法人実効税率とは 概要と税制改正による引き下げの影響
近年、法人実効税率を引き下げる改正が行われています。
今回は、法人実効税率とは何かと、引き下げによる影響について解説します。
法人実効税率の概要と計算方法
平成30年4月1日以後開始する事業年度からの法人税率は23.2%です。
では、法人実効税率は何パーセントかわかりますか。
「同じではないの?」と思われるかもしれませんが、法人税率と法人実効税率とは異なりますので注意しましょう。
法人実効税率(法定実効税率ともいいます)とは、法人税だけでなく、地方法人税、法人住民税、事業税、地方法人特別税といった法人の所得に関連して発生する様々な税金の税率を考慮したトータルでの税率です。そのため、法人税率よりは高い率となります。
この法人実効税率は以下のように計算します。
計算式は少し難しいので、適用される率を当てはめて計算するとよいでしょう。なお、外形標準課税の適用法人の場合は、事業税率は所得割のものを用います。また、法人住民税率と事業税率には標準税率と超過税率があり、地方自治体によって異なります。超過税率を採用している地方自治体で税金を納める場合には、超過税率を用いて法人実効税率を計算する必要があります。
例えば、外形標準課税適用法人(東京23区)の法人実効税率は30.62%とされています。つまり、会社に3,000万円の利益(所得)が出た時には3,000万円×30.62%=918.6万円の法人税等が生じることが見込まれます。実際には、法人住民税均等割りや外形標準課税もありますので、必ずしもピッタリとはなりません。税金のおおよその目安と考えてください。
税制改正による法人実効税率の引き下げ
諸外国に比べて日本の法人実効税率は高いと言われています。また、近年は、ビジネスを自国に誘致するために諸外国においても法人税率を引き下げていく傾向にあります。
ビジネスもグローバル化している中、高い税率が弊害となって、日本企業が海外に進出することとなったり、海外企業が日本でビジネスをすることを避けたりすることが考えられます。そのため、近年は、日本でも法人税率を引き下げる傾向にあり、平成27年度税制改正及び平成28年度税制改正において法人実効税率を引き下げる改正が行われ、令和4年にも改正されています。
平成28年度税制改正が行われた結果、法人実効税率は目標とされていた20%台となりました。
平成25年度の法人実効税率は37.0%とされていますので、そこから比べると大きく引き下げられたこととなります。
■令和4年度税制改正による引き下げ
令和4年度の税制改正によって、改定前に資本金1億円以下の外形標準適用なしの法人(東京23区)が改定後に新基準に該当し外形標準が適用された場合の法定実行税率は29.86%とされます。法人税23.3%、地方法人税10.3%、法人住民税7%、法人税所得割(超過税率)1.18%、所得割(標準税率)1.0%、資本割0.525%、付加価値割1.26%、特別法人事業税260%の内訳です。
法人実効税率が引き下げられることによる影響(税効果会計など)
税効果会計を適用していると法人実効税率の引き下げの影響を受けることとなります。
税効果会計を適用して、繰延税金資産または繰延税金負債を計上している場合のその金額は、将来減算一時差異または将来加算一時差異に、その一時差異が解消する見込みの年度に適用される法人実効税率を乗じて計算しています。
法人実効税率の引き下げが行われると、一時差異が解消する見込みの年度に適用される法人実効税率が変更されることとなるため、繰延税金資産または繰延税金負債を取り崩す会計処理が必要となります。
なお、法人実効税率の変更による繰延税金資産または繰延税金負債の変動の影響が大きい場合には、財務諸表や計算書類の注記において、影響額を開示しなければなりません。
まとめ
近年、法人実効税率は頻繁に改正されています。今後も税制改正が発表された際には、いつから新しい税率が適用されるのか、どの税率を用いればよいかをしっかりと確認し、税金の計算や税効果会計の適用を行っていかなければなりません。
この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。