法人実効税率とは 概要と税制改正による引き下げの影響

近年、法人実効税率を引き下げる改正が行われています。
今回は、法人実効税率とは何かと、引き下げによる影響について解説します。

 

法人実効税率の概要と計算方法

平成30年4月1日以後開始する事業年度からの法人税率は23.2%です。
では、法人実効税率は何パーセントかわかりますか。
「同じではないの?」と思われるかもしれませんが、法人税率と法人実効税率とは異なりますので注意しましょう。

法人実効税率(法定実効税率ともいいます)とは、法人税だけでなく、地方法人税、法人住民税、事業税、地方法人特別税といった法人の所得に関連して発生する様々な税金の税率を考慮したトータルでの税率です。そのため、法人税率よりは高い率となります。

この法人実効税率は以下のように計算します。

法人実効税率= 法人税率×(1+法人住民税率+地方法人税率)+(事業税率+標準税率×地方法人特別税率)/1+(事業税率+標準税率×地方法人特別税率)

計算式は少し難しいので、適用される率を当てはめて計算するとよいでしょう。なお、外形標準課税の適用法人の場合は、事業税率は所得割のものを用います。また、法人住民税率と事業税率には標準税率と超過税率があり、地方自治体によって異なります。超過税率を採用している地方自治体で税金を納める場合には、超過税率を用いて法人実効税率を計算する必要があります。

平成30年度の法人実効税率は29.74%とされています。つまり、会社に3,000万円の利益(所得)が出た時には3,000万円×29.74%=892.2万円の法人税等が生じることが見込まれます。実際には、法人住民税均等割りや外形標準課税もありますので、必ずしもピッタリとはなりません。税金のおおよその目安と考えてください。

 

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税制改正による法人実効税率の引き下げ

諸外国に比べて日本の法人実効税率は高いと言われています。また、近年は、ビジネスを自国に誘致するために諸外国においても法人税率を引き下げていく傾向にあります。

ビジネスもグローバル化している中、高い税率が弊害となって、日本企業が海外に進出することとなったり、海外企業が日本でビジネスをすることを避けたりすることが考えられます。そのため、近年は、日本でも法人税率を引き下げる傾向にあり、平成27年度税制改正及び平成28年度税制改正において法人実効税率を引き下げる改正が行われています。

平成28年度税制改正が行われた結果、法人実効税率は目標とされていた20%台となりました。
平成25年度の法人実効税率は37.0%とされていますので、そこから比べると大きく引き下げられたこととなります。

平成27年度税制改正による引き下げ

まず、平成27年度税制改正によって、法人税率が25.5%から23.9%に引き下げられました。これにより、国・地方の法人実効税率は34.62%から32.11%に引き下げられています。

なお、法人税率は引き下げられたものの、あわせて、課税ベースの拡大が行われています。そのため、欠損金の繰越控除の適用制限の見直し、受取配当等益金不算入の見直し、法人事業税外形標準課税の拡大、研究開発税制の見直しといった改正も同時に行われました。これにより利益を稼ぐ法人の税額は減ることになり、収益力拡大に向けた投資、研究開発投資、賃上げなどを行うことが期待されます。
一方で、課税ベースが拡大されたことにより、広く負担を分かち合うような税構造へと改革されています。

平成28年度税制改正による引き下げ

さらに、平成28年度税制改正によって、平成28年度と平成29年度の法人税率が23.4%に、平成30年度の法人税率が23.2%に引き下げられました。
また法人事業税所得割の税率(地方法人特別税を含む)も6.0%から3.6%に引き下げられています。これにより、国・地方の法人実効税率は、平成28年度と平成29年度が29.97%に、平成30年度が29.74%に引き下げられました。
なお、平成28年度税制改正も、租税特別措置の見直し、減価償却の見直し、法人事業税の外形標準課税のさらなる拡大、欠損金の繰越控除の適用制限の見直しといった課税ベースの拡大が行われています。

 

法人実効税率が引き下げられることによる影響(税効果会計など)

税効果会計を適用していると法人実効税率の引き下げの影響を受けることとなります。
税効果会計を適用して、繰延税金資産または繰延税金負債を計上している場合のその金額は、将来減算一時差異または将来加算一時差異に、その一時差異が解消する見込みの年度に適用される法人実効税率を乗じて計算しています。
法人実効税率の引き下げが行われると、一時差異が解消する見込みの年度に適用される法人実効税率が変更されることとなるため、繰延税金資産または繰延税金負債を取り崩す会計処理が必要となります。
なお、法人実効税率の変更による繰延税金資産または繰延税金負債の変動の影響が大きい場合には、財務諸表や計算書類の注記において、影響額を開示しなければなりません。

 

まとめ

近年、法人実効税率は頻繁に改正されています。今後も税制改正が発表された際には、いつから新しい税率が適用されるのか、どの税率を用いればよいかをしっかりと確認し、税金の計算や税効果会計の適用を行っていかなければなりません。

 

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● 著者

松本 佳之

松本 佳之

税理士・公認会計士・行政書士 1980年兵庫県に生まれる。2001年公認会計士二次試験合格。2002年関西学院大学商学部卒業、朝日監査法人(現あずさ監査法人)入所。2005年公認会計士三次試験合格、公認会計士登録。2007年税理士登録後独立し、北浜総合会計事務所を開設。監査法人勤務時代は企業公開部門に所属し、さまざまな実績を重ねる。