平成27年度法人税改正の実務ポイント その2
前回は、平成27年度税制改正のうち税率の見直しと受取配当金の益金不算制度の見直しについて、お話をしました。
今回は、欠損金の繰越控除の見直しと法人税均等割額の課税標準の見直しについて確認していきます。
税制改正の項目は、税制改正大綱が出た段階では色々と考えますが、1年程度経過していざ実務で適用する段階になると忘れてしまうことも多くありますので、おさらいをしつつ実務への影響度合いについて考えてみましょう。
繰越欠損金の制度の見直し
平成27年度の税制改正では、法人税率の引き下げが実現しましたが、同時に課税ベースの拡大もなされました。
そのうちのひとつが、繰越欠損金の控除限度額の縮小です。
平成23年12月改正前までは繰越欠損金は、繰越控除する事業年度の所得金額の全額を控除することが出来ました。
それが、平成23年12月の改正によって中小法人等以外の法人の控除限度額は、繰越控除する事業年度の所得金額の80%までとされました。
たとえば、繰越欠損金が1億円あり、繰越控除する事業年度の所得が3,000万円あった場合に控除できる繰越欠損金は平成23年12月の税制改正で次のようになりました。
繰越欠損金 1億円
→ 繰越欠損金が1億円あっても、控除限度額は繰越控除する事業年度の所得金額の80%である2,400万円が限度なので2,400万円しか控除が出来ず、3,000万円から2,400万円を控除した600万円に対して法人税が課されるようになりました。
ただ、控除限度額が定められた分、繰越期間が7年だったものが9年に延長されました。
控除限度額が50%に縮小、繰越期間は10年へ
平成27年度の税制改正では、繰越の限度額がさらに縮小し、その分繰越期間は延長となりました。
改正後の控除限度額と繰越期間は以下の通りです。
【欠損金の繰越控除額と繰越期間】
平成27年4月1日~平成29年3月31日開始事業年度 | 平成29年4月1日以後開始事業年度 | ||||
---|---|---|---|---|---|
中小法人等以外 | 中小法人等 | 中小法人等以外 | 中小法人等 | ||
控除限度額 | 所得金額×65% | 所得金額の全額 | 所得金額×50% | 所得金額の全額 | |
繰越期間 | 9年 | 9年 | 10年 | 10年 |
中小企業の場合は、税制改正後も所得金額の全額を控除でき、さらに繰越期間が10年となり、税務メリットは増えたことになります。
中小企業でない場合は、所得の発生状況によって課税が生じることになるので、影響額や影響期間について留意しましょう。
法人住民税の均等割の課税標準見直し
企業は、資本金等の額や従業者数に応じて、所得とは関係なく、均等割という税金を都道府県や市町村に納付します。
均等割の判定の基準として「資本金等」を使いますが、資本金等の額は、事業年度末日における法人税法で規定する資本金等の額を使います。
税制改正前は、均等割を算定する際に使う資本金等の額は、法人税法で定義する資本金等の額と同額でした。
それが、税制改正で均等割を算定する際に使う「資本金等の額」の定義が改正されました。
法人税法上の資本金等に一定の調整を加えた額が、均等割算定に際して使う資本金等の額となりました。
具体的には、次のような調整を致します。
+)平成22年4月1日以後に無償増資した金額
-)平成13年4月1日以後平成18年4月30日までの間の旧商法における欠損填補のための無償減資
-)平成18年5月1日以後の会社法における欠損填補のための無償減資
このため、過去に無償減資をしていた場合は、均等割の金額が改正前よりも低くなることが考えられますので、過去の経緯を確認するようにしましょう。
もう一つの注意点は、上記の算式で計算された金額と資本金及び資本準備金の合計額とを比較して、資本金等の金額が資本金及び資本準備金の合計額を下回った場合は、資本金及び資本準備金の合計額が均等割の判定基準となったことです。
【均等割の判定基準】
(均等割の課税標準)
無償増減資を加味した資本金等の金額 < 資本金 +資本準備金
(均等割の課税標準)
過去に自己株式を取得している場合に、資本金等の金額が「資本金+資本準備金」よりも小さい場合には、均等割が増加する場合もありますので、決算前までには影響額を確認しておきましょう。
この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。