勘定科目内訳明細書の全16項目の書き方と注意点、簡素化について解説

勘定科目内訳明細書の全16項目の書き方と注意点、簡素化について解説

勘定科目内訳明細書ってなに?

勘定科目内訳明細書を提出する目的とは

会社は原則1年に1回の決算を行い、法人税の確定申告を行うことが必要です。その確定申告提出資料には、勘定科目内訳明細書が含まれています。
税務署は勘定科目内訳明細書を元に、取引の実態性を把握したり、税務調査先の選定を行ったりしていると言われています。
また、銀行や投資家から資金を調達する際、調達元が事業内容を把握するために用いられることもあります。

提出期限はいつ?

原則、期末から2か月以内が提出期限です。ただし当該日が休日祝日にあたる場合は、翌平日が提出期限になります。
なお、前述の通り勘定科目内訳明細書は、法人税法に基づいて提出が求められている書類です。しかし実は、法人税法には「申告期限の延長の特例」制度があります。
これは、当該届け出を事前に税務署に行っておくことにより、提出期限を1カ月延長することができるというもの。1枚の書類を提出するだけで提出期限が伸びるため、出しておくと良いでしょう。

勘定科目内訳明細書の簡素化

平成30年度の税制改正により、勘定科目内訳明細書が簡素化されました。これは2019年4月1日以降に終了する年度以降が対象となり、具体的な内容は下記4点です。

  1. 一定勘定科目の記載すべき件数が100件を超える場合、上位100件のみを記載する方法と、記載単位を支店ごと・事業所ごとに合算する方法の任意選択を適用
  2. 貸付金および受取利息の内訳書の「貸付理由」欄、また借入金と支払利子の内訳書の「借入理由」欄等の削除
  3. 仮払金(前渡金)と仮受金(前受金・預り金)の内訳書について、「取引の内容」欄を「摘要」欄に変更して自由記載欄化
  4. 雑益、雑損失等の内訳書における固定資産売却損益の記載を不要とする

勘定科目内訳明細書の項目ごと書き方や注意点

1.預貯金等の内訳書

金融機関名金融機関名、支店名を記載します
種類口座種別を記載します
口座番号口座番号を記載します
期末現在高期末残高を記載します
摘要預貯金の口座名義が法人名義でない場合、名義人名を記載。また、外貨建の口座の場合、外貨換算前の金額を記載します

なお、国税庁の記載要領には現金残高を入れる定めはありません。ただし、現金残高を入れないと貸借対照表上の現金預金と一致しないこととなります。その結果、記載後のチェックが煩雑になるので、現金残高も入れておく方が良いでしょう。

2.受取手形の内訳書

振出人債権の相手先を記載します
振出年月日振出日を記載します
支払期日支払期日を記載します
支払銀行支払銀行を記載します
金額債権金額を記載します
割引銀行及名及び支店名等割引銀行名または裏書譲渡先を記載します
摘要融通手形の場合は各別に記録し、為替手形の場合は引受人の氏名及び住所を記載。差出人と債務者とが異なる場合には、その債務者の氏名及び住所を記載します

なお、受取手形の内訳書については、同一取引先で金額合計が100万円以上のものを個別記載してください。その他の取引先分については、まとめて“その他”として記載して良いことになっています。ただし、まとめて記載した手形に割引手形が含まれている場合、当該手形のみ個別記載をすることが求められていることに注意が必要です。

3.売掛金の内訳書

科目売掛金か、未収入金のいずれかを記載します
相手先相手先の名称及び住所を記載します
期末現在高期末時点の債権残高を記載します
摘要対象勘定科目が未収入金の場合、取引内容を記載します
(例:法人税還付金額)

通常、相手先の情報については契約書や請求書から転記します。しかし、稀に、決算時に情報が揃っていないケースが見受けられます(契約書がなく、請求書にも住所記載がない場合等)。記載がないからと言って、罰則が発生するわけではありません。しかし綺麗に書類を整えるためには、必要情報を決算前に整理しておきましょう。

なお、売掛金(未収入金)の内訳書については、同一取引先で金額合計が50万円以上のものを5件まで個別記載。その他の取引先分については、まとめて“その他”として記載して良いことになっています。

