消費税中間申告の延長の要件や手続き方法 ポイントをしっかり解説
消費税の課税額によっては、納付を複数回に分納できる中間申告が認められています。この中間申告が、2020年に広がった新型コロナウイルス感染症の影響で期限延長が可能になっています。予定納税として中間申告をしている企業も多数あると思われますので、今回は、消費税の中間申告の延長とはどのような制度か、手続きの方法なども含めてご紹介していきます。ぜひ参考にしてください。
消費税の中間申告とは
はじめに、消費税の申告について確認していきましょう。
法人に限らず、個人事業主も基準期間の課税売上金額が1,000万円を超えている、または、1,000万円以下でも事前に消費税課税事業者選択届を提出している場合などで、消費税及び地方消費税の申告が必要です。
消費税の申告と納付期限は、事業年度が終了してから2カ月以内とされています。つまり、3月決算の企業であれば、2カ月後の5月31日となり、6月決算なら8月31日となるわけです。
原則として、消費税の納付は期限までに年度分を全額支払わなくてはなりません。ただし、企業によっては1度で納める消費税の負担が大きくなるため分納が認められています。これを消費税の中間申告制度といいます。
中間申告と納税額
中間申告書の提出は、法人であれば前事業年度の消費税の年税額が48万円を越えたときに可能です。納税額と中間申告の回数は、金額によって分類されています。
確定消費税額 | 48万円以下 | 48万円超え400万円以下 | 400万円超え4,800万円以下 | 4,800万円超え |
---|---|---|---|---|
中間申告の回数(年) | 原則なし | 1回 | 3回 | 11回 |
1年間の申告回数 | 確定申告1回 | 確定申告1回 中間申告1回 | 確定申告1回 中間申告3回 | 確定申告1回 中間申告11回 |
消費税の中間申告に関しては、より詳しく解説している「消費税の中間納付・中間申告 押さえておきたい対象者と申請方法」の記事もぜひ参考にしてください。
特例として2020年の中間申告が延長
2020年は、法人税を含むさまざまな申告の期限延長の特例が適用されています。ちょうど多くの企業が申告時期になる3月から5月に、新型コロナウイルス感染症の影響で外出自粛、テレワーク推進などもあり、スムーズな事務処理が行われない恐れがあったためです。
このような中、消費税の中間申告においても、2020年に限り期間延長の特例が認められています。延長できる要件は次のとおりです。
- 在宅勤務をするなど外出自粛要請が出ている地域の社員・役員が在籍
- 外出自粛のために事業活動を控えている
特例として認められるのは、基本的に新型コロナウイルス感染症拡大防止のために、企業活動を自粛している事実があることに加えて、実際に感染者の発生などで休業するなどの影響があったものも含みます。
なお、申告期間の延長は、申告・納付ができない要因がなくなってから2カ月以内とされています。通常通りの申告期限に中間申告書の提出がなく、期限に提出があったとみなされた後でも、新型コロナウイルス感染症拡大の影響等で期限の延長は可能となっていますが、期限延長の手続きがなされるまでは、通常の申告期限を基準とした督促状が届くことがあると注意喚起されています。
消費税の中間申告延長の手続きは?
2020年に限り適用となる消費税の中間申告延長ですが、どのような手続き方法になるか、確認しておきましょう。
申告書の記載事項
延長の手続きを行う際、別途専用の申告書を提出する必要はありません。通常の申告書類の余白に「新型コロナウイルスによる申告・納付期限延長申請」である内容を記載するだけで完了します。国税庁の記載事例では、申告用紙の枠外の右上に文言が記載されています。記載例などを事前に確認しておきましょう。
納付書の記載事項
期限延長とはいえ、納付期限は延長された申告書等の提出日となります。その際、納付書の摘要欄にも「新型コロナウイルスによる納付期限延長申請」である旨を記載します。
国税庁では、期限延長となる要因が解消されたあとは、速やかに申告してほしいと通知していますので、できるだけ遅延させることなく手続きを進めましょう。
納税の猶予制度
中間申告の延長が適用されるとはいえ、2020年のような今までにない外出自粛や営業活動の移動の制限などがある中では、例年通りの売上や利益が見込めない企業も少なくないでしょう。そのため、一定の要件に該当する場合に、1年間の国税の納付を猶予する特例制度があります。
制度の内容
新型コロナウイルス感染症の影響で事業の収入に相当な減少があった場合に、1年間の国税の納付を猶予するものです。延滞税が適用されないことが特徴です。
適用される要件
2020年2月1日以降の任意の1カ月の中で、事業収入が前年同期と比較して20%以上程度の減少があることと、一時的に納税が困難な状況にあることです。
適用される期間
対象期間は、2020年2月1日~2021年2月1日までに納税期限が到来するもので、原則的に1年間の納税の猶予が認められます。
中間申告での注意点
納税の猶予期間において、中間申告のための納税については「猶予期間は確定申告期限まで」とされていることに注意が必要です。中間申告分に関しては、一定の猶予期間があるものの最大期限はあくまで確定申告までです。
申請手続き
申請手続きは、国税局の相談センターが開設されていますので、詳細について確認することをおすすめします。なお、申請手続きは2020年6月30日または納期限のいずれか遅い日までとされています。
まとめ
2020年度は、決算申告の延長にはじまり、中間申告の延長、納税の猶予など、さまざまな特例が適用されることとなっています。自社に必要な特例や各種の情報は常にアンテナをはり、適切な処理が適切な時期にスムーズに対応できることが理想的です。一時的に申告の遅れがあったとしても、すぐに通常通りのスケジュールで業務が行われるように、業務効率化への取り組みも検討してみましょう。
この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。