ABC分析で戦略的な在庫管理を 事例から学ぶ活用方法と注意点

ABC分析で戦略的な在庫管理を 事例から学ぶ活用方法と注意点

ABC分析は、企業の商品や製品、サービスがどのように売れている、または売れていないということを詳細に把握することができる手法です。「分析」といっても、整理するだけで簡単に数値化(ランク分け)することができ、視覚的にもわかりやすいものです。ここでは、ABC分析の概要についてご紹介するとともに、ABC分析の事例や活用方法まで詳しく解説していきます。ぜひ参考にしてください。

ABC分析とは?

ABC分析とは、商品や製品などの売上状況などから、各商品、製品などのランク分けをして重要度を把握する分析方法で、重要分析ともいわれています。

具体的には、商品や製品をAランク、Bランク、Cランクとランク付けをしますが、各ランクは、仕入~在庫~販売までの流れで判断し、Aランクは売れ筋のもの、Bランクは見せ筋のもの、Cランクは死に筋のものと分類します。

Aランクのもの、またはAランクに近いものが活発に取引されるものであり、重要度が高いと判断することができます。場合によっては、ABCの3つのランク以外にも、AAランクを設けたり、D、Eランクを設けたりすることも可能です。

ABC分析をすることで、売れる商品や製品の在庫切れを防ぐことや、売れない商品や製品の不良在庫を防ぐことが期待できます。在庫管理を的確に行うことで販売戦略にもつながり、効率的な業績向上に結び付けることが可能になります。

したがって、商品や製品の販売業に限らず、飲食店などのサービス業を含めて、幅広い業種で利用することができる分析手法といえるでしょう。

また、ABC分析は、商品や製品が販売されるまでの過程で、消費された経費などの分析も可能です。具体的には、商品や製品の輸送費や、管理費、人件費など、製造される過程においての経費(原価)も分析することで、より正確なコストまで把握することができます。

ABC分析が必要な事例

上述では、ABC分析でランク付けを行うことで、商品や製品の重要度を把握したり、商品や製品が販売されるまでの原価を把握したりすることを解説しましたが、実際にどのように分析を行うのか、具体的に事例で説明しましょう。

商品・製品の売上状況を分析

商品や製品のある一定期間の売上額を算出し、全体の売上額の総額と各商品や製品の売上額の構成比を算出します。

ランクのグループは、Aを累計売上割合80%まで、Bを80%から97%まで、Cを97%から100%までと分類した場合、次のようなランクグループに分類することができます。

商品名個別の売上額構成比率累計売上構成比ランクグループ
商品A15,00050.0%50.0%A
商品B10,00033.3%83.3%B
商品C4,00013.3%96.7%B
商品D8002.7%99.3%C
商品E2000.7%100%C
合計30,000100%100%

Aランクの商品は、全体の売上に対しての構成比が多く、重要度の高いものであることがわかります。尚、ここでは売上額でランクを分類していますが、売上の個数などを分析しランク付けすることで重要度を把握することも重要です。なぜなら、単価が高く、売上額が多くても、売上個数が多いこととは一致しないことがあるためです。

商品・製品の販売までの原価を分析

商品や製品が売上に結びつくまでには、原材料などの直接的な原価の他に、運送費や管理費、人件費などの間接的な原価も発生しています。

間接的な原価コスト
運送費30,000
倉庫費(家賃や光熱費)50,000
人件費(在庫管理)100,000
合計180,000

間接的な原価のうち、コストを抑えるものや、削減できるものなどを検討する資料となることが可能です。商品や製品ごとに原価を把握すると、もっと効率化できる部分などにも、改めて気付くことができるかもしれません。

ABC分析で現状把握をする

売上額や売上個数などでABC分析のランクに分類すると、各商品や製品の重要度を把握することができ、在庫管理を戦略的に行うことが可能になります。

たとえば、売れ筋であるAランクの商品は、在庫が切れることがないように気を付けながら発注をします。一方、売れ筋ではないCランクの商品は、在庫がなくなってから発注するなど、売れない在庫を抱えないように気を付けて管理します。

このように重要度を把握しながら在庫管理をすることで、動かない不良在庫を抱えすぎることなく、スムーズな商品管理につながることが期待できるでしょう。

また、ABC分析で商品などの原価を把握すれば、コストの見直しに役立てることができるため、販売経費の改善にもつながるのです。

ABC分析を有効に活用するには

ABC分析をすることで、在庫にある商品や製品の売れ筋を把握するだけではなく、どのような特徴を持った商品が売れ筋なのかを知ることもできます。

売れ筋であるAランクの商品にはどのような共通点があるのかを知ることで、B、Cランクからでも売れ筋の商品を探し出すことが可能になります。また、新しい商品開発の参考にもなるかもしれません。

ABC分析は、ただ単に売上に貢献する商品や製品を把握するだけではなく、積極的に売上の向上や経費削減に活用できる有効なものなのです。

注意点とまとめ

ABC分析をする場合に注意しておきたいことは、売れ筋商品となるAランクに分類されたものに、流行に左右されやすい一過性のものが含まれてないかという点です。商品にはある程度の流行性がある場合もありますが、あまりにも流行性が強い場合、Aランクであっても、時間の経過とともに「売れない商品」に変わる可能性が高くなります。

ABC分析で分類されたものは、その中身もきちんとチェックして客観的に判断していくことが大切なのです。

今回は、在庫や原価の現状把握に役立つABC分析について、概要や分析の方法、活用法などについてお伝えしました。売れ筋商品などが把握できることで、しっかりと戦略的な在庫管理につなげることができるため、非常に有効な分析手法といえるでしょう。また、商品の原価を間接的な観点からも把握できることは、知らずに経費が膨らんでしまうのを未然に防ぐこともできるでしょう。売上の向上や利益の確保につなげるためにも、ABC分析を有効に活用していきたいですね。

この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。

著 者 渡部 彩子

渡部さんお写真w240h240

大学卒業後、自動車関連の社団法人にて10年以上に渡り管理部門に在籍。経理・総務・人事の実務を経験し、同法人在籍中に日商簿記2級を取得。その後、保険・金融業界での経理業務の経験を経て、ライターとして独立。これまでの実務経験を元に経理業務をテーマとしたコンテンツ制作を中心に執筆。