4.仮払金、貸付金及び受取利息の内訳書

仮払金(前渡金)と貸付金及び受取利息について、それぞれの内訳書を詳しく見ていきます。

<仮払金(前渡金)の内訳書>

科目仮払金か、前渡金のいずれかを記載します
相手先相手先の名称及び住所を記載します。
また、法人・代表者との関係性を記載します
期末現在高期末時点の残高を記載します
摘要取引内容を記載します
(例:仮払税金)

仮払金(前渡金)の内訳書については、同一取引先で金額合計が50万円以上のものを5件まで個別記載。その他の取引先分については、まとめて“その他”として記載して構いません。ただし、相手先が自社役員や株主、関係会社の場合には、50万円以下でも個別記載が必要なので注意しましょう。

<貸付金及び受取利息の内訳書>

貸付先名称、住所、法人・代表者との関係性を記載します
期末現在高期末時点の残高を記載します
期中の受取利息額決算期に発生した利息額を記載します
利率契約上の利息利率を記載します
担保の内容担保がある場合、物件種類、数量、所在地等を記載します

貸付金及び受取利息の内訳書については、同一取引先で金額合計が50万円以上のものを個別記載。その他の取引先分については、仮払金(前渡金)と同様にまとめて“その他”と記載して問題ありません。ただし、相手先が自社役員や株主、関係会社の場合、また期末残高がなくとも期中受取利息が3万円を超えるものは、個別記載が必要なので注意しましょう。

また、同一貸付先に異なる利率で貸付を複数件行っている場合、期末にもっとも近いタイミングで受け取った利息で用いた利率を記載します。このことも、実務上で大切なポイントです。

5.棚卸資産の内訳書

科目商品または製品、原材料、仕掛品、半製品、貯蔵品等、決算書で用いている科目を記載します
品目具体的な内容を記載します
例:靴
数量数量を記載します
単価単価を記載します
摘要評価替えを行った場合、評価増減額を記載します
例:評価損50,000円

なお、業種によっては、品目を何段階にも細分化できる余地があるかもしれません。しかしキリがない部分のため、一定のグルーピングを行って、項目が多くなりすぎないようにしましょう。

6.有価証券の内訳書

区分種類銘柄売買目的有価証券の場合「売買」、満期保有目的等有価証券の場合「満期」、その他有価証券の場合「その他」と記載します
期末現在高売買目的有価証券の場合、上段に時価評価前の帳簿価額を記載し、下段に時価評価後の金額を記載します。
満期保有目的等有価証券、その他有価証券の場合、下段に帳簿価額を記載します。
最下部の合計欄は下段の合計金額を記載します。
期中増(減)の明細異動年月日、異動事由、数量、金額、売却(買入)先の名称、住所を記載します。
異動事由は、売却、買入、評価替など実態に即した形で記載します
摘要有価証券が関係会社のものに該当する場合、その旨を記載します

期中に売却などが行われ、たとえ期末残高が0の場合でも記載が必要です。また、有価証券を証券会社経由で取得・売却した場合には、期中増(減)の明細・売却(買入)先の名称及び住所に、当該証券会社の情報を記載することを注意が必要です。

7.固定資産(土地と土地の上に存する権利、建物に限る。)の内訳書

種類・構造/用途/面積/物件の所在地各項目内容を記載します
期末現在高期末時点の残高を記載します
期中取得(処分)の明細各項目内容を記載します。
異動事由には、取得や処分、売却と記載します

期中に売却などが行われ、期末残高が0の場合でも記載が必要です。

8.支払手形の内訳書

支払先各項目内容を記載します
提出年月日
支払期日
期末時点の残高を記載します
支払銀行名各項目内容を記載します。
異動事由には、取得や処分、売却と記載します
金額支払先を記載します
摘要提出日と支払期日を記載します

一つの取引先に対する支払手形の総額が100万円以上のものは各別に記入し、その他のものは一括して記入して良いことになっています。また、100万円以上のものが5口未満の際は、期末残高が多額のものから5口程度記載してください。
なお、融通手形については各別に記入し、摘要欄にその旨を記載するようにしましょう。

9.買掛金の内訳書

科目買掛金か、未払金、未払費用のいずれかを記載します
相手先名称相手先の名称を記載します
相手先所在地相手先の所在地を記載します
期末現在高決算時の残高を記載します
摘要未払金の場合、取引内容を記載します
未払配当金決算時に残高がある場合、記載します
未払役員賞与決算時に残高がある場合、記載します

