理するということは不可能となり、それが内部けん制となります。

2.ダブルチェック

いくら知識や経験が豊富な担当者が業務を行ったとしても、ミスを完全に防ぐことはできません。何らかのミスが起こってしまうことは考えられます。このようなミスを減らすため、ある業務が行われた後に、その業務が正確に行われているかどうかを別の担当者がチェックする(ダブルチェックする)仕組みを設けることが考えられます。
たとえば、会計処理をした際の振替伝票について入力担当者以外の者が再度チェックをするという方法が挙げられます。

3.承認

承認とは、ある取引・業務について、その上長が承認する手続きのことです。
お客様に見積書を送付する場面で、知識や経験が十分でない担当者もいるでしょうから、誤った内容で見積書を送付してしまうことも考えられます。そうならないように、担当者が作成した見積書を上長が承認するという内部統制を設けていれば、お客様の送付前に上長が誤りに気付くことができます。
なお、上長はたくさんの業務を抱えていて都度承認などができないこともあるでしょう。その場合は、日次・週次・月次などのタイミングで、集計された情報をもとに承認する、といった方法も考えられます。

まとめ

内部統制とは何か、内部統制を構築する際の基本的な考え方について解説しました。説明したように内部統制の基本は、一つの業務について複数人が関わる(分業、ダブルチェックなど)ことですので、どうしても業務効率が悪くなる面もあります。業務効率のことも考えながら会社にあった内部統制を構築していきましょう。

この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。

著 者 公認会計士 松本 佳之

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税理士・公認会計士・行政書士 1980年兵庫県に生まれる。2001年公認会計士二次試験合格。2002年関西学院大学商学部卒業、朝日監査法人(現あずさ監査法人)試験合格、公認会計士登録。2007年税理士登録後独立し、北浜総合会計事務所を開設。監査法人勤務時代は企業公開部門に所属し、さまざまな実績を重ねる。

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