融資を受けやすくなる?経営力向上計画認定による金融支援策
様々な特典が用意されている経営力向上計画。今回は認定を受けた事業者に対して用意されている金融支援策について確認をしていきます。
経営力向上計画認定で受けられる支援
計画の認定を受けた事業者には、次のような支援策が用意されています。
日本政策金融公庫による低利融資
経営力向上計画の認定を受けた事業者が、設備投資を行うために必要な資金について一般的なものよりも有利な条件で融資を受けることが可能です。
貸付金利 :設備資金については、基準利率より0.9%引き下げ
運転資金については基準利率が適用
貸付限度額:中小企業事業 7億2,000万円
そのうち運転資金は2億5,000万円
国民生活事業 7,200万円
そのうち運転資金は4,800万円
※中小企業事業と国民生活事業の違いは、事業規模によります。
貸付期間 :設備資金20年以内、長期運転資金7年以内(据置期間2年以内)
なお、沖縄県の事業者の方には沖縄振興開発金融公庫による低利融資制度が用意されています。
普段から金融機関との交渉を根強く続けているような企業でない限り、基準金利よりも0.9%低い利率で設備資金の融資を受けるというのは、中々難しいのではないかと思われます。大きな設備投資を検討するような場合、本制度を上手に活用することで当座の資金負担を軽減しながら、中長期的な戦略を練ることが可能となります。
中小企業信用保険法の特例
中小企業者が経営力向上計画の実施(新事業活動に限定される)にあたり、民間の金融機関から融資を受ける際、信用保証協会による信用保証を受ける際に通常の保険とは別枠で追加保証や保障枠拡大を受けることができます。より柔軟な保証制度の活用により、積極的な融資の活用が期待できます。
日本政策金融公庫によるスタンドバイ・クレジット
経営力向上計画の認定を受けた国内親会社の海外支店や海外の子会社が、日本政策金融公庫と提携する海外金融機関から現地通貨建ての融資を受ける際に、日本政策金融公庫から債務保証を受けることができます。
その他制度
商工中金による低利融資、中小企業投資育成株式会社法の特例、中小企業基盤整備機構による債務保証、食品流通構造改善促進機構による債務保証など、企業の規模や業種に応じた金融支援策が受けられます。
一般的な中小企業では適用が難しい制度もありますが、日本政策金融公庫による低利融資や、信用保証の追加・拡大については多くの企業にとって活用の余地がある制度です。
そもそも経営力向上計画自体が、どちらかというと「これから設備投資を行う予定の企業にとって有用な制度」として用意されているものです。そのため、設備投資に対して税制支援から金融支援まで幅広くフォローされています。今後大きな設備投資を予定している企業にとっては、経営力向上計画の認定を受けることで「税制優遇」と「金融支援」という2つの側面から特典を受けることが可能となります。
※経営力向上計画の認定審査と融資、保証の審査は別に行われます。計画の認定を受けられても、融資や保証が受けられない場合もあります。
適用を受けるためには?
金融支援策の適用を受けるためには、経営力向上計画の策定を進める時点で関係機関に相談をする必要があります。
問い合わせ先は、
- 株式会社日本政策金融公庫
- 株式会社沖縄振興開発金融公庫
- 各都道府県の信用保証協会等
- その他制度に応じた問い合わせ先
実際に融資や保証料を通じて支援を実施する機関に対して、あらかじめ連絡をしておきましょう。実際の問い合わせ先については、中小企業庁の経営強化法に関するサイトに掲載されている「税制措置・金融支援活用の手引き」の中に電話番号が掲載されています。
経営力向上計画の認定は、計画書の提出から早くて二週間、時間がかかる場合には一ヶ月以上時間を要します。特に年度末等には提出が集中する傾向にあるようです。
あまりにもギリギリになってから計画書を所管省庁に提出してしまうと、実際に資金が必要となるタイミング(設備投資の決済など)に支援が間に合わなくなってしまう可能性もあります。経営力向上計画の策定に関しては、設備投資等の計画が立ち上がった時点で速やかに着手し、その上で関係機関への相談を速やかに行うことで金融支援を確実に受けられるように作業を進めることが大切です。
もし自社だけで計画策定および認定、関係機関への相談が難しい場合には、経営革新等支援機関への相談も検討した方が良いでしょう。
まとめ
経営力向上計画の認定を受けることで、様々な金融支援策を受けることが可能となります。特に設備投資資金については、一般的な金利よりも低利での融資を受けられるなど、有利な制度が揃っています。設備投資実施時にはまず経営力向上計画の策定と認定について検討をすることで、中長期的な経営戦略を練ることが可能です。
適用を受けるためには、計画策定段階で関係機関に相談が必要です。策定が遅れると必要な時期に支援が受けられない恐れもあるので、早めに着手しましょう。
この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。