減価償却累計額と減価償却費 同じ「減価」でも勘定科目や仕訳は違う?

減価償却累計額と減価償却費 同じ「減価」でも勘定科目や仕訳は違う?

減価償却累計額と減価償却費との違いはどのような部分なのか、はっきりと区別して理解している人は少ないのではないでしょうか。どちらも固定資産の減価償却に関連した勘定科目であることには違いないのですが、その性質は異なります。ここでは、混同しやすい減価償却累計額の概要や減価償却費との違い、仕訳処理の仕方などについて解説します。この機会に両者の性質の違いを理解しましょう。

減価償却累計額の処理方法

直接法

直接法は、固定資産の取得原価から減価償却費を直接差し引く方法です。そのため、貸借対照表に減価償却累計額は登場しません。ただし、減価償却が進むにつれて固定資産の取得価額を貸借対照表から読み取れなくなるため、別途、減価償却累計額の注記が求められています。

間接法

間接法は、減価償却費を固定資産の取得原価から直接差し引くのではなく、減価償却累計額を計上する方法です。貸借対照表には減価償却累計額という勘定科目で、資産の控除科目として表示されます。

交通費・経費精算システム「楽楽精算」 経理プラス メールマガジン登録

「減価償却累計額」と「減価償却費」の違いとは?

減価償却累計額と減価償却費の勘定科目

減価償却累計額は「資産」項目の中で、控除科目として表示されます。これは資産価値の減少額を表しており、取得時から計上している減価償却費の累計額が記載されるのです。
一方、減価償却費は「費用」項目になります。こちらは、一定期間の資産価値の減少額を表したものです。

財務諸表の記載箇所

減価償却累計額は「資産」項目で計上されると解説しました。「資産」項目で表示されるということは、つまり貸借対照表で使用される勘定科目ということになります。一方、減価償却費は「費用」項目で計上されますが、これは損益計算書で使用される勘定科目だということです。名前の似た勘定項目ですが、計上される財務諸表が異なる点は抑えておきましょう。

財務諸表の記載方法

減価償却累計額とは、その名の通り累計額を示したもの。資産を取得してから、減価償却費を何年かに分けて計上した累計額になります。一方で減価償却費は、当期1年分の減価償却費を示したものです。つまり、毎年計上する減価償却費の積みあがったものが減価償却累計額となります。
なお、そもそもの減価償却費とは何なのか詳しく知りたい方は、下記記事も合わせて参照してください。

経理プラス:減価償却まるわかり!「定率法」と「定額法」の違いと計算方法

減価償却累計額の仕訳と記載方法

減価償却累計額の仕訳方法

減価償却累計額の仕訳を、間接法と直接法それぞれで見ていきましょう。今回は、例として下記の事象を考えていきます(いずれも消費税は考慮しません)。

【前提】
12月決算の会社/2020年1月に車両を100万円で購入して即座に事業供用/耐用年数は5年/減価償却方法は定額法

それでは、この場合の2020年12月期における減価償却費の仕訳を検討しましょう。

直接法による仕訳

直接法は減価償却累計額を計上せず、固定資産から直接、減価償却額を差し引きます。そのため、仕訳は下記の通りです。

減価償却費20万円車両20万円

間接法による仕訳

一方、間接法はどうでしょうか。間接法の場合は減価償却累計額を計上するとご紹介しましたが、仕訳は下記のようになります。

減価償却費20万円減価償却累計額20万円

減価償却累計額の貸借対照表

間接法を用いて減価償却累計額が計上された場合、貸借対照表上ではどのように表示されるのでしょうか。先ほどの仕訳例で、減価償却費が20万円計上された後の貸借対照表を見てみます。

2020年12月期 貸借対照表

資産の部負債の部
******
******
車両1,000,000
減価償却累計額-200,000純資産の部
******
******

具体的には、このようなイメージです。減価償却対象資産の下に控除項目として、減価償却累計額がマイナス額で記載されていることが分かるでしょう。100万円で取得した車両を20万円減価償却して、現在価値が80万円ということが読み取れます。

減価償却費の損益計算書

減価償却費は、直接法と間接法で計上方法に差異はありません。損益計算書の販売費および一般管理費の部に計上されます。先ほどの仕訳例で、減価償却費が計上された場合の損益計算書を見てみましょう。

2020年12月期 損益計算書

売上高***
売上原価***
売上総利益***
販売費および一般管理費***
***
***
減価償却費200,000
***
***
営業利益***

まとめ

減価償却累計額と減価償却費の違いについてご説明しました。減価償却の概念は実務上の多くの場面で登場し、企業が決算書を作成するために重要な決算処理の1つです。違いの性質をしっかり理解し、適切な決算書作成ができるようにしましょう。

経理プラス:減価償却と法人税の関係とは?実施の仕方や法定耐用年数、注意点を解説!

この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。

監修 税理士 川口 拓哉

著者

税理士(近畿税理士会)。2017年の税理士試験で官報合格。個人の税金から法人の税金までの幅広い税目について知識と実務経験を有する。川口拓哉税理士事務所所属。

川口拓哉税理士事務所