【保存用】固定資産と減価償却 必要な処理方法を総まとめ
固定資産に関する経理処理は、数ある取引の中でも特に難解なものです。今回は総論として、その処理方法についてあらためて学んでいくとともに、固定資産税についてもその概要を把握しましょう。
固定資産と減価償却の概要
固定資産とは「高額で長く使える仕事用の財産」をいいます。建物、機械装置、車両運搬具、器具備品といったものが該当します。また近年では無形固定資産と呼ばれる形のない資産(営業権・商標権・ソフトウェアなど)の重要度も高まっています。
実務的には、金額が10万円以上で一年以上の期間に渡り使用できるものが固定資産に該当します。なお、金額については税制上の特例(一括償却資産や中小事業者の少額減価償却資産)もあります。
固定資産は減価償却(げんかしょうきゃく)と呼ばれる手続きを通じて少しずつ費用処理されます。毎年の費用金額は定額法、定率法、生産高比例法といった方法を用いて計算されます。実務的には定額法と定率法を用いることがほとんどです。
耐用年数ですが、本来は各事業者がその資産の耐用年数を見積もって設定します。しかし、多くの企業では税務において定められている法定耐用年数を採用しています。
なお、土地も固定資産に該当しますが、土地は時間の経過に従って価値が減少しません。従って減価償却の考え方は採用せず、保有している限りは購入時の金額が決算書に表示され続けます(時価主義会計採用時を除く)。
固定資産と減価償却については、下記リンク先に詳しい解説が載っていますので、ぜひそちらをご参照ください。
経理プラス:減価償却を徹底解説!4つの計算方法や自己金融効果を理解しよう
固定資産税について
固定資産税は、読んで字のごとく「固定資産に課される税金」です。毎年1月1日現在、固定資産の所有者が負担をしなければなりません。
特徴としては「固定資産の保有」に対して課税されることです。従って、たとえば大赤字の企業であっても固定資産を大量に保有していれば、相当額の税金を課されることとなります。
市町村税に該当し、事業者の所得に依存しない地方自治体の税収源として非常に重要な税目です。
固定資産税は、次のような固定資産に課されます。
- 土地と建物
一般的に固定資産税というと、この不動産に課される税金のことを示します。 - 構築物、機械装置、一部の車両、工具器具備品等
あまり一般的ではありませんが、これらの固定資産にも税金が課されます。こちらについては「償却資産税(しょうきゃくしさんぜい)」という名称で呼ばれることが多いです。
なお、自動車税や軽自動車税が課される車両等については固定資産税の課税対象から外れます。
評価額と税額の計算について
それぞれ、以下のような方法で税額が計算されます。
土地や建物の固定資産税
資産の評価額は、基本的に行政側の調査に基づいて確定されます。固定資産税評価員と呼ばれる不動産鑑定士により決められます。一般的には「市場価格の70%を目処」に決められると言われています。
その評価額に1.4%の税率を乗じることで、固定資産税額が求められます。なお、固定資産税以外に都市計画税(税率0.3%)も同時に課されます。
上記のような計算の仕組みであることから、納税者側がなにかすることは基本的にありません。ただし、その評価額に不服がある場合には、審査請求をすることも可能です。
また居住用住宅をはじめ、一部の不動産については軽減措置が取られているものもあります。
(参考)東京都主税局 固定資産税・都市計画税(土地・家屋)
償却資産税
土地や建物と異なり、償却資産税については納税者側が必要な手続を踏む必要があります。
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- 所有者側の手続き
毎年1月1日に保有している償却資産の内容(取得年月、取得価額、耐用年数等)についてまとめた申告書を、1月31日までに市区町村へ提出しなければなりません。特に新規取得した償却資産や除却、売却した資産については注意が必要です。
各資産の評価額は、取得価額を基準に、年数を経るに従って減価残存率という指標に従ってその年の評価額が確定されます。
なお、課税標準額の合計が150万円未満の場合には、償却資産税は課されません。(参考)東京都主税局 減価残存率表
- 行政側の手続き
市区町村側は、提出された償却資産税の申告書を用いて課税台帳を更新します。その評価額に税率は1.4%を乗じることで、償却資産税額が確定します。6月上旬に一年分の償却資産税額を納税者に通知します。
なお、固定資産と同様、償却資産税についても不服がある場合には審査の申し出をすることができます。(参考)東京都主税局 固定資産課税台帳に登録された価格に関する審査の申出について
- 所有者側の手続き
固定資産税と償却資産税については、注意すべき点もあります。建物の内外装工事等を行った場合です。自己所有物件に追加工事をした場合には、その工事は固定資産税の課税対象です。一方、賃貸契約により借りている建物に工事を実施した場合、その工事は償却資産税(構築物)として課税されます。
この処理について混同してしまった結果、固定資産税と償却資産税が二重で課税されてしまっている事例が散見されるようです。特に償却資産税の申告状況について、誤りがないか(本来償却資産税の対象でないものを申告していないか)しっかりと確認をすることが大切です。
ここに記載したのは総体的なお話です。以下に東京都の固定資産税に関するページを記載しますので、そちらも参考にしてください。
(参考)東京都主税局 固定資産税(償却資産)
まとめ
固定資産とは「高額で長期間使用できるもの」のことです。償却方法を選び、耐用年数を見積もって少しずつ費用処理をしていき、法定耐用年数を使用することが多いです。
固定資産税は様々な固定資産に対して課される地方税のことで、土地や建物については評価額を役所が計算し、俗に償却資産税とよばれるものは取得価額と耐用年数に応じた減価残存率を使用して評価額が計算されます。処理ミスにより二重課税が行われていることもあるので注意が必要です。
この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。