固定資産税の軽減措置が受けられる?ヒントは「経営力向上計画」

固定資産税の軽減措置が受けられる?ヒントは「経営力向上計画」

経営力向上計画とは、中小企業等経営強化法に基づくもので、これを策定し、認定を受けておけば、税制や金融面で軽減措置や支援などの優遇を受けることができる可能性があります。
今回は、税制面での優遇措置の一つである固定資産税の軽減措置の特例について解説します。

固定資産税の軽減措置の特例とは

固定資産税とは、毎年1月1日時点で一定の固定資産(不動産や一定の償却資産)を所有している場合に、その対象となる固定資産の評価額に応じて、所有者が支払わなければならない税金のことをいいます。固定資産税の中でも、不動産以外に課せられる固定資産税のことを償却資産税ともいいます。

償却資産を所有している場合は、毎年1月末日までに償却資産税の申告をしなければなりません。この申告に基づいて、評価された金額(課税標準)に対して1.4%の税率で課税されることとなります。

ただし、償却資産の場合は、評価された金額(課税標準)の合計が免税点である150万円に満たない場合はかかりません。この150万円というのは免税点であって、固定資産税から控除できる金額ではありません。そのため、たとえば、課税標準が300万円の資産を所有していれば、固定資産税の軽減処置を受けたとしても、その1.4%である42,000円が償却資産税として課税されることとなります。

この固定資産税について、経営力向上計画を作成し主務大臣の認定を受けると、固定資産税の軽減対象となる一定の設備を取得したときは、その取得した設備について3年間固定資産税が軽減されるという特例措置が設けられています。
軽減される割合は1/2となっており、適用期間は平成29年4月1日から平成31年3月31日までとなっています。

固定資産税の軽減の対象となる設備は、機械装置、測定工具及び検査工具、器具・備品・建物付属設備で、設備旧モデルと比べて性能(生産効率、エネルギー効率、精度など)が年平均1%以上向上しているという性能要件の他、設備の種類毎に販売開始期間、最低価額などの要件が設けられています。

また、軽減が適用できるのは租税特別措置法の中小企業者等(資本金の額または出資金の額が1億円以下の法人等)です。なお、一部の設備については、地域によって適用できる業種に制限が設けられています。

この固定資産税の軽減措置の適用を受けるためには、原則として、対象となる固定資産を取得する前に経営力向上計画の認定を受けていなければなりません。固定資産を取得した後に、対象資産と気づいて慌てて経営力向上計画の認定を受けたとしても固定資産税の軽減処置を適用することができませんので注意してください。

経営力向上計画の作成方法

経営力向上計画とは、自社の経営力を向上させるために、人材育成やコスト管理といったマネジメントの向上、設備投資などを行う計画のことをいいます。

定められた様式で作成し、主務大臣の認定を受けると、一部課税の軽減などの税制上の特典や、低利融資などの資金繰り支援といった優遇税制の適用、金融支援など様々な特典を受けることができます。固定資産税の軽減処置も、この経営力向上計画の特典の代表的な一つです。

計画には、企業の概要や現状認識、経営力向上の目標や経営力向上による経営の向上の程度を示す指標、経営力向上の内容などを記載します。とても難しそうなイメージですが、実際には用紙2枚に簡単な計画等を記載すれば済みますので、それほど難しいものではありません。自分で作成するのが難しいときは認定支援機関(商工会議所や士業、金融機関などで認定されている者)のサポートを受けることもできます。

固定資産税軽減措置の特例を受けるためには

まず、対象となる固定資産が固定資産税の軽減処置を受ける要件を満たしていることについて工業会等による証明書を取得します。そして、その設備を利用することによって、生産性が向上するという経営力向上計画を策定し、担当省庁に申請し、経営力向上計画の認定を受けます。その後に、対象となる固定資産を取得することとなります。

税務申告にあたって、納税書類に、工業会等による証明書や計画申請書、計画認定書などを添付することによって、固定資産税の軽減措置の特例を受けることができます。

経営力向上計画を申請する際の申請先省庁は、事業分野別に異なっていますので注意してください。「日本標準産業分類」を見て、該当する事業分野の中分野・再分類項目名を確認した上で、分類名を計画に記載し、それに応じた担当省庁に申請します。複数分野ある場合は、経営力を向上させたい事業分野を記載して、その担当省庁に提出することとなります。

なお、経営力向上計画の申請から認定までは30日程度(標準処理期間)かかります。十分余裕を持って申請を行うようにしましょう。

まとめ

経営力向上計画と固定資産税の軽減措置の特例について解説しました。繰り返しになりますが、特例を受ける前に経営力向上計画を策定し、認定を受けておくことが必要です。

固定資産を取得した後に、固定資産税の軽減措置の特例を受けられる対象資産とわかって後悔することもよくあります。

そして、経営力向上計画は、利用すれば、税金や金融面において軽減措置や支援などの優遇を受けることができるものですが、それとともに自社の現状を分析し、生産性を向上させるための取り組みを考えることができるよい機会にもなります。
特に優遇措置を利用する場面でなくても、自社の経営力向上計画を作成し、いつでも申請できるような準備をしておくことも考えられます。

この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。

著 者 公認会計士 松本 佳之

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税理士・公認会計士・行政書士 1980年兵庫県に生まれる。2001年公認会計士二次試験合格。2002年関西学院大学商学部卒業、朝日監査法人(現あずさ監査法人)試験合格、公認会計士登録。2007年税理士登録後独立し、北浜総合会計事務所を開設。監査法人勤務時代は企業公開部門に所属し、さまざまな実績を重ねる。

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