簡易課税とは?事業区分や申請方法についてわかりやすく解説

簡易課税とは―事業区分を正しく知ろう!

消費税の簡易課税とは

消費税として税務署に納める金額は、次の計算方法で計算します(原則課税)。

課税売上に関して受け取った消費税額-課税仕入に関して支払った消費税額=納めるべき消費税額

たとえば、売上よりも経費が多い場合や輸出取引を行っている場合などで、課税仕入に関して支払った消費税額が課税売上に関して受け取った消費税額より多くなるときは、消費税は還付されます。
原則はこの方法ですが、取引ごとに消費税の課税・非課税等を判断して集計していくことは煩雑であるため、それに配慮して、一定の事業者に対しては簡易的に消費税を計算することが認められています。この制度のことを消費税の簡易課税といいます。

簡易課税では次のように税務署に納める消費税額を計算します。

課税売上に関して受け取った消費税額-(課税売上に関して受け取った消費税額×業種毎に定められた一定割合(みなし仕入率)=納めるべき消費税額

ポイントは課税仕入に関して支払った消費税額を集計しなくてもよい、ということです。
課税売上に関して受け取った消費税額は、自社で請求書等を発行しているので集計しようと思えば集計できるはずです。それをしておけば、一定の計算方法により納めるべき消費税額を算出することができます。

消費税の簡易課税の適用を受けることができる場合

消費税の簡易課税は、事務負担に配慮された制度ですので、すべての事業者で選択できるのではなく、小規模な事業者のみが適用することができます。簡易課税を適用できる小規模事業者とは、基準期間(課税期間の前々年または前々事業年度)の課税売上高が5,000万円以下の法人をいいます。また、原則として適用する課税期間開始の日の前日までに「消費税簡易課税制度選択届出書」を税務署に提出しておく必要があります。

たとえば、個人事業主の場合、2018年に簡易課税を適用できるかどうかは、その前々年である2016年の課税売上高が5,000万円以下かどうかで判断します。さらに、適用する場合は、2017年12月末日までに「簡易課税制度選択届出書」を税務署に提出しておかなければなりません。

この「簡易課税制度選択届出書」を提出すると、基準期間の課税売上高が5,000万円以下のときは原則として、簡易課税が適用されることとなります。原則課税の方が有利になるから、原則課税を適用する、ということはできなくなりますので注意してください。

なお、「簡易課税制度選択届出書」は一度提出すれば、「消費税簡易課税制度選択不適用届出書」を提出しない限り有効です。たとえば、基準期間の課税売上高が5,000万円を下回り簡易課税を適用し、翌年は課税売上高が5,000万円を超えたため原則課税を適用したものの、再び課税売上高が5,000万円を下回ったような場合には、再び「簡易課税制度選択届出書」を提出しなくても自動的に簡易課税が適用されることとなります。

事業区分はどう決められているか

簡易課税を適用する際に用いる業種毎に定められた一定割合(みなし仕入率)は、次のように6つの区分により決められています。

  • 第一種事業(卸売業) 90%
  • 第二種事業(小売業) 80%
  • 第三種事業(農業、林業、漁業、鉱業、建設業、製造業等) 70%
  • 第四種事業(その他の事業) 60%
  • 第五種事業(運輸通信業、金融・保険業、サービス業(飲食店業に該当する事業を除く)等) 50%
  • 第六種事業(不動産業) 40%

事業用の固定資産を売却したときの課税売上高は、第四種事業に該当することとなります。

また、令和元年(2019年)10月1日を含む課税期間からは、第三種事業に含まれる農業、林業、漁業のうち消費税の軽減税率が適用される飲食品の譲渡を行う事業分を第二種事業として扱い、みなし仕入率は80%(現行70%)が適用になっていますのでご注意ください。

複数の事業を行っている場合の取扱いと特例について

複数の事業区分に該当する事業を行っているときは、原則としてその事業区分ごとに課税売上を集計して、簡易課税での消費税額を計算しなければなりません。ただし、特例の計算方法が設けられており、事業を2種類以上行っている事業者で、ある1種類の事業の課税売上高が全体の課税売上高の75%以上を占めるような場合には、その1種類のみなし仕入率のみを用いて,簡易課税での消費税額を計算することができます。

また、3種類以上の事業を行っている事業者で、特定の2種類の事業の課税売上高の合計が全体の課税売上高の75%以上となるような場合には、その2種類の事業のうち、みなし仕入率の高い方の事業に係る課税売上高については、そのみなし仕入率を適用します。そして、それ以外の課税売上高について、その他方のみなし仕入率(2種類の事業のうち低い方のみなし仕入率)をその事業以外の課税売上げに対して適用するということができます。
なお、2種類以上の事業を行っているが、課税売上を事業ごとに区分していないような場合には、区分していない事業のうち最も低いみなし仕入率を使わなければなりません。この場合は消費税額が必ず多くなってしまいますので、課税売上は事業ごとに区分して集計した上で、特例の計算方法を用いるかどうかを検討するとよいでしょう。
参照:国税庁HP:No.6505 簡易課税制度

まとめ

このように消費税は、一定の場合に原則課税による方法と簡易課税による方法を選択することができ、どちらを選択するかによって、消費税額が多くなったり少なくなったりします。しかし、簡易課税を適用するには事前に届出が必要ですし、一旦適用すると取りやめるための届出も必要です。したがって、将来どうなるかを考えて、事前にどちらが有利になるかを判断して、必要な手続きを行っておく必要があります。

この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。

著 者 公認会計士 松本 佳之

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税理士・公認会計士・行政書士 1980年兵庫県に生まれる。2001年公認会計士二次試験合格。2002年関西学院大学商学部卒業、朝日監査法人(現あずさ監査法人)試験合格、公認会計士登録。2007年税理士登録後独立し、北浜総合会計事務所を開設。監査法人勤務時代は企業公開部門に所属し、さまざまな実績を重ねる。

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