法人で赤字がでたときの法人税などはどうなる?

法人で赤字がでたときの法人税などはどうなる?

法人税とはどんな税金か

法人は、年に1回の決算日を迎えると、法人税等の申告をしなければなりません。法人税の対象となる法人は、株式会社や合同会社といった普通法人などです。通常は、年に1回の決算日を設け、決算日までの一年間の期間を区切って、法人税を計算することとなります。

たとえば、3月31日を決算日とした場合は、4月1日から3月31日までの一年間の期間の所得(利益)を基に法人税等を計算し、決算日の翌日から2か月後となる5月31日までに申告と納税を行う必要があります。会社設立した第一期目であれば、設立した日から決算日までの期間で法人税等の申告と納税を行うこととなります。

法人税の申告と一括りにされますが、実際には法人税、地方法人税、都道府県民税・市町村民税(住民税)、事業税、地方法人特別税などの申告を同時に行っています。
後で説明する都道府県民税・市町村民税(住民税)の均等割り以外の税金は、原則として、収益(益金)から費用(損金)を差し引くことによって計算した所得(利益)、または、所得を基に計算された法人税などに対して、税率を乗じて計算します。つまり、所得(利益)が出たときだけに課税されるものです。

財務省の資料によると、日本の法人実効税率(国・地方)は、平成30年度で29.74%であるとされています。それを基にすると、1,000万円の所得(利益)が出た場合は、その約3割弱である297.4万円を法人税等として納めなければならないこととなります。なお、実際には、それぞれの税目で用いる税率は、中小法人かどうか、所在地のある地方自治体、所得(利益)の金額などによって変わってきます。29.74%とならないこともありますので注意してください。

法人税等の納め方

税務署に納める法人税は、原則として、決算日の翌日から2ヶ月以内に、納付書をもって、税務署の窓口または取扱金融機関で納税しなければなりません。納付書は、決算前に税務署から送付されてきますので、それに金額等を記入して作成します。
その他にも指定した自身の金融機関口座から口座引落しにより電子納付する方法(ダイレクト納付)やクレジットカードで納付する方法、ペイジーを利用して納付する方法があります。このうち、ダイレクト納付をするには事前の手続きが必要です。

地方自治体に納める都道府県民税・市町村民税(住民税)、事業税、地方法人特別税も、納税の期限は法人税と同じです。また、原則として、納付書をもって、取扱金融機関で納税します。その他の方法の取扱いは地方自治体によって異なります。

赤字でも税金は発生する

法人は、年に1回の決算日を迎えると、法人税の申告をしなければなりません。法人税の申告と一括りにされますが、実際には法人税、地方法人税、都道府県民税・市町村民税(住民税)、事業税、地方法人特別税などの申告を同時に行っています。

これらの税金の大半は法人の所得などを基準に税率を乗じて計算されます。しかし、都道府県民税・市町村民税(住民税)には「均等割り(きんとうわり)」というものがあり、所得にかかわらず、資本金や従業者数に応じて課税されます。
つまり、赤字であっても住民税の均等割りはかかります。均等割りは資本金や従業者数によって変わりますが、最低でも年間70,000円程度(資本金が1千万円以下、従業者が50人以下の場合)がかかります。

また、資本金が1億円を超える法人は外形標準課税の適用法人となり、事業税の一部が、付加価値や資本金といった所得以外を基準に計算されます。付加価値とは、所得に人件費や家賃などを加算したもののことをいいます。人件費を支払った結果、赤字となっている場合などは付加価値がプラスとなり、付加価値割が生じることとなります。資本割は、資本等に税率を乗じるので必ず生じます。このように外形標準課税の適用法人となる場合には、赤字でも事業税が発生します。

赤字のときは前に支払った法人税の還付を受けることができる

1年目が黒字で、2年目が赤字だったとすると、2年間のトータルでは利益が出ていないにもかかわらず、1年目には税金を払い、その分だけマイナスとなってしまいます。

これが逆であれば、1年目の赤字を繰越できるので、2年目に黒字が出たとしても税金を払う必要はありません。中小企業は、もともと資本が充実していないことも多いので、このような重い税金の負担となります。そこで、赤字が出たときは前の期に支払った税金の還付を受ける、ということができる制度が設けられています。この制度のことを「欠損金の繰戻しによる還付制度」といいます。

この制度は現在のところ、青色申告書を連続して提出している中小企業者などが利用できます。中小企業者とは、資本金が1億円以下の法人(資本金5億円以上の法人の100%子会社などを除く)などのことをいいます。また、還付されるのは、前期に支払った法人税(及び地方法人税)が上限となります。たとえば、これまで黒字決算で多額の法人税を納め続けていたが、突然、大赤字となった場合でも、還付されるのは最大でも前期に支払った法人税(および地方法人税)までとなり、残りは繰越欠損金となります。

なお、欠損金の繰戻しによる還付制度は、法人税(および地方法人税)にのみ設けられている制度ですので、その他の住民税や事業税などについては赤字が出たとしても前期に収めた税金の還付を受けることはできません。

赤字を持ち越しすることができる

上記の欠損金の繰戻しによる還付制度は、過去に支払った税金が還付されるという制度でしたが、それとは別に、赤字を翌期以降に持ち越すこともできます。この制度のことを「欠損金の繰越控除制度」といいます。平成30年4月1日以後に開始する事業年度については、最大で10年間(それまでは9年間)欠損金を繰越することができます。

この制度を利用できるのは、赤字(欠損)がでたときに青色申告を提出してあり、かつ、その後、連続して確定申告を提出している場合となります。赤字が出たときに青色申告をしていれば、その後に白色申告であったとしても、青色申告した期の赤字については繰越することができます。ただし、連続して申告していなければなりませんので、休眠などで申告していない期があれば、遡って申告をするなどしなければなりません。

中小法人は、黒字が出た期に、繰越されている欠損を全額控除することができます。
つまり、繰越欠損金が1,000万円あり、その期の黒字(所得)が500万円であったとすれば、500万円全額を控除することにより、その期の課税所得はゼロとなります。
一方、中小法人以外の法人については、控除に上限が設けられています。平成30年4月1日から開始する事業年度の上限は繰越控除前の所得の100分の50ですので、上記の例では、250万円(500万円×50/100)までしか控除することはできず、残りの750万円(1,000万円-250万円)は翌期以降に持ち越しすることとなります。ここでの中小法人とは、資本金が1億円以下(資本金5億円以上の法人の100%子会社などを除く)の法人などのことをいいます。

まとめ

法人は赤字が出たとしても最低限の税金がかります。また、欠損金の繰戻し還付制度や欠損金の繰越控除制度を利用することにより、税金の還付を受けたり、将来の税金が軽減されたりしますので、これらの制度を理解しておきましょう。いずれの制度も、青色申告をしていることが要件とされています。前期が黒字で、今期が赤字だったとしても前期が青色申告をしていなければ、欠損金の繰戻しによる還付制度を利用することができません。税金の優遇制度をいつでも利用できるように、毎期青色申告をしておくことが大切です。

この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。

著 者 公認会計士 松本 佳之

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税理士・公認会計士・行政書士 1980年兵庫県に生まれる。2001年公認会計士二次試験合格。2002年関西学院大学商学部卒業、朝日監査法人(現あずさ監査法人)試験合格、公認会計士登録。2007年税理士登録後独立し、北浜総合会計事務所を開設。監査法人勤務時代は企業公開部門に所属し、さまざまな実績を重ねる。

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