IASBが公表「財務報告に関する概念フレームワーク」とは

IASB(国際会計基準審議会)は、2018年3月29日に財務報告に関する概念フレームワークの改訂を公表しました。概念フレームワークは、IFRS(国際会計基準)の基礎ともいわれるものですが、概念フレームワークの位置づけなどについては、詳しく理解していない方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、IASBの概要や改訂された概念フレームワーク、改訂のポイントなどについて解説します。

 

IASBの概要

IASBとは、「International Accounting Standards Board」の略であり、IFRS(国際会計基準)を取りまとめる国際会計基準審議会という民間機関です。

前身はIASC「International Accounting Standards Committee」(国際会計基準委員会)であり、1973年にオーストラリア、カナダ、フランス、ドイツ、日本、メキシコ、オランダ、英国、米国の9つの国の会計士団体として生まれました。

IASB審議会の理事メンバーは、常勤12名、非常勤2名の計14名であり、毎月行われる審議会では会計基準について議論しています。理事メンバーの14名の中には監査法人や民間企業、学者、各国基準設定機関などが在籍します。

参考:日本公認会計士協会「IASBの基礎知識」

 

改訂された「概念フレームワーク」

概念フレームワークは、1989年に公表されたあと、2010年に一部分のみが改訂されました。しかし、実際には完成しているとはいえず、全体を通しての見直しを求める声がありました。

2010年に改定されたのは、「一般目的財務報告の目的」と「有用な財務情報の質的特性」の2つで、「報告企業」については追加予定とされました。その他の部分については、基本的に1989年の公表のまま残されていましたが、2018年の改訂では、新しい章が付け加えられたり、定義に対する考え方が提示されたりするなどの見直しがされています。

 

概念フレームワークをわかりやすく

概念フレームワークとは、企業会計の基礎となる考え方の前提や概念を体系化したものです。会計基準を深く理解し、解釈の仕方に対する考えを高める狙いがあります。

概念フレームワークが公表される前から、世界共通の会計基準となる「IFRS(国際財務報告基準)」が存在していました。

概念フレームワーク自体は基準ではなく、「IFRS基準書」とは別のものとなります。もし概念フレームワークの内容に理解できないことがあれば、「IFRS基準書」での定めを優先します。しかし、「IFRS基準書」の中にも規定がない場合は、今回の概念フレームワークの改訂でいままでの会計方針に影響がある可能性があります。

 

IFRSと概念フレームワークの関係

IFRS(国際財務報告基準)は、世界共通の会計基準という位置づけです。IFRSを適用する企業(人)が、会計基準についてしっかりと理解し、一貫した世界共通の方針を持つことが大切になります。

そのためには、きちんと一貫性のある基本の考え方で利用されなければなりません。概念フレームワークは、IFRSを同じ解釈で統一するための基本的な指針となるべく、公表されているといえるでしょう。

参考:そうせい監査法人「IFRS 概念フレームワーク」

 

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改訂の主なポイント

次に、今回改訂された概念フレームワークのポイントを紹介します。

一部に新たな概念を加え、資産や負債の定義や認識要件を改めて、一部の重要な概念を明確化しています。改訂は次の全8章で構成されています。

  • 第1章 財務報告の目的
  • 第2章 有用な財務情報の質的特性
  • 第3章 財務諸表及び報告企業
  • 第4章 財務諸表の構成要素
  • 第5章 認識及び認識の中止
  • 第6章 測定
  • 第7章 表示および開示
  • 第8章 資本及び資本維持の概念

改訂された概念フレームワークは、「結論の根拠」が付随されています。また、改訂とともに公表された「IFRSにおける概念フレームワークへの参照の修正」では、基準書における概念フレームワークへの参照先を示しています。

改訂のポイント

  1. IASBは、Stewardship(スチュワードシップ)の概念を再び導入し、情報を明確化しました。それにより、経営者の説明責任がより重視されることになるでしょう。
  2. 有用な情報は、目的適合性があり、実質の財務情報を正確に表さなければならないとしました。2010年の概念フレームワークは、正確な表現とは関連がないと捉えられていたかもしれませんが、改訂では正確に表現する必要性をきちんと述べています。
  3. 財務諸表の作成を義務付けられる報告企業は、律的事業体に限定されないことにしました。2010年の概念フレームワークでは、報告企業の境界線を決定すべきかが明記されていませんでしたが、改訂では明確になっています。
  4. 資産や負債の定義が改訂されました。改訂後の資産の定義は、資産は経済的資源であり、潜在的な経済的便宜の企業への流入が予想される必要がないことを明確化しました。改訂後の負債の定義は、負債は経済的資源を移転する債務であり、経済的便宜が流出することを表すものではないことを明確化しました。
  5. 改訂後の資産、負債の定義に関して、2つの例外を設けられることになりました。
  6. 2010年の概念フレームワークでは、認識の中止を定義しておらず、いつ中止されるかも決められていませんでしたが、今回の改訂では認識の中止に関する指針が導入されました。この認識とは、「資産、負債、資本、収益及び費用の定義を満たす項目を、財政状態計算書または、財務業績計算書に計上するために補足するプロセス」としています。
  7. 改訂前は、測定基準委ついての指針を設けてはいませんでしたが、改訂後は様々な要因を検討し、資産、負債、収益や費用に測定基準が選択される可能性が高くなりました。
  8. 改訂前は、表示や開示については取り扱われていませんでしたが、改訂後は原則的にすべての収益や費用は損益計算書に計上しなければならないことを明確化しました。

改訂された「概念フレームワーク」の使用は速やかに行われ、企業は2020年度から対応することになります。

参考:EY新日本有限責任監査法人「改訂概念フレームワークの公表」

 

まとめ

今回は、IFRS(国際会計基準)を理解する上で必要不可欠な「概念フレームワーク」について、概要や改訂のポイントをお伝えしました。
改訂では、定義などが明確化され、より理解しやすい内容になっているようです。基準の考え方に役立つものですので、しっかりと理解しておきたいですね。

 

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経費精算システム「楽楽精算」導入事例

● 著者

渡部 彩子

渡部 彩子

自動車関連の社団法人にて10年以上に渡り管理部門を経験。この経験を活かし、経理・総務・人事をテ ーマとしたコンテンツ制作を幅広く執筆。