未払役員賞与はその名の通り、役員に対する賞与に該当するものを対象とし、使用人兼務役員の使用人賞与に関しては対象となりません。また、一つの取引先に対する買掛金等の残高が50万円以上のものについては、各別に記入。その他のものは、一括して記入して構いません。
また、50万円以上のものが5口未満の際は、期末残高が多額のものから5口程度記載するようにしてください。

10.仮受金の内訳書-源泉所得税預り金の内訳書

仮受金(前受金・預り金)と源泉所得税預り金について、それぞれの内訳書についてご説明します。

<仮受金(前受金・預り金)の内訳書>

科目仮受金か、前受金、預り金のいずれかを記載します
相手先名称相手先の名称及び住所を記載します。
また、法人・代表者との関係性を記載します
期末現在高決算時時点の残高を記載します
取引の内容取引内容を記載します

相手先別の期末残高が50万円以上のものは、各別に記載することとなっています。ただし役員や株主、関係会社については、金額に関わらず各別の記載が必要です。
また、社内預金がある場合には「相手先」欄に「社内預金」、そして「期末現在高」欄に期末現在高の合計額を記載。また、「取引の内容」欄には期中の支払い利子額(未払利子を含む)をそれぞれ記載します。

<源泉所得税預り金の内訳書>

支払年月元取引の支払年月を記載します
所得の種類下記のとおり記載します
給与所得→給、退職所得→退
報酬・料金等→報、配当所得→配
非居住者等所得→非
期末現在高決算時時点の残高を記載します

11.借入金及び支払利子の内訳書

借入先借入先を記載します
法人・代表者との関係法人・代表者との関係性を記載します
所在地借入先の所在地を記載します
期末現在高決算時の残高を記載します
期中の支払利子額期中の借入にかかる支払利子額合計を記載します
利率借入の利率を記載します
借入理由借入を行った理由を記載します
担保の内容担保がある場合、内容を記載します

相手先別期末現在が50万円以上のものについては各別に記入し、その他は一括して記入します。ただし役員、株主及び関係会社については、期末現在高が50万円未満であっても各別に記入する点に注意してください。

また、借入金の期末残高がない場合でも、期中の支払利子額(未払利子含む)が3万円以上あるものについては各別に記入。さらに、利率欄において同一の借入先に対する利率が2以上ある場合には、期末にもっとも近い時期における支払利子の税率を記入します。

12.土地の売上高等の内訳書

区分売上、または仲介手数料を記載します
商品の所在地/地目/総面積所在地、地目、総面積を記載します
売上(仲介)年月売上年月を記載します
売上(仲介)先氏名/住所売上先の氏名、住所を記載します
売上(仲介)面積売上対象となった面積を記載します
売上金額(仲介手数料)売上金額を記載します
売上商品の取得年売上対象の土地の取得年を記載します

棚卸資産として保有している土地(土地の上に存する権利を含む)を売却した、または土地等を仲介した場合には、取引金額の多額のものから各別に記入します。また、土地付建物を売却または仲介し、土地と建物の価額を区分経理していないときは、「売上金額(仲介手数料)」欄の上段にその価額の総額を記載してください。

会社によっては、土地の売却が頻繁に起こることもあるでしょう。その場合、土地の売上高等の内訳書については、3枚程度にまとめることが推奨されています。

13.売上高等の事業所別内訳書

事業所の名称、所在地事業所の名称、所在地を記載します
責任者氏名、代表者との関係事業所責任者の氏名、代表者との関係を記載します
事業等の内容事業所で営んでいる事業内容を記載します
売上高事業所の売上高を記載します
期末棚卸高事業所の期末棚卸資産の金額を記載します
期末従業員数事業所の期末従業員数を記載します
使用建物の総面積事業所建物の総面積を記載します
源泉所得税納付署事業所における源泉所得税納付税務署を記載します
摘要期中に開設または廃止した事業所がある場合、その旨、ならびに開設・廃止の年月日を記載します

14.役員報酬手当等及び人件費の内訳書

役員報酬手当等、また人件費の内訳書についてそれぞれご説明します。

<役員報酬手当等の内訳書>

役職名、担当業務役員の役職名、主な担当業務を記載します
氏名、代表者との関係、住所役員の氏名、代表者との関係、住所を記載します
常勤・非常勤の別常勤役員か否かを記載します
役員給与役員給与を記載します

役員報酬の記載欄は、下記のように内訳が分けられています。

項目名書き方
使用人職務分使用人兼務役員の場合、使用人職務分に対する給与を記載します
定期同額給与毎月定額で役員報酬を支給している場合、総額を記載します
事前確定届出給与事前確定届出制度を用いて、役員報酬を支給している場合、総額を記載します
利益連動給与利益連動給与制度を用いて、役員報酬を支給している場合、総額を記載します
その他上記に挙げる方法以外の手段で、役員報酬を支給している場合、総額を記載します
退職給与退職給与の額を記載します

<人件費の内訳書>

役員報酬手当役員報酬総額を記載します
従業員給料手当、賃金手当販売費及び一般管理費に計上がある給料や賞与等を給料手当に、売上原価に計上がある給料や賞与等を賃金手当に記載します

15.地代家賃等の内訳書-工業所有権等の使用料の内訳書

地代家賃、権利金等の期中支払、そして工業所有権等の使用料について、それぞれ内訳書についてご説明します。

<地代家賃の内訳書>

地代・家賃の区分地代、または家賃と記載します
借地(借家)物件の用途、所在地使用物件の用途、所在地を記載します
貸主の名称、所在地貸主の名称、所在地を記載します
支払対象期間当該決算期間における支払対象期間を記載します
支払賃借料支払賃借料を記載します
摘要補足情報があれば記載します

<権利金等の期中支払の内訳書>

支払先の名称、所在地支払先の名称、所在地を記載します
支払年月日支払年月日を記載します
支払金額支払金額を記載します
権利金等の内容権利金等の具体的内容を記載します
摘要補足情報があれば記載します

権利金等を数回に分けて支払っている場合は、支払年月日ごとに記載します。

<工業所有権等の使用料の内訳書>

名称特許権、実用新案権、意匠権及び商標権等の名称を記載します
支払先の名称、所在地支払先の名称、所在地を記載します
契約期間契約期間を記載します
支払対象期間、支払金額支払対象期間、支払金額を記載します
摘要補足情報があれば記載します

16.雑益、雑損失等の内訳書

科目雑収入、雑益(損失)、固定資産売却益(損)、税金の還付金、貸倒損失等を記載します
取引の内容取引の内容を記載します
相手先取引の相手先を記載します
所在地取引の相手先の所在地を記載します
金額金額を記載します

科目別、かつ相手先別の金額が10万円以上のものについて記入することとされています。ただし一方、税金の還付金については金額を問わず記載が必要です。

勘定科目内訳明細書の内容にミスがあったらどうなる?

何らかの理由で勘定科目内訳明細書にミスが生じた場合、どうなるのでしょうか。結論から言うと、決算書と法人税申告書に誤りがなければ、大筋で問題ありません。

前述の通り、勘定科目内訳明細書は法人税申告に伴って提出を求められます。法人税申告の目的は適正な納税報告のため、納税報告に必要な決算書と法人税申告書に誤りがなければお咎めはないでしょう。単純に、決算書から勘定科目内訳明細書への転記ミスということになります。
一方、勘定科目内訳明細書に記載する前段階の決算書にミスがあれば、そもそも会計数値が誤っていることになるので問題です。決算書にミスが見つかり、引いては納税額が誤っていた場合、税務調査で指摘される可能性は大きいでしょう。

また、冒頭でご説明した通り、勘定科目内訳明細書は銀行融資など資金調達でも用いられます。金融機関や投資家は、この勘定科目内訳明細書を元に意思決定することも少なくありません。ここでミスがあれば、融資や投資金額に影響を与える可能性もありますので注意してください。

まとめ

勘定科目内訳明細書は記載項目が多岐にわたり、ボリュームがあると感じる方が多いかもしれません。しかし各記載項目を事前に理解しておけば、決算時に慌てずに済むはずです。必要情報は期中から証憑と合わせ、まとめておくようにしましょう。
また、平成30年度に税制改正が行われたように、書式や細かい部分は、今後も改正が生じる可能性があります。国税庁のホームページを適宜確認すると共に、顧問税理士などを活用して最新情報をインプットするよう心がけてください。

この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。

著 者 篠原 泰之

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1990年生まれ、東京都出身。スタートアップで経営管理業務に従事する傍ら、管理部門構築支援や簿記講師、執筆活動など、財務経理を軸に幅広く活動している。日商簿記1級保